《マンドレイク 人喰い植物のえじき "Mandrake"★★(2010年,アメリカ)


 年がら年中,モンスター・パニック映画やらモンスター・ホラー映画を見ていますが,9割以上は箸にも棒にもかからないものばかりです。なんでそんな映画ばかりいているかというと,クズ映画ほどレビューが書きやすいからです。クズの度合いが高ければ高いほど,見ているのは退屈で苦痛ですが,レビューを書く際にはスラスラ書けます。とりわけ,モンスターの造形も駄目ならストーリーも駄目,登場人物にも魅力がない・・・なんてクラスのダメ映画になると,筆が勝手に走っちゃって,あっという間にレビューが完成します。

 レビューを書きにくいのは中途半端にダメなやつです。この映画はまさにそれ。映画を見ている間中,「なぜこの映画はダメなのだろうか?」,「どこでボタンを掛け違ったのだろうか?」,「この素材でいい映画にするためにはどう工夫したらいいのだろうか?」と,そういう事ばかり考えていました。

 ちなみにこの作品は,テレビ向けに制作された映画のようです。原題の "Mandrake" はマンダラゲ(曼陀羅華),つまりチョウセンアサガオのことで,華岡青洲が世界初の全身麻酔を成功させた時に使ったのはこの植物です。


 舞台は南米のどっか。「自分はこの地を征服したスペイン人の末裔である」と信じる大富豪がいて,ご先祖様が残した秘宝の剣を探しています。そこで富豪さんが雇った4人(主人公のタフガイ,言語学者のお姉さんというかオバちゃん,調子のいい遊び人風,大人しいメガネおじさん)が南米の奥地に調査に入ります。現地にキャンプがあり,ここでもう一人のお姉さんというかオバちゃんが,富豪さんと4人組の連絡係をしています。

 反政府ゲリラとかがいますが,タフガイの機転で難なくクリアしてジャングルを進みます。すると,呆気なく目指すお墓を発見しちゃいます。お墓の蓋には何やら象形文字が書かれていて,言語学者のお姉さんがそれを解読しようとしますが,彼女を無視して残りの3人はさっさとお墓を開けちゃいます。そこには骸骨が眠っていて,しかも伝説の剣が刺さっているではありませんか。言語学お姉さんは「墓の内側に何か書いてある。注意書きかも」と言っているのに,それを無視して遊び人訓は剣を引き抜いちゃいます。そして,ケータイのデジカメで剣を撮影し,富豪さんに送ります。富豪さん,大喜び!

 さぁ,仕事は終わったから帰ろうぜ,というところで,いきなり異様な姿をした連中が襲ってきます。すでに絶滅したと考えられてきた部族です。そして,メガネおじさんが捕まっちゃいます。

 原住民に連行されたメガネおじさんは,すでに囚われている白人女性(もちろんオバちゃんである)に出会います。どうやら,富豪さんに雇われた別グループのメンバーらしく,彼女以外の全ては殺されたらしいです。そして秘密の儀式が始まり,彼女は「人喰い植物」への生贄として殺されてしまいます。

 一方,「秘宝の剣発見」の連絡を受けて欣喜雀躍の富豪さんは,転送されてきた写真を見て剣に巨大なルビが嵌めこまれているのを知り,4人組がその剣を盗んでしまうだろうと邪推し,4人組から剣を取り戻そうと自らジャングルに入ります。

 原住民と人喰い植物に襲われた4人組は生きて帰れるのでしょうか,そして富豪さんは伝説の剣を手にできるのでありましょうか・・・という映画でございます。


 植物のバケモノが人間を襲う,という映画というと,あの伝説的クズ映画《肉喰怪獣キラーツリー》とか,これまた微妙につまらなかった《パラサイトバイティング》とか,巨大トマトが襲ってくるという開いた口がふさがらないレベルのクズ映画《アタック・オブ・ザ・キラー・トマト》がありますが,どれもこれも「モンスターの造形」のところで苦労しています。

 本作も《パラサイトバイティング》も,ツルが襲ってくるという設定で共通していますが,本来は動かない植物や樹木が動物を襲うためには可動部分が必要で,それが「ツル」なのでしょう。しかし,本作のモンスターは基本的に樹木でしかもモンスターは一匹(一本?)しかいないため,「神出鬼没のモンスター」という設定にできないことになります。これでは,いくら「人喰い樹木」といっても怖さ半減です。


 それじゃモンスター映画として面白くならないよね,ということに気がついたのか,「すでに絶滅したはずの凶暴な原住民」を登場させたんじゃないでしょうか。そういうわけで,アメリカ人4人組を襲う役目は「人喰い樹木」より凶暴原住民が担っているのでしょうし,実際,凶暴原住民の活躍(?)のほうが目立っているわけです。

 となると,凶暴原住民と人喰い樹木の関係が問題になります。普通なら,「人喰い樹木は原住民の守り神で,外からの侵略者のみ襲う」という設定にするはずですが,この映画では人喰い樹木は人間と見ると原住民だろうがアメリカ人だろうが,見境なく襲ってきます。そこで,「人喰い樹木を沈静化させるために,侵略者を生贄にする必要がある」という設定が必要になったのでしょう。

 ところが,そうなると,映画の途中で侵略者(=アメリカ人)が殺される(=生贄になった)のに,なぜ人喰い樹木はおとなしくならないの,という矛盾が生じてしまうのです。そこで映画製作者側は,その矛盾を解消するために・・・と,後付けの説明をくっつけ,その結果,ストーリーはわかりにくくなってしまいました。増改築を繰り返す病院のようにわかりにくいです。やはりここは常識的に,「人喰い樹木は原住民たちの守り神」という設定にしておいたほうが良かったと思います。


 それと,「文明から隔絶された凶暴原住民」と言う割には,バリカンで刈り上げたようにきちんとしたヘアスタイルや,前のワールドカップの時のベッカムを彷彿とさせる髪型をしていますが,ここはツッコんではいけないようです。見て見ぬふりをするのが大人の知恵です。

 大富豪さんがいきなり「俺がジャングルに入る」というのも,普通はないですよね。しかもこの富豪さんはサバイバル技術・技術にも長けていて,なんだか「世界的大富豪」らしくありません。こんなにフットワークが軽いというか,チョコマカ動く大富豪は,この手の映画では初登場じゃないでしょうか。

 あと,モンスター・ホラー映画には「エロ」が不可欠の要素ですが,この映画ではそういう要素は皆無です。テレビ映画だからかもしれませんが,品行方正です。縛り付けられたお姉さんが襲われているというのに,胸の谷間すら見せません。そして,「グロ」の要素も微弱です。つまり,サービス精神は皆無ですので,そのあたりは期待しないよう,おねがいします。

(2012/08/16)

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