《RED/レッド》★★★★(2010年,アメリカ)


 面白かったなぁ、この映画。何にも考えずに2時間近く楽しめる,極上の娯楽映画です。「高齢化社会におけるスパイ・アクション映画はどうあるべきか」という問いに対する最善の回答であり,初老期〜後期高齢者の名優たちの熱くて格好いい姿に胸が熱くなります。そして何より,程良く肩の力が抜けたコミカルな雰囲気がナイスです。続編が計画されているそうですが,これならどんどん続編を作って欲しいです。フルース・ウィルスの体が激しいアクションに耐えられるうちに,どんどん続編を作って下さい。

 ちなみにこの映画は,アメコミを原作にしたものとのことですが,残念ながら原作は読んだことがありません。


 年金ぐらしをしている初老の男フランク・モーゼス(ブルース・ウィルス)は,州の年金課で働いているサラ(メアリー=ルイーズ・パーカー)と電話で会話をするのを唯一の楽しみにしていたが,ある日ついに電話で彼女とのデートの約束に成功する。

 しかしその夜,フランクの自宅を完全武装した謎の集団が襲撃する。しかし,フランクは慌てず騒がず一味を鮮やかな手際で撃退する。フランクの自宅を包囲していた敵はさらに銃弾を雨あられと打ち込んでくるが,フランクは難なく彼らを全滅させる。実はフランク・モーゼスはCIAの伝説の凄腕工作員であり,RED(Retired Extremely Dangerous)だったのだ。

 襲撃者が誰か,フランクには心当たりはないが,1つだけ確実にわかっていることがあった。電話は盗聴され,話し相手のサラの身にも危険が迫っているということだ。フランクはサラの自宅に急ぎ,「君の身が危ない!」と告げるが,もちろん,サラにとってフランクは侵入者であり,騒ぎ立てるが,その時,敵の一味が襲来し,問答無用で銃弾を打ち込んでくる。

 サラを伴ったフランクは辛くも逃げ出すが,全く事情がつかめない。そこで彼は,かつてのCIAの上司ジョー・マシスン(モーガン・フリーマン)の助けを借りるべく,彼が暮らす介護施設を目指す。既に80歳で肝臓がんで余命いくばくもないと宣言されていたジョーはフランクに協力することを約束し,やがて,フランク以下9名の名前が書かれた暗殺リストの存在を割り出してくれる。そのリストには,フランク同様,数人の「RED」の名前が書かれていた。

 フランクはそのリストに名前のあった,かつての宿敵マーヴィン(ジョン・マルコヴィッチ)にリストを見せ,それが1989年のグアテマラでの極秘任務にあたった10人であることを割り出す。どうやら敵は,CIAを動かせる巨大組織らしい。

 それを知ったフランクは,かつて敵だったロシアの凄腕スパイのイヴァン(ブライアン・コックス),イギリス諜報機関MI6の凄腕狙撃手のヴィクトリア(ヘレン・ミレン)など,「既に引退したかつての仲間,敵たち」に協力を求める。平々凡々で変化のない毎日に飽いていた彼らは一も二もなくフランクに力を貸す。そして,リタイアした凄腕ジジババたちとCIAとの戦いの火蓋が切って落とされる・・・という映画だ。


 とにかく,初老〜高齢期のジジババ@凄腕エージェントが最高に格好いい。主人公のフランクはサラに「あんたの禿頭,最悪!」なんて言われるけど,襲ってくる敵をバッタバッタとなぎ倒し,事情がよく飲み込めないサラを全力で守るのだ。しかもフランクは恋愛に不器用だ。観ている方がもどかしくなる。でも,これでいいのだ。ハゲのおっちゃんが一方的に若い女性に恋しちゃったんだから・・・。

 途中の,サラがフランクと一緒にCIA本部に潜入するシーンもいい。こんな絶体絶命のシーンなのに,二人はキス一つ,ハグ一つ,まだ交わしていないのである。手も握っていないのである。中学生カップルより清純なお付き合いなのである。それなのに,この二人は生死を共にした「同志」なのだ。フランクの「サラには手を出さないけど命だけは守るんだぜ」というスタンスが健気でいいのだ。


 「フランクのかつての同僚でライバル」役のマルコヴィッチもまさに名演! ここでは「軍の洗脳実験を受けて頭がおかしくなった爺ちゃん」という設定の役で,ブタのヌイグルミを持ち歩いている「誰が見てもおかしい人」なんだけど,このオッチャンがすごいのです。何度も何度も,フランクの窮地を救ったかと思うと,暴走してフランクを窮地に追い込んじゃう。こういう「暴走キャラ」になりきるマルコヴィッチ、うま過ぎ!

 そしてなにより凄いのは,イギリス諜報機関のスパイを演じるヘレン・ミレン! ご存知,英国女王様女優なんですが,この映画では「美貌の冷酷非情なスナイパー」を完璧に演じています。マシンガンを構えているだけでオーラ全開,美しい立ち姿に惚れ惚れします。表情ひとつ変えずに狙撃を続ける彼女の姿(しかも,純白のドレス!)は圧倒的な美しさです。

 そういうイギリスのMI6スパイに愛してしまったのがロシアKGBのスパイ,イヴァン。こいつがまたいいんだよ。最後の「お嬢さん,何かお困りでも?」と声をかけるイヴァン,最高に格好いいぞ。


 これ以上,何も書きません。とにかく観て下さい。「こんなの,ありえねぇ〜! 都合よすぎ!」とツッコミを入れながら,大笑いしながら観て下さい。そして,じいちゃん、ばあちゃんたちの勇姿に胸が熱くしてください。

(2012/02/03)

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