《ビッグ・バグズ・パニック》★★(2009年,アメリカ)


 ビミョーに面白くない巨大昆虫パニック映画。ストーリーは一応きちんとしているんだけど底が浅いし,「万年オチャラケ青年が人類を救う」という設定は面白んだけどその主人公のいい加減すぎる行動に感情移入がしにくいし,そもそも巨大昆虫モンスターの正体が最後まで不明だし、ラストに何が起きているのかが観客に示されないまま終わるために不満感ばかり募る,という映画です。単なるヤマ勘ですが,最初は小規模なギャグ映画のつもりで撮影が始まったけど,次第に構想が膨らんできて本格映画風になってしまったものの,制作費が足りないために全体が安っぽくなったんじゃないかと思われます。

 ちなみに,登場するモンスターは「体長1メートルくらいで、腹部がほっそりしているアリジゴク(ウスバカゲロウの幼虫)という形をしていて、しかも空が飛べる」という設定で作られていますが、作りはすごくチャチなので期待しない方がよろしいかと・・・。


 主人公は,怠け者でチャランポランな性格のクーバー(クリス・マークエット)。ようやく父親が見つけてくれた仕事も遅刻ばかりしているし,仕事態度も不まじめなため,上司のモーリーンに呼びつけられてクビを言い渡されます。しかしその時,耳をつんざくような音が聞こえて意識を失ってしまいます。

 そしてクーパーは目を覚ましますが,全身を繭のようなもので覆われています。何とか繭から脱出しますが,その時、巨大な昆虫が襲ってきます。クーパーは訳がわからないまま応戦し,何とか巨大昆虫を倒します。なんとか一息ついてまわりを見回すと,そこはいつものオフィスですが,周りには繭に包まれた同僚たちが転がっています。そこでモーリーンを繭から助け出して状況を説明しますが,モーリーンはオフィス前で自分を待っている娘のサラ(ブルック・ネヴィン)のことを思い出し,モーリーンとクーパーは建物の外に出て行き繭の中のサラを助け出しますが,このときモーリーンが飛来した巨大昆虫に連れ去られます。

 残されたサラとクーパーはとりあえずそこらに転がっている繭を破り、テレビのお天気キャスターのシンディ,聴覚障害者の巨漢のヒューゴ,ヒューゴの父親のアルを助け出し,地下室にシェルターを持つクーパーの父の家を目指しますが,実はクーパーは厳格な退役軍人である父親イーサン(レイ・ワイズ)に反発して、家を飛び出していたのでした。

 そんな中で,巨大昆虫は視覚がなくて聴覚だけで獲物を探していることがわかります。そして、クーパーはサラに惹かれていきますが,一方,なぜかシンディはクーパーに積極的に言い寄ってきます。そして,クーパーとサラが仲良くなっていくのを見たシンディは発作的に大声を出して騒ぎ,巨大昆虫を呼び寄せてしまいます。喚き立てるシンディをアルが射殺しますが,その音が昆虫を呼び寄せ、サラを捕まえて飛び去っていきます。

 残された彼らは何とかクーパーの父親の家にたどり着きます。そして,父親が持っている武器を持ち出し,サラを救い出して同時に昆虫どもを皆殺しにする作戦を立て、巨大な昆虫の巣に近づきますが・・・という映画でございます。


 まぁ要するに,いわゆるひとつの低予算B級映画です。映画は「変な音で気を失ったクーパーが目を覚ますと繭みたいなのに閉じ込められていた。そこから脱出すると正体不明の怪物が襲ってきた」ということから始まりますが、モンスターパニック映画としてはかなり珍しい始まり方です。普通なら「平和に暮らしていた町を突如,巨大昆虫が襲ってきて,人々はパニックになり・・・」というのが定石ですからね。

 なんでこんな珍しいオープニングにしたかというと、単に予算がなかったからでしょう。決して、「スタッフたちが新しいモンスター映画の形を模索して考えついた」なんてことじゃなさそうです。もしも、人々を巨大昆虫が襲う様子を撮影するとなると金が半端でなくかかりますからね。

 その点,「変な音が聞こえて気を失い,気がついたら繭の中」とすると登場人物を最小限にできるんですよ。クーパーが3人助け出せば出演者は4人、5人助け出せば6人で済み、人件費はいくらでも抑えられます。

 でも,よく考えてみたら怠け者のクーパーくんが繭から自力で脱出できたんですから,他の人達ならもっと簡単に脱出できるはずなんですよ。まぁ、このあたりには気がつかないフリをした方がよろしいようです。


 この手の巨大昆虫パニック映画では,巨大昆虫がなぜ発生したのかの理由(放射能とか,環境汚染とか,軍事施設で遺伝子組換したとか,宇宙からやってきたとか・・・)を説明して欲しいのですが,この映画では説明が一切ありません。多分,説明するのが面倒になったのでしょう。一応,巨大な巣があって女王虫(?)がポコポコ卵を生んでいますから,この巣から飛び立った昆虫(働き蟻みたいなものかな?)が餌として人間を襲って巣に集めたということになりますが,昆虫の飛翔距離には限界がありますから「昆虫に襲われた地域」以外は「襲われていない地域」が広がっていますから、そこからすぐに警察とか軍隊とかが出動してくるはずです。この映画みたいに「一つの巣から出た巨大昆虫でアメリカが全滅!」なんてことは絶対にありません。「〇〇で人類絶滅」となるのはウイルスくらいのものです(ウイルスなら人体内部で増えて,人から人に感染しますからね)


 珍しいといえば,クーパー君タイプの人間が主人公であることです。これくらいチャランポランでいい加減なヒーローの映画って久しぶりに見ました。何しろ彼の特技といえば,「どんな状況でもオチャラケ行動に出られる」ことであり、「何事にも不まじめに対処してます」という青年です。こんな奴を雇ってしまった会社はいい迷惑だったと思いますよ。でも、こんな奴でも主人公は主人公なんで,主人公であるかぎり活躍させなければいけないわけで,パニック映画なのに緊迫感がなくなってしまいました。主人公がなんとなくボンヤリと行動しているうちに,なんとなく問題が解決しちゃうからです。

 主人公と父親との対立と和解もこの映画のサブテーマですが,それも「この程度で和解しちゃうの?」という感じで拍子抜けしてしまいます。また,聴覚障害者のヒューゴが最後のほうで皆を助けるシーンがありますが,彼が登場した時点で「多分、耳が聞こえないことが幸いして仲間を助けるシーンがあるんだろうな」と読めてしまいます。このあたりも底が浅いですね。

 そうそう,お天気お姉さんのシンディがクーパーくんに言い寄ってきてオッパイを披露するサービスシーンにしても,なんでシンディがクーパーに惹かれていく過程が描かれていないため,全くの無駄シーン・無駄オッパイです。このあたりは、もうちょっと観客にわかるように描いてもらわないと困りますよ。


 一番ダメなのはラストシーンです。巣を爆破してめでたしめでたし,となりますが、するとクーパーたちが空(?)を見て,「大変だ! あれを見ろ!」「なんてこったい!」というところで終わっちゃうのですよ。観客には何が見えたのか最期までわかりません。巨大昆虫がさらに襲ってきたのか,もっと巨大な奴がやってきたのか,あるいは超巨大ラスボスが襲ってきたのか,軍隊が助けにきてくれたのか全くわかりません。ここを秘密にする意味ないだろ、と思いますね。もしかしたら,続編でも作る気なのかもしれませんが、それは思い上がりと言うものでしょう。

 というわけで,最初から低予算B級パニック映画だと思ってみると,そこそこは楽しめるかも,という程度の作品でした。

(2012/01/26)

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