《メタル・トルネード》★★(2011年,カナダ)


 カナダでテレビ向けに制作されたSFパニック映画。主演はB級パニック映画といえばこの人,ルー・ダイアモンド・フィリップスさん。フィリピン出身の方です。ちなみに私はこの人の映画を結構見ていますが,いまだに本名が覚えられません。ルーとフィリップスとダイアモンドの順番をいつも間違えてしまいます。ま,どーでもいいことですが。

 竜巻をテーマにしたパニック映画は定番中の定番ですが,今回登場するのは太陽風に含まれるエネルギー粒子が作ってしまった「磁気竜巻」です。世界のエネルギー危機を救うために,無尽蔵の太陽から吹き付けるエネルギー粒子のエネルギーを転換して地上に送り,できた電力を地下に貯めようという,素晴らしい計画なんですが,やはりどっかに設計ミスがあって,それを発見した科学者が口封じ的に左遷させられて,発電を強行した会社が大災害を引き起こす・・・という定番中の定番のストーリーです。そしてそこに,男女の恋愛と親子関係の修復をまぶして一丁上がり,ってなお手軽感がなんともナイスです。

 磁気竜巻はアメリカとフランスで発生し,フランス竜巻はエッフェル塔も飲み込むまでに巨大化しちゃいますが,CGがかなりチャチなためリアル感はまるでなし。一方のアメリカ竜巻は田舎町しか襲わないという落差が笑いを誘います。

 というわけで,「竜巻パニック映画が三度の飯より好き」というマニアにだけお薦めする映画でございました。


 アメリカの会社「ヘリオス」では新世代のエネルギーとして,太陽フレアを利用したクリーンで無尽蔵のエネルギー開発に成功しました。これさえあれば,化石燃料も原発も不要です。原理は「静止軌道に撃ち上げた3機の人工衛星のパネルで太陽フレアの荷電粒子を受け止め,それを磁気ビームに変換し,地上のヘリオス社の受信パネルに放ち,そのエネルギーで発電して新型電池に貯めておく」という夢の様なシステムです(ちなみに,以前から静止軌道の衛星に巨大太陽光パネルを搭載して発電し,それを電波で地上に送る,という実験が提唱されたことがあったけど,あれはどうなったのかな?)

 しかし,その理論を最初に提唱して,その後ヘリオス社から追い出された科学者が自宅で実験している最中に小規模な磁気竜巻を作っちゃって,ビュンビュンと竜巻に吸い寄せられる金属が直撃して死んじゃいます。


 一方,ヘリオス社の開発担当の博士(ルー・ダイアモンド・フィリップス)は,同僚の女性科学者(ニコール・デ・ボア)とイチャイチャしながらシステムを操作しております。ルーさんはどうやら奥さんに先立たれ,最近ニコールさんと仲良くなった模様です。この映画の最後のシーンはルーさんがニコールにプロポーズするシーンだなと,読めちゃいました。

 一方,ルーさんの息子@高校生はニコールさんにいい感情を持っていないらしく,おまけに授業中に化学の知識を駆使したイタズラをしちゃったもんだから停学処分を受けます。この時点で,この映画の最後のシーンはこの息子とニコールさんが和解するシーンで終わり,途中で得意とする科学知識で父親を助けるんだな,と読めちゃいますが,ここはまだ気が付かないフリをして先を急ぎます。


 そしてヘリオス社ではついに実証実験開始! 人工衛星のパネルが太陽風を受け止め,そのエネルギーを地上に送ってくれます。なんと1兆ワットです。途中でちょっとヤバそうになりましたが,無事に莫大な電力が作れました。社長さんは早くも投資家と金儲けの話に爆走中!

 その頃,人里離れた山中で伐採作業中の男の持っているチェーンソーがいきなり中に舞い上がります。もちろん,磁気竜巻の磁気に引っ張られたのです。チェーンソー以外の鉄製品を一切身に着けていなかったため,助かりましたね。なんて運の良い人なんでしょうか。

 次は町外れのガソリンスタンド襲われます。店の陳列棚がガタガタ揺れたと思うと,いきなり宙を飛んで窓をぶち破って飛んでいきます。外に停めてあった車も浮き上がります。ポルターガイストも真っ青です。でも,数分で不思議現象は終わっちゃいます。人的被害もゼロです。


 その頃,ルーさんは2%のエネルギーがどっかに逃げていることを知ります。2%といっても1万世帯1年分の電力です。社長にそれを訴えますが,もちろん金儲け至上主義@社長は聞く耳持たず。間近に迫ったフランス・ヘリオス実証実験でそれどころではありません。もちろん,この「逃げ出した磁気エネルギー」が竜巻となって金属を吸い寄せながら移動していたのです。

 一方,ガソリンスタンドから被害の報告を受けた保安官は,不可思議な現象が起きていることを知り,知り合いのルーさんに連絡します。ルーさんは現場に駆けつけ,金属のみが吸い付けられたことを知り,磁気竜巻が起きていることに気が付きます。そして,このスタンドがヘリオス社から25キロしか離れていないことから,あの「2%」が原因では,と危惧します。

 そこでルーさんは,地質学者の叔父に相談します。研究者揃いの一家のようです。なぜ地質学者に相談するのか,ちょっと理解に苦しみますが,さすがは伯父さん,秘書の何気ない一言で「磁気竜巻は磁鉄鉱の鉱脈に発生する磁気沿いに移動し,その磁気を取り込むことで巨大化していく」というメカニズムに気が付きます。さすがは優秀な地質学者です。そして,それをルーさんに伝えます。

 その連絡を受けたルーさんと恋人とルーさんの息子は保安官事務所にいますが,磁気竜巻であることを証明するために,ヘリオス社の受信パネルの監視カメラ映像を解析すればいいことに気が付きますが,そのためにはヘリオス社のコンピュータに入り込む必要があります。するとルーさんの息子が「僕ならできる」と手をあげ,見事にハッキングに成功! 物理学者の父,天才ハッカーの息子,そして天才地質学者の叔父・・・,なんという優秀な一家でしょう!


 その頃,フランスでも実験が始まりますが,やはり2%のロスがあり,システムそのものの欠陥があったのです。そしてフランスでも磁気竜巻が出現します。

 一方,磁鉄鉱鉱脈のデータから竜巻の進路を割り出した伯父さんは保安官に住民避難を提案。住民は地下室か木造家屋にとどまるように指示が出ます。木造家屋なら安全といっても,金属ゼロじゃないよねぇ,という気がしますが,とりあえず納得しときましょう。

 一方,ヒロインとルーさんの息子は研究所に向かう途中で竜巻に遭遇し,近くにあった教会の中に逃げ込みます。そして地下室に逃げ込みますが,ヒロインを助けようとしてルーさんの息子が怪我をしてしまいます。もちろんこれで,ヒロインとルーさんの息子が和解するためのお約束のエピソード,ってやつですね。


 その頃,ようやく事態の重要性に社長が気が付き,ルーさんと対策を相談。そして「油田火災とかは爆弾を爆破して酸素を絶って消化するから,この場合は磁気を絶ってしまえばいいんだ」となり,電磁波爆弾を竜巻に打ち込む計画を国防省に提案。この手の映画なら大抵ここで「原子爆弾を打ち込もう」となるんですが,磁気竜巻に原爆はないよねぇ,と気がついた模様です。国防省ではろくに議論もせずにこの計画に同意し,無人機に電磁波爆弾を積み込みます。そしてフランスでもこの電磁波爆弾を使うことを決定します。映画の残り時間から見て,慎重な議論をする暇がなかったようです。

 フランスのパリは既に壊滅状態ですが,アメリカ竜巻はフィラデルフィアを直撃するまであと4分もあります。そして,無人機は見事に爆弾を命中させ,磁気竜巻はあっという間に消滅します。パリは壊滅しましたが,アメリカはガソリンスタンドとか数軒の民家とか教会の天井だけを破壊しただけで助かったのです。アメリカさえ助かればフランスはどうでもいい,という感じがナイスでございます。


 そして,最後は伯父さん宅でパーティーが開かれ,ルーさんの息子はルーさんとヒロインの結婚に同意し,めでたし,めでたし!

(2012/09/19)

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