《ソーラー・ストライク 2012 "2012 Supernova"(2009年,アメリカ)


 プライムウェーブという配給会社がございまして,ここが勝手にシリーズ化しているのが「ソーラー・ストライク」です。もともとは太陽の活動がおかしくなって地球が高温化して・・・という設定の映画シリーズ第1作目で,その後は似たような設定の映画に原題を無視してシリーズ化しているわけです。まぁ,似たような「シリーズ」は掃いて捨てるほどありますけどね。

 というわけで,今回も性懲りもなく見てしまいましたが,「ソーラー・ストライク」シリーズ(だからシリーズ物じゃないんだってば)の中では一番出来が悪いのが今回の《2012》です。NASA本部と宇宙ステーションを舞台にしている映画なのに,そこらの空いている工場でロケしましたというのがバレバレで見ていて悲しくなるし,壮大なテーマの割には登場人物が少なすぎて寂寥感が漂うし,勝手に自分から窮地に飛び込んでは勝手に絶体絶命状況を繰り返す主人公の奥様には腹立たしさを通り越して脱力感を覚えるしかないし,主人公がスペースシャトルに向かう乗り物は空港の貨物輸送用カーゴだったりして,それを見ると「映画作成における経済格差」という言葉が頭に浮かんだりします。この映画は絶対に,テレビ朝日の戦隊物シリーズより金がかかっていないはずです。

 ちなみに,この映画を制作したのは,この手のおバカ手抜きパニック映画を次々と発表しているAsylumでございます。Asylumはいつもながら,いい仕事をしています。


 まず,オープニングで200年前にこと座にある恒星が超新星爆発を起こすシーンから始まります。そのエネルギー波というか衝撃波が周囲に広がっております。チャチなCGですが,心の目でご覧ください。

 そして200年後,自宅でお休みのケルビン教授宅の電話が鳴ります。NASAから「例の衝撃波が予想より早く地球を襲いそうだ」という緊急連絡です。教授は妻のローラ,娘のティナに5分後に出発すると指示します。一家はNASAから96キロ離れたところにお住まいなので車で向かいますが,車の中では奥様のローラが「あなたは一体何の仕事をしているの? 私にも話せない仕事なの?」とブーたれますが,その時武装集団が襲って来魔数。タイヤを打ち抜かれたため,車を止めてなぜか資材置き場みたいなところに逃げ込みます。テロリストは「お前は宇宙ステーションに核兵器を何度も持ち込んでいる」とか何とかいって銃を突きつけますが,何とかFBI(?)が助けてくれます。

 ご一家は無事にNASA(建物の看板にデカデカとNASAと書いてあるからすぐにわかるよ)に到着します。どうやらケルビン教授とNASAとのメールでのやりとりがハッキングされていた模様です。どうやら,NASA内部にスパイが潜り込んでいる模様です。


 そこでケルビン教授はNASAで仕事を続け,彼の妻と娘はFBI(?)の護衛付きで安全な軍の施設に避難することになります。これで妻子は安全だね,と安心のはずですが,なぜか二人は「おばあちゃんの形見のネックレスを忘れちゃった」と自宅に戻ります。仕方ないのでFBIの二人も同行します。ばあちゃんのネックレスが見つからず,ローラさんは「あの人っていつもこうなのよ」と旦那様に八つ当たりしますが,ティナちゃんが「パパのこともわかってあげて」とかアットホームな会話がグダグダと続きます。

 地球が木っ端みじんかも知れない事態なのにばあちゃんのネックレスかよ,というツッコミを入れたくなりますが,時間稼ぎなので温かく見守ってください。


 さぁ,そろそろ何か起こるなと思ったその時,地震が起きます。もちろん二人は辛くも脱出して,基地に向かいます。FBIの二人が先頭車,ローラとティナが後続車に乗っています。護衛するんならFBIが運転席と助手席,ローラさんたちは後部座席と相場が決まっているはずですが,なぜ分乗するんでしょうか?

 勘のいい人はもうおわかりですね。地震で岩が転げ落ちてきて,FBIが乗っている先頭車が直撃を受けるという展開にするためです。というわけで,護衛役のFBIお二人はお役御免。そしてローラさんとティナちゃんご一行は車が動かなくなって立ち往生し,以後はいろんなところを右往左往しては時間稼ぎをします。


 一方,NASAではケルビン教授のIDをハックしてデータを盗んだ形跡が見つかります。そこでケルビンは部下に「IDとパスワードだけでなく,生体認証も入れろ」と命令します。オイオイ,NASAの最重要部門ってまだ生体認証を入れてなかったの? NASAってコンビニのATMなみのセキュリティーなんですね。

 そして,ケルビン教授にロシア人のハゲ科学者と中国の若いねーちゃん科学者が参加します。「衝撃波防衛プロジェクト」に協力するためですが,ロシア人のハゲは最初からウォッカ片手でございます。「ロシアと言えばウォッカね」というわかりやすいシーンですが,中国ねーちゃんは水餃子を食べながら登場してほしかったです。

 で,NASA内部でも磁気嵐のための影響とか起きたり,ケルビン教授が目出し帽姿の暴漢に襲われたりします。ケルビン教授は気を失い,助けに入っが一人は殺されます。暴漢の背格好といい,蹴りを入れるときに口から出る中国語といい,誰が見ても中国ねーちゃん科学者なんですが,助け出されたケルビン教授は「襲ったのが誰か,全くわからない」と言います。せめて「襲ってきたのは女性のようです」とか何とか言えよ。

 そして,中国ねーちゃんは「私,サンドイッチを作るために部屋の外に出てましたけど」と答えて,みなさん,その答えに満足。NASAもFBIも性善説にたって人を疑うと言うことを知りません。


 そうこうしているうちにも,衝撃波は着々と太陽系に襲いかかり,冥王星が木っ端みじんになり,木星の衛星も粉々になっています。残り時間,わずかです。

 ケルビン教授とロシアのハゲと中国ねーちゃんが,宇宙ステーションの核兵器を地磁気圏の外側で爆発させるか,内側で爆発させるかで激論をしています。どうやら,大量の核兵器を一気に爆発させて,衝撃波に対するシールドにしようと言う計画らしいです。冥王星を一瞬で粉々にするような衝撃波を,たかが原爆6個とか7個で防げる訳ないじゃん,と誰しも失笑するシーンですが,御三方は至極真面目です。それどころか,地磁気圏の内側で爆発したら,地球環境が破壊されちゃうわよ,とか反対したりしています。何で君たちは,この状況下で「地球環境を破壊してはいけないわ」という議論をしちゃうの?


 そういえば,ローラとティナはどうしているかというと,自動車がガス欠で立ち往生しております。そして,そこらに雷がボンボコ落ちまくっています。二人は「木の根本は危ない」とか「金属はだめよ」とか言いながら走り回り,納屋を見つけて入ります。どう見てもトタン張りの高い倉庫で,真っ先に雷様の標的になりそうですが,構わずお二人は納屋の中に避難。ここで,納屋の持ち主のハゲおっさんが親切にしてくれて,貸してもらった携帯電話でケルビン教授と連絡を取り,「あなた,愛しているわ」とかグダグダした夫婦の会話をします。ただでさえ不足気味の緊迫感が,さらに不足します。

 でも大丈夫。ハゲおっさんがいきなり豹変して,「母ちゃんは俺の車で逃げてもいいが,娘はおいていけ! 二人で楽しもうぜ」とスケベおっさんに大変身。お約束の展開です。ローラさん,隙を見て棍棒でおっさんを殴り倒し,ローラとティナはおんぼろピックアップトラックで逃げ出します。

 ローラさんはケルビン教授と思いでの洞窟を目指します。そこなら安全だろうというわけですが,冥王星木っ端みじんなんですから洞窟くらいじゃ安全な訳ないよね,と誰しもツッコミを入れたくなります。でも,ここでローラさん,乱暴運転しちゃって道路をはずれ,車は動けなくなります。カモがネギを背負って鍋に飛び込んで自分で火を点けているようなオバチャンです。すると向こうから巨大竜巻が迫ってきます。二人は偶然近くにあったボロボロの廃屋を見つけ,そこに避難します。誰が見ても竜巻で一番最初に巻き上げられるオンボロ廃屋です。


 今度こそ,二人は死んでくれるよね・・・と思っていたら,なんと二人とも無傷で助かっております。竜巻君,頑張りが足りなかったようです。でも,外は気温が上がって二人は汗だくです。ここでようやく,この映画が「ソーラー・ストライク」シリーズだと言うことがわかります。美女が汗だくは,このシリーズのお約束ですからね。

 一方,ケルビン教授とロシアのハゲと中国ねーちゃんの3人は,セスナ機の操縦席より安っぽい作りのスペースシャトルに乗り込み,宇宙ステーションに到着。ちなみに,シャトル内の3人は工事用ヘルメットみたいなのを被っているだけの軽装備です。宇宙服も着ていません。無人の宇宙ステーションで,何とか核弾頭を打ち出そうとしますが,もうすでに宇宙ステーションのあちこちで爆発が起きたりしています。

 ロシアのハゲが死んでます。それを見つけたケルビン教授に中国ねーちゃんが襲いかかります。なんという展開でしょう,目出し帽の暴漢は中国ねーちゃんだったのです。ここまで気がつきませんでした。

 ケルビン教授,必死で反撃し,何とか中国ねーちゃんを倒します。でも,核爆弾を撃ち込むミサイルがありません。そこでケルビンは宇宙ステーション内部で核を爆発させることを決意し,妻と娘の別れを告げてスイッチを押します。


 ・・・と思っていたら,ラストシーンでケルビン教授が生きてました。ステーションの中央部分を切り離して脱出していたんですね。ローラさんとの愛も確認し,めでたし,めでたしでございます。

(2012/07/13)

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