《クレイジーズ "THE CRAZIES"★★★(2010年,アメリカ)


 1973年製作のバイオハザード映画《ザ・クレイジーズ》のリメイクで、オリジナル版の監督はあのジョージ・A・ロメロ(ご存じ、ゾンビ映画の生みの親)。話のテンポもよく、カメラワークも工夫されていて、最後まで楽しめる良質なウイルス感染パニック映画といっていいでしょう。


 舞台はアイオワ州にある人工1000人足らずの小さな町、オグテンマーシュ。ここで保安官のデヴィット(ティモシー・オリファント)は高校の野球の試合を見ていたが、そこに突如、住民のローリーがライフルを構えてグランドに入ってくる。異常を察知したデヴィットは選手を避難させ、無言で立つローリーから銃を取り上げようとした、彼が銃を向けてきたためやむなく射殺してしまう。

 その頃、デヴィットの妻である医師ジュディ(ラダ・ミッチェル)の病院を妻に連れられた男が受診していた。特に異常は見つからないため帰宅させたが、その夜、男は妻子を家に閉じこめて自宅に火を放ち、二人を殺してしまう。

 そして、狩猟をしていた男たちが死体を発見し、通報を受けたデヴィットが駆けつけると、広大な川に墜落している軍用機を発見する。その川は町の水源であり、ローリーの自宅は水源地に最も近かった。デヴィットは軍用機から何かが流れ込んだのではないかと疑う。

 しかしその夜、突如町に物々しい防護服に身を固めた軍隊が踏み込み、次々に住民たちを連行して一カ所に集め、体温を測り始める。感染者を見つけるためだ。そして、ジュディは感染者としてデヴィットから引き離され隔離される。

 しかしデヴィットは妻が妊娠しているために体温が高いと考え、保安官補佐のラッセルの助けを借りてジュディを助け出すが、すでに町は軍によって包囲され、町の中の凶暴化した感染者が次々と襲ってきて・・・という映画です。


 バイオハザード系の映画というと、ホラー色を強くするか、サバイバル・サスペンス色を強くするかで二つの系統に分かれますが、この作品は明らかに後者です。感染者がオドロオドロシく変身するわけでもないし、ゾンビのように襲いかかってくるわけでもありません。普通の人間が凶暴になって襲ってくるだけのことですが、逆にそれが変にリアルで怖いです。

 また、小道具の使い方もうまいです。デヴィットが手のひらに刺さったナイフで襲ってくる女性を倒すのも意表を突く使い方だし、自動車洗車場のシーンも日常的に見慣れているからこそ変に怖いです。高校の校長先生が農作業用のフォークを持ってベッドに縛り付けられている人たちを次々に刺し殺すシーンも、武器が鋭利な刃物や銃でない分、見ていてとても「痛い」感じです。これで刺されたくないです。

 登場人物の中で一番格好いいのが保安官補佐のラッセル。常に冷静沈着で、ここぞと言うときには見事な狙撃の腕を発揮し、たびたびデヴィットとジュディの危機を救います。二人を助けるため、軍隊の前に一人で歩いていくシーンはまさに「漢(おとこ)」です。このラッセルを始め、登場人物がかなり丁寧に描かれているため、B級映画に特有の安っぽさが感じられません。


 もちろん、説明不足の箇所は少なくありません。例えば、最初の方で発見された軍用機は1週間以上たって発見されたことになっていますが、その事故から最初の感染者が出現するまでのタイムラグも説明されていないし、そもそもこのウイルスは空気感染するのにデヴィットとジュディとラッセルに最後まで感染しないのも変です。また、デヴィットがラッセルが感染しているのでは、と疑うシーンがありますが、あのシーンでのラッセルの行動も突発的で意味不明。さらに、軍は感染蔓延を防ぐために、この町を核爆弾(?)で吹っ飛ばし、その後さらに広い面積をターゲットにロックオンしたところで映画が終わりますが、その理由も説明されていません。

 おかしいと言えば、かなり大きな軍用機が墜落したのに住民が気づかないと言うのもかなり変だし、墜落してから軍が出動するまでに1週間かかっているのも変です。通常なら、事故直後から出動するはずですからね。

 こういう風に穴も結構ありますが、冒頭の事件の発端からスリリングだし、途中で中だるみすることもなく軽快なテンポで進むし、サスペンス・ホラー映画の王道を行くような怖がらせ方も堂に入っています。この手の映画としては水準以上の面白さといえます。

(2012/05/24)

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