新しい創傷治療:蛾人間モスマン

《蛾人間モスマン "Mothman"★★(2010年,アメリカ)


 Lionsgate社はここ数年、次々にUMA映画を作っていて、これはそのシリーズ第3弾にあたります。ちなみに第1弾は『新トレマーズ モンゴリアン・デス・ワームの巣窟』、第2弾は『マンドレイク 人喰い植物のえじき』でございます。それにしても、地中巨大生物といい人喰い植物といい蛾人間といい、よくもまぁ、微妙なモンスターばかり見つけてくるもんです。

 ちなみに「モスマン」と言われても大多数の日本人にとっては「モスマン? マンモスの間違いじゃないの?」という感じですが、アメリカの都市伝説的UMAとしてかなりメジャーの存在で、1960年代から80年代まで、ウェストバージニア州ポイント・プレザント周辺で目撃が相次いでおります。ポイント・プレザントはUFO目撃情報も多い名所であることから、宇宙人のペットじゃないの、という説まで登場しております。身長は2メートルほどで、蛾の翅の付いた人間型モンスターなんだそうです。

 そういえば、ちょっと前までUFO目撃情報が世界のあちこちでありましたが、最近下火になっています。これは宇宙人がサボっているわけでも、UFOが絶滅したからではなく、デジカメの性能がよくなっ値段が下がったため,だれでもいつでも鮮明な写真が取れるようになったためなんだとか(もちろん,他の説明もありますが・・・)。確かに、昔のUFOの写真ってボケボケ、ブレブレのものばかりで,何でもUFOに見えましたね。


 舞台は、そのモスマンの本場、ポイント・プレザント。卒業を控えた地元高校生の仲良し男女おバカ・グループが湖で遊んでいて、つい羽目を外しちゃって、メンバーの一人の弟さんが事故で死んじゃいます。慌てふためいたおバカさんたちは「俺たちしか知らないんだから、飛び込んだときに頭を岩にぶつけたことにしちゃおうぜ」と意見が一致し、死体の頭をみんなでボコボコに殴って証拠隠滅。科学的には、生前に付いた傷と死後に付いた傷は見分けられるはずですが、何せアメリカの田舎ですから悪事はばれずにすんだ模様。

 そして10年後、町を離れて都会で新聞記者になっていたキャサリンが上司から、「ポイント・プレザントで毎年開催されるモスマン祭りを取材してこい。君はあそこの生まれだろ?」と命令されて、10年ぶりに故郷に戻ります。そこで、デレクなど、あの遊び仲間たち(=10年前の殺人・証拠隠滅仲間)と久しぶりに再開します。ちなみに、キャサリンとデレクは元恋人同士というのはお約束の設定ですね。

 ところがその夜から、怪事件が起き、遊び仲間たちが一人、また一人と惨殺されていきます。どうやら、鏡などの光を反射する物さえあれば、どこにでも忍び込んでこれる怪物です。

 そして二人は町外れに住む盲目の老人フランクに会い、モスマン誕生の秘密(昔、白人と先住民の争いが起き、捕らえられた先住民の族長が拷問の末に惨殺されましたが、死の間際にこの土地に呪いをかけたのです)を知ります。そして、この土地で殺人を犯したのに罪を免れた者がいた時にモスマンが出現し、彼らに命で罪を償わせるのです(この説明を聞くと、モスマンっていいやつですよね)。モスマンに狙われたら逃れられない運命なのですが、モスマンに狙われて助かったのはこのフランク老人一人だけです。そしてデレクとキャサリンは老人から、モスマンの呪いを解く儀式を教えてもらい、モスマンに変化する前の族長の骨から作ったナイフを手渡されます。

 二人は生き残りの一人に連絡し、モスマンが誕生した廃工場の焼却炉でその儀式をしますが、なぜかモスマンは消えず、逆に襲ってくるではありませんか。ライフルで撃ってもモスマンは倒れません。そして一人がモスマンに捕まり、キャサリンとデレクはなんとか脱出。

 そこで二人はフランク老人宅に逆戻りしますが、なぜかフランク老人は二人を地下室に閉じこめ、自分は「モスマン祭り」に出向きます。そして、フランクがモスマンに襲われることになった交通事故の真相が明らかになり、「この街の住民、みんなが秘密を隠蔽した!」と祭り会場で叫びます。

 というわけで「町民みんなが犯罪者」と言うことになり、「犯罪者を許さないモスマン」がお祭り会場で暴れまくります。見境なしに人を襲い、最後にはフランク老人も襲われます。そこに、フランク老人宅の地下から逃げ出したキャサリンとデレクが到着しますが、ライフルの銃弾を浴びせても燃やしてもモスマンは死にません。そこで、キャサリンは手に持っていた「骨のナイフ」を振りかざし・・・ってなお話です。


 90分弱の短い映画なのに、すごく長〜く感じます。ストーリーがあっちにウロウロ、こっちでウロウロし、なかなか前に進まないからです。キャサリンとデレクは無駄にあちこちを行ったり来たりするだけだし、フランク老人の過去もなんだか要領を得ないし、モスマンが町民を無差別に襲うに至るフランクじいさんの説明も「電波系」です。

 そして何よりモスマンに魅力がありませんし、造形的にも疑問符だらけです。翅の形が蛾ではなくコウモリの翅のため、どう見ても「目だけ赤いコウモリ男」、「バットマンのパチモン」にしか見えません。おまけに、テレビ向けに作られた映画(TVM)のため、スプラッターシーンは全くと言っていいくらいなく、「モスマンが襲う⇒悲鳴が上がる⇒血を流した犠牲者の顔がアップ」の繰り返しです。つまり、モスマンがどうやって人間を襲うのかがわからないため、モスマンの恐ろしさがまるで伝わってきません。やはり、モンスター映画はモンスターに魅力がないと面白くないことがよくわかります。


 一応はTVMなんで、役者さんはそこそこのレベルが揃っています。特にデレクの俳優さんはちょっと頼りないけどイケメンさんです。ですが、ヒロインのキャサリンがちょっと残念系。顔立ちはそこそこなんですが、ウエストがアメリカ女性としては細い方かもしれませんが、映画の女優さんとしたらかなりかなり太めです。しかも、太っている割には巨乳でもないし、谷間を見せるわけでもありません。何でこの人をヒロイン役に抜擢したんでしょうか。

 フランクじいさん、いい味を出していますが、この人の説明と行動がいまいち意味不明。昔、悪ガキたちと遊んでいて子供(実はフランクの弟)を車ではねちゃったけど、町長の息子がそれをもみ消した・・・という過去があるのはいいとしても、両親には「弟をひいちゃったけど、俺は運転していない。町長の息子に罪を擦り付けられただけだ」と打ち明けるはずです。それなら、モスマンは「悪い奴らを退治する」のがお仕事ですから、町長の息子一派を狙うけどフランクは狙わないはずです。このあたり、どう考えても整合性がありません。

 冒頭の湖での溺死にしても、「気が付いたらやつが一人で泳ぎに行ったみたいで、探しに行ったら死体で浮いていた」と説明すればいいだけの話しで、死体の頭を潰す意味はないっすよね。


 というわけで、Lionsgateの「UMA第4弾」が今から待ち遠しいです(・・・何しろ,Wikipediaにも「B級映画好き」って書かれちゃったし)

(2012/09/12)

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