タイトルを見ただけで「これは十中八九,低予算ゾンビ映画だな」と予想がつきましたが,暇なんで見てみました。低予算の割には頑張って作っているし,ゾンビを倒す方法(塩素にアンモニアを混ぜて出てきた気体が武器)は斬新だし,ヒロイン役のお姉さんが巨乳だしと,そこそこの出来なんですが,途中の展開が悪くて中だるみしちゃった点が惜しかったっすね。低予算なんで廃墟ビルで撮影するしかないという台所事情はわかりますが,それならもうちょっとビルの構造をうまく利用するとか,「塩素+アンモニア」をコンドームに積めて使うんだったら,いっそのことコメディー・ゾンビ映画にすればよかったのに,と思います。
最初の舞台はイラク(だったかな?)。ここでアメリカ軍は死者を蘇らせて最強の兵士にするウイルスの研究をしていましたが,感染した皆さんは凶暴化して収拾がつかなくなり,軍は研究施設を空爆してゾンビもろとも研究を封印しようとしますが,開発者の助手をしているメガネ君がウイルスを盗み出して逃げ出しちゃいます。
そして彼はアメリカに戻り,廃墟同然のぼろビル(アパート)の地下を借り,そこで研究を続けようとしますが,そのビルに救うギャングさんたちや,巨乳お姉さんや,管理人と一悶着があったりしているうちに,ウイルスに感染する奴が出てきてゾンビと化します。そして次から次へと住民たちを襲ってはゾンビが増えて,さぁ大変。そこに,メガネ君を探してウイルスを奪還せよという命令を受けた軍人さんが加わり大騒動に・・・という映画でございます。
「軍が死者を蘇らせて不死身の兵士にする研究でゾンビを作っちまったよぉ」という映画は掃いて捨てるほどあるし,建物内でゾンビが発生して閉じこめられるというパニック映画もどきのゾンビ映画も珍しくありません(例:《REC/レック》とか)。見ている方としては,オイオイ,またかよ,という感じですね。
肝心のゾンビさんたちのメイクもおざなりで口の周りの血が付いていて,すごい形相で喚いているだけです。今回のゾンビは運動能力がハンパないですが(何しろ,最強の兵士を作るのが目的のウイルスですからね),これだって先日紹介した「バルクール・ゾンビ」に比べたら大したことがありません。ゾンビ映画のお約束の「お食事シーン」も血が吹き出るだけで,グロくもなければ怖くもありません。
それでも,冒頭の5分間はよかったです。イラクの軍研究所でいきなりパニックが起きて,研究者や兵士が次々に襲われるシーンで始まるんですが,ここはのっけからハイテンションで期待を持たせたんですよ。ですが,舞台がアメリカに移ってからがやたらとグダグダしていて,主人公のメガネ君とビル管理人(ちょっとゲイっぽいです)の意味のないやりとりとか,やたらと胸の谷間を強調するヒロインお姉さんとの意味のないやりとりとか,メガネ君が借りた地下室をアジトにしていたチンピラ3人組との意味のないやりとりとか,そんなのばかり続き,ストーリーがなかなか前に進みません。
しかもこのメガネ君,部屋に鍵を掛けろとさんざん管理人に注意されているのに鍵を掛けないもんだから,チンピラ3人衆は入ってくるわ,泥棒さんがウイルスを盗み出すわ,自分からトラブルの種をまき散らしています。
胸の谷間お姉さん(サンドラ・ラミレス)は肉感的でちょい美人で,ヒップのあたりがちょい魅力的ですが,それ以上のものがありません。後半,メガネ君とお約束のエッチシーンになりますが,お約束の「衣服を脱がないエッチ」でございます。さすがに「ゾンビ映画といえばエロっぽさが必要だよね。このままじゃマズいかな」と気がついたようで,映画の最初の方で意味のないオッパイシーンがあったりします。このお姉さんは別に脱いでもらわなくてもよかったです。
ゾンビを倒す武器が「コンドームに詰めた塩素とアンモニア」というのは新機軸です。これなら確かに,屋上の送風口から流せば,建物内のゾンビを一掃できます。でも肝心のコンドームが効果的に使われないんですよ。モノがモノだけに,いくらでも面白い使い方ができそうなもんなのに,ただ相手に投げてぶつけるだけで,おまけにそのシーンも短いです。このあたり,惜しいなぁ,と思います。
あと,唯一面白かったのは,ゾンビさんたちがドアをやたらとノックして,住人が「誰だ! うるさいぞ。静かにしろ!」と出てきたところを襲っちゃうシーン。ゾンビさんたち,頭いいです。しかも,部屋の住人を襲うときはきちんとドアを閉めてるし・・・。礼儀正しいゾンビさんです。
ラストでメガネ君が胸の谷間お姉さんを連れて屋上に行くのもお約束だけど,ここで感染したお姉さんとメガネ君で何かあるかと思っていたら,あっけなく終わっちゃって拍子抜け。最後はもう,アイデアを出すのも面倒になったと思われます。
また,要所要所でちょい重要な役を果たすのがビル管理人ですが,こいつって一体,何者なんでしょうか? 最後まで意味不明の重要登場人物でした。
(2012/05/06)