《ダイナクロコ vs スーパーゲイター "Dinocroc vs. Supergator"★★(2010年,アメリカ)


 タイトルを見ただけでショーモナイB級映画だと言うことがわかります。おまけに制作総指揮をとっているのはB級モンスター映画の巨匠,ロジャー・コーマン大先生です。これはもう,見る前から「鉄板のB級映画」とわかりますから,安心して見られます。コーマン先生なら呆れて笑っちゃうほどの駄作と言うことはないはずです(・・・傑作と言うこともないだろうけど)


 舞台はハワイのカウアイ島。映画冒頭,いきなり警報が鳴り,建物からワラワラと人々が逃げ出します。逃げまどう人間たちの後から姿を現したのは巨大ワニ! こいつが「ダイナクロコ」でございます。どうやらこの研究施設(大富豪の持ち物で彼が極秘で生物を巨大化させる研究をしているのだ)で作り出した巨大ワニのようです。ワニ君,巨体にも関わらず俊敏に動けるため,次々にパクパクと人間たちを食べちゃいます。ちなみにこの巨大ワニ君はCGですが,余りに動きが速すぎて重量感が感じられずリアル感ゼロですが,とりあえず気にしないようにしましょう。

 難を逃れた研究所の女性研究者は大富豪さんに連絡しますが,大富豪さんは,秘密裏に処理しろ,と無茶な命令を下します。しかし,その研究者の目の前で建物の壁が壊れ,そこから巨大な大トカゲが飛び出します。もちろん,「スーパーゲイター」です。こいつも人間をパクパク食って姿を消します。初っ端からこんなにハイテンションで人を食っちゃって,最後まで間が持つんだろうかと見ている方が心配になります。ちなみに,こっちの大トカゲ君は後肢2足歩行型で前肢は小さく,ティラノサウルスみたいですがなぜか頭部はワニです。まぁ,気にしないようにしましょう。ちなみにこいつも巨体のくせにやたらと俊敏で重力をいっさい感じさせない軽やかさです。まぁ,気にしないようにしましょう。


 一方,FBIだったかがこの大富豪がいかがわしい研究をしているんじゃないかと勘ぐり,現地に送り込んだ調査員登場。プレ・おっさんというか,ちょいメタボというか,そういう感じですが,一応この映画のヒーロー役です。ただ,この時点では大富豪が何を研究させているのか証拠がないため,調査打ち切りになりそうな気配で落ち込んでいたりします。

 そして,この映画のヒロイン登場。カウアイ島の自然保護官で,父親は保安官です。ブロンドの美人さんですが,ちょっと華がないかな? 彼女が登場した時点で,彼女と調査員が映画の後半でラブラブ・カップリング反応を起こすことはミエミエですが,一応気がつかないフリをするのがコーマン映画を見る際のお作法です。


 その頃,巨大ワニとトカゲが外に出てしまったことを知ったオーナーの大富豪さんは10人ほどの兵隊さん(?)をヘリで派遣します。しかし,いかにも軽薄なアメリカ兵という感じの言動と,装備がピストルとマシンガンだけというあたりで死亡フラッグ立ちまくりです。案の定,あっという間に巨大ワニさんの胃袋にまっしぐら! 相手が10メートル以上なんだから,ロケット・ランチャーくらい標準装備してほしいものです。

 そういうわけで,大富豪さんに部隊全滅の知らせが入ります。そこで,大富豪さんのセクシー&武闘派秘書さん(黒髪美人なので,ヒロインの自然保護官と見間違うことはありません)が登場し,大富豪さんから「ケイジャンに連絡しろ」と指令を受けます。ケイジャンさんは猛獣ハンターで,ワニをしとめるのに自分の腕を切って血を流し,その血の臭いでワニをおびき寄せる勇猛果敢なイケメン・タフガイ君です。一応この映画の二番手ヒーローです。


 一方,ケイマン島では自然保護官のヒロインのボートが故障し,それを調査員(ヒーロー役)が助けることで二人が出会います。また,ケイジャンさんもケイマン島入りします。一方このころ,島の滝を見に行ったビキニ姿のちょい太めの姉ちゃん2人と有名カメラマンが巨大ワニ君に食べられます。ただ食われるために登場した3人でした。

 この頃,保安官(=ヒロインのお父さん)に「牧場の牛が何かに食われた」という連絡が入ります。何かとんでもない事態が起きていることに,ようやく保安官が気付きます。この頃,調査員(=ヒーロー役)が自然保護官(=ヒロイン役)に自分の身分と,大富豪さんの秘密研究所で行われている研究を探っていることを明かします。

 この後,二人は大富豪さんの私有地に忍び込み,巨大マッシュルーム畑を目にします(遺伝子操作したマッシュルームだから巨大なんだぜ)。何だかディズニー映画の一場面を想起させるファンシーな光景です。今にも,白雪姫を守る7人の小人が「ハイホー」と歌いながら出てきそうです。しかし,ここで登場するのは小人さんではなく,巨大トカゲ君です。車と同じスピードでしつこく追いかけてきます。この運動能力からすると,このトカゲ君は巨大化すると同時に温血化したしたようです。


 そこを救うのが黒髪秘書さんを伴ったケイジャン君です。そして彼らは研究所の生き残りの女性研究者を助け,町の病院に彼女を連れていきます。ここで女性研究者は,大富豪さんが最初は作物の巨大化を計画していたのに,それがうまく行ったのでワニとトカゲを巨大化するように命じた,と告白します。

 ヒーローは大富豪さんの違法行為の証拠をつかみ,それをFBIに報告します。一方,黒髪秘書さんは女性研究者を暗殺します。ちなみに,この後FBIは全く登場しませんので,ヒーローさんの連絡は意味なしでした。

 この頃,新作映画を取り終えたばかりの有名映画監督がケイマン島を訪れます。2人の若いナイスバディの女優を伴っています。そして,3人でジャグジーバスに入りますが,ここでトカゲ君が登場し,3人はあっという間に胃袋直行! 何のために登場した3人なのか,意味不明です。


 この頃,ケイジャン君はヒーロー君に「奴らを倒すには,二匹を戦わせよう。ワニとトカゲは仲が悪いからだ。そして二匹の戦いの生き残りは怪我をするだろうから,そこを倒せばいい」というちょっとセコい作戦を提案。ワニとトカゲが仲が悪い,なんて聞いたことがありませんが,とりあえず信じてあげましょう。

 そんなわけで,ケイジャン君とヒーロー君は赤外線探知機を積んだヘリに乗り込み,2匹の捜索を開始。もちろん地上では,保安官とその娘が車で闇雲に当てもなく島のどっかを疾走。


 さあ,ここでいよいよ怪物との対決か,と思うとさにあらず。島のどっかにある廃墟となったホテル(かつて有名人が宿泊し,かつてロジャー・コーマン先生の映画の舞台にもなったことがしつこく紹介される)の観光ツアーのご一行様登場。グダグダしたやりとりがあって,そろそろ飽きてきた頃に巨大ワニ君が登場して彼らをパクパクお食事タイム。

 その頃ケイジャン君と捜査官君は谷間にある工場に怪物2匹を閉じこめて2匹を対決させようと言う計画を立てます。なんとこの工場に通じる道は2本のトンネルしかなく,ここを爆破すれば閉じこめられるじゃありませんか。なんて都合のよい立地条件の工場なんでしょうか。

 その頃,捜査官からの連絡を受けたFBIが大富豪宅に乗り込んで彼を逮捕しようとしますが,黒髪美人秘書と撃ち合いになり,秘書は射殺され,大富豪さんは心臓発作を起こしてあっけなく御昇天。何だよ,この展開!

 で,例の廃墟ホテルではワニのお食事タイム中ですが,そこにやってきたのが保安官と彼の娘(=ヒロイン役)の自然保護官。ショットガンと拳銃で巨大ワニ君に立ち向かいますが,保安官は呆気なく娘の目の前で食われちゃいます。だから,ロケット弾を準備しとけ,って言ったんだよ。重火器を持っていないアメリカ人って何の役にもたちません。


 ヒロインさんは車に乗って逃げますが,それを巨大ワニ君が追ってきます。ワニ君,時速100キロを越すスピードで車に追走します。おまけにワニ君の走る姿は後足を揃えてピョンピョンと飛び跳ねています。どう見てもカエルかウサギです。ワニじゃありません。なんと「ワニのウサギ跳び」です。このシーンは必見です。

 娘さん,ワニを引き連れて例の谷間の工場に到着し,ケイジャン君と捜査官君はトンネルを爆破。めでたし,めでたし・・・って,オイオイ,これじゃ君たちも閉じこめられるんだけど,君たちはどうするつもりなんだ? 観客全員が気が付いているのに,ケイジャン君とヒーロー君は気が付いていません。アホ2人組です。

 でも,ワニはトカゲを見つけてくれて,ワニとトカゲは睨み合います。星と花形,力石と矢吹,馬場と猪木,GoogleとFacebookです。ついに夢の対戦カードが実現,ようやくこの映画タイトルが日の目を見る時がやって参りました。2匹はがっぷり四つで組み合いますが,数分間で呆気なく勝敗が決まりトカゲ君が勝っちゃいます。ワニ君にはもうちょっと頑張ってほしいものです。そして勝者のトカゲ君は人間さんご一行様を見つけてにじり寄ってきます。人間様,絶体絶命のピ〜ンチ!


 すると調査員君が,工場から都合よく粉塵が吹き出しているのを見つけます。ということは,火をつければ粉塵爆発するじゃん。トカゲを吹き飛ばせるじゃん,ということで粉塵めがけて手榴弾を投げ込み,自分はそこに都合よく置いてある水槽にダイブ! すると都合よく粉塵爆発が起こりトカゲ君は吹き飛ばされちゃいます。工場とトカゲの位置がかなり離れている気がするんですが,とりあえず気がつかないフリをしましょう。

 で,水槽から出てきた調査員君にヒロインの自然保護官が抱きついてカップリング反応! めでたし,めでたしでございます。これぞB級モンスターパニック映画の王道でございます。これぞコーマン映画です。


 この手の映画って要するに,「巨大生物の登場」⇒「最初の犠牲者が出るけど誰も気がつかない」⇒「最初に保安官とか研究者が異変に気がつく」⇒「町長に進言するけど聞く耳もたず」⇒「犠牲者が増えて大騒ぎ」⇒「科学者とか研究者が弱点を発見」⇒「弱点を攻撃して巨大生物を倒してめでたし,めでたし」というストーリーですが,考えてみるとわかりますが,これ以外に展開のしようがないんですよ。だから,この定石を踏まえながらいかに新鮮味を出すかが勝負となります。

 また,どうやって90分間を持たせるかというのも重要ですね。そのため,登場人物の過去とか,家族の崩壊と再生とか,カップルが生まれるとか,町でお祭りがあるとか,リゾート開発計画があるとか,そういうところで時間稼ぎをするわけです。

 ところがこの映画では,そっちの方向の工夫は全くせずに,物語と無関係の無駄人物(その多くはビキニの姉ちゃん)をやたらと登場させては本筋と関係ない行動をさせて,そのあとはワニとトカゲの餌になるだけです。このため,やたらと人は喰われるけど,緊迫感というか,ストーリーの盛り上がりがなくなってしまったのです。

 とりあえずはツッコミどころ満載の映画なんで,そういう映画が好きな人は見といた方がいいでしょう。

(2012/03/21)

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