ロバート・ロドリゲスの傑作,《フロム・ダスク ティル・ドーン》ほど続編が作りにくい映画はないと思っていた。なぜかというと,第1作目は 「60分までは正統派っぽいクライム・ムービー。その10秒後からはバンパイア映画に豹変!」 というあっと驚く映画だったからだ。つまり,究極の一発芸である。あの一発芸のためのロドリゲスはゲッコー兄弟の異常さと,神への信仰を失いかけた牧師の姿を丁寧に描き,いかにも本格は映画っぽく見せかけておいて,いきなり 「ちゃぶ台返し」 を仕掛けたのだ。用意周到な猫騙しである。そして,その企みは見事に決まり,それは異色の傑作バンパイア映画となった。そして,大ヒット映画になったが,一発芸であるためにロドリゲスは続編を作らなかったし,作る必要性もなかったのだろう。
というわけで,続編の監督はロドリゲスではなくスコット・スピーゲルとなったが,映画監督としてはかなり難しい選択だったと思う。この《2》を見る人は次のような映画ファンしかいないからだ。
つまり,映画作成サイドとすると極めてハードルが高いのだ。《ジョーズ》や《トレマーズ》や《アルマゲドン》の続編を作るより難しいと思う。
そこで,本作の監督スピーゲルはどうしたかというと,「どうせこれはヴァンパイア映画なんだし」 と開き直ったわけだ。最初からバンバン,吸血コウモリとヴァンパイアを登場させ,観客に 「これはヴァンパイア映画ですよ」 と説明するのだ。これなら第1作目と差別化が図れる。
しかしそれでは,凡百のヴァンパイア映画と同じだ。そこでスピーゲル監督は,銀行破りを計画した一味のうち,主人公以外は次々にヴァンパイアに襲われてヴァンパイアに変身する,というシナリオを思いついたのだろう。つまり,仲間が全てヴァンパイアだということに主人公がどのようにして気付いたのか,気付いた後にどう行動したのか,というあたりに焦点を当てて,続編を作り上げたのだ。その結果,
という,3重構造の 「戦いの構図」 が生まれたわけだ。このあたりは工夫したなと思う反面,ストーリー的に捻りも何もなく,ただただシンプルな構成になってしまったようだ。
映像的にはかなり工夫していると思うが,「内部からの視点」 が多すぎて(これが何を意味しているかは見た人はわかると思う),ちょっと単調である。こういうテクニックは,狙い定めた部分で使ってこそ生きると思う。本作のように,のべつ幕なしに使っては台無しである。
ちなみに,60分過ぎの 「ヴァンパイア軍団 vs 警官隊」の銃撃戦は迫力満点だ。これだけはロドリゲスの作品を凌いでいると思う。特に,両者の影の動きだけで戦いの様子を描くシーンは 「なるほど,こういう手法があったか」と, 唸ってしまった。
そういうわけで,ロドリゲスの第1作目を見た上で本作を見たほうがいいのか,第1作目を見ずに見たほうがいいのか,微妙なところはあるが,ヴァンパイア映画としては普通に面白い作品である。
(2012/08/28)