BSEにかかった牛に治療薬を飲ませたらお肉が変になっちゃって、それを繰った人間がゾンビみたいなのになっちゃったよ、という絵に描いたような低予算B級コメディー・ホラー映画です。ちなみに《悪魔の毒々〜》というとトロマ社のシリーズ作品ですが、こちらは全く関係がなく、この手の映画マニアを集めた試写会で居合わせた皆さんが,勢いで付けたタイトルなんだとか・・・。
このタイトルを見て「素晴らしい映画だろうな」と勘違いするおバカさんはいないと思いますが、最初からうんと期待値を下げてから見ると、そこそこ楽しめます。
ちなみに主演の禿頭の医者を演じるのはビリー・ゼインです。あの《タイタニック》や《山猫は眠らない》などの名作にも出ている役者さんですが、なぜかこんなショーモナイ駄作にもきちんと顔を出している人です。仕事を選ばないプロ根性ってやつですね。
舞台はアメリカの田舎町。ここに禿頭の医者ジェイソン(ビリー・ゼイン)、その娘エイミー(シャウナ・マクドナルド)、ジェイソンの恋人のモニカ、エイミーの恋人ブレイクが乗った車が到着します。ジェイソンは3年前に妻を亡くし、最近恋人が出来たばかりですが、娘のエイミーは恋人の言いなりになっている父親も恋人も大嫌いだし、ジェイソンは娘の恋人ブレイクと初対面らしく、何だかギクシャクしたムードです。そんな彼らがその町に泊まることになります。
地元産のオーガニック牛肉が自慢の町で、4人は食堂でビーフたっぷりのハンバーガーを食べ始めますが、隣の席で食べていた2人が突如暴れ出し、口から泡を吹いて襲いかかってきます。そこに銃を構えた食堂の店主と彼の娘が現れ、ゾンビに銃弾を浴びせて倒しますが、モニカはすでにゾンビの犠牲になっています。
ジェイソン、エイミー、ブレイク、食堂店主と娘は建物に逃げ込みますが、すでに外はゾンビで一杯。さぁ、どうしよう・・・という映画でございます。
この映画のゾンビは伝統的な「ゆったり動作型ゾンビ」ですが、銃を使ったり農具を持って襲ってくるところがちょっと新機軸です。メイクはそこそこ気合いが入っていてグロく、特に死体となったモニカの顔はちょい迫力があります。ゾンビといえば「お食事シーン」ですが、こっちはあまり大したことはありませんが,低予算ゾンビ映画としてはかなり頑張っている方ですね。
ゾンビ化の原因は映画の中で明確に説明されていませんが、狂牛病にかかった牛を救おうとした牧場主が、ネットで治療薬を購入したものの、実はそれは成長ホルモンとかが入っていて・・・というような感じです。このあたり、アメリカのBSE問題への対処を風刺しているようにも見えるし、そういう意識なしにBSEを単なるネタとして取り上げているだけ、とも見えます。どっちにしても、映画監督はそこらは深く考えていない模様です。
この映画は基本的のコメディー・ホラーなんで、随所にバカバカしくも笑いをとるシーンが満載です。「焼く前の生ハンバーガー(タマネギと挽き肉がミンチになっているやつ)」が飛びかかってきて人を襲って食う(?)シーンなんて笑うしかないほどバカ丸出しだし、最後の方でジェイソンとエイミーの親子が会話をしながらゾンビを倒していくシーンも笑えます(しかもジェイソンの武器はテニスのラケットだし)。
あるいは、ゾンビが欲しがっている店の景品(帽子とかマグカップとかシャツとか)でゾンビの興味を逸らしといて逃げる、なんてシーンも秀逸。そうそう、「おまえの携帯電話は?」「車の中においてきた!」「オーマイ、ゴッド!」というシーンで、ドアの外のゾンビが携帯電話を手渡し(?)してくれる、なんてのもありましたね。ここは笑えたな。
とまぁ、このくらいしか書くことがない映画です。ひろ〜い心を持ったゾンビ映画ファンにのみ御覧ください。
(2012/05/11)