「あまりの訳のわからなさに,最期まで見た人がいるという事実の方が不思議」級のクズ映画です。「映画とはこういうものだ」という最低ラインすらクリアしていない気がします。つまり,映画として成立する最底条件を満たしていません。これは映画と言うよりは,映像の羅列です。多分,映画監督が撮りたかったシーンを前後の脈略なく撮影し,それが90分になったところで適当にくっつけて,なんとなくストーリーがあるように仕上げた,という感じじゃないかと想像します。でないと,ここまでひどい映画は作れないんじゃないでしょうか。
それと,映画の中では頻繁にゲロと下痢のシーンが出てきます。アメリカンな人々の間では,ゲロとお尻とオナラが笑いのポイントのようで,笑いを取ろうとするとすぐにお尻を見せたりゲロを吐くシーンが登場しますが,アメリカンでない人間にはなぜそれがおかしいのか,全くわかりません。アメリカンの笑いのポイント,理解不能です。そういうわけで,ゲロを吐くシーンが苦手な人はこの映画は見ないで下さい。
そういうわけで、「これがこの映画のストーリーではないか」と私が想像したものを紹介すると次のようになりますが、もしかしたら全く違っているかもしれません。
地球のあちこちに宇宙船が出没したかと思うと、そいつ等はいきなり圧倒的な武力を持って世界の各都市を無差別攻撃してきます。攻撃してきた宇宙人はネフィリム(Nephilim)です。これは旧約聖書に登場する巨人の種族で、かつて地球を支配していましたが、人類との戦いに敗れて宇宙のどっかに逃げていったそうです。この時点で「宇宙に宇宙船で逃げ出すだけの文明を持っていたネフィリムが、新石器時代の人類と戦って負ける訳ないだろ!」と、映画開始30秒の時点でツッコミが入ります。
続いて、一人の囚人がインタビューを受けています。なんでも,バスを襲撃して28人を殺しまくって服役しているそうですが、自分の子供まで殺しちゃったんだって。多分この人が主人公の一人らしいです。
でもって、ロサンゼルスでショップを経営するジョディという女性登場。30代後半くらいの普通のおねえさんですが、一応この映画のヒロインです。「このレベルで映画のヒロイン?」と文句を言わないでください。この女性が娘と電話で話ながら接客しているところで、宇宙人が襲撃してきます。そして世界各地の都市が攻撃され、ジョディさんも逃げまどい、誰なのか説明すらないお姉さんが助けてくれたりします。
そして、カリフォルニア州知事(?)はネフィリムに降伏し、ロサンゼルスにネフィリムの本部が作られ、ロサンゼルスは高い壁で囲まれて隔離されてしまいます。そして宇宙人に抵抗する地球人はバンバン殺されます。
で、ジョディともう一人の女性はどっかのビルの廃墟に隠れ住んで、なんとか生き延びています。でも、そこでも宇宙人に見つかって、女性一人はあっけなく死んじゃってジョディだけが捕虜(?)としてどっかの施設に連行されます。そして、ジョディは2人の男たちと一緒に監禁されます。バケツに入ったゲロのような食事を与えられ、それを手で掬って食べます。そしてゲロを吐いたり下痢したりするシーンが何度かあります。この時点でこの映画が「ゲロ映画」であることが判明します。
で、刑務所の護送車みたいなのが襲撃され、そこからさっきの「28人殺しの囚人」が脱走(?)します。
一方、収容所ではジョディさんたちご一行はバケツご飯を食べてはゲロを吐いています。そして収容所の別室(?)では二人の女性(これまた普通のおばちゃん前期)がネフィリムに命じられて(?)、DNAの分析とかしています。
その頃、さっきの脱走囚人さんは拳銃で追ってきた宇宙船を撃ち落とします。38口径で撃墜できる宇宙船でした。
そして、なんだかわからん人々がネフィリム軍と銃撃戦をしているシーンです。多分、人類防衛軍とか反乱軍のようです。反乱軍がピンチですが、そこをさっきの囚人さんと思われるオッサンが助けます。そして、ピストルとかライフルで宇宙人を倒し、防衛軍の基地に一緒に向かいます。地球が廃墟になっているのにガソリンをどこから調達したのかわかりませんが、とにかく車は走ります。そして、反乱軍のリーダーらしい女性(これも普通のオバチャン前期)が、「彼らは特殊な血液型の人間を捜しているのよ」と説明します。ネフィリムはなぜか AB型Rh(-) を探しているようです。で、ネフィリムがつけているスカウターみたいなのを通すと、この血液型の人間だけが判別できるため、それ以外の人間はバシバシ殺しているようです。
で、よくわからないのですが、結局はこの防衛軍のアジトもネフィリムに襲われ、全員逮捕され、ジョディたちの収容所へ。そして囚人さんはジョディと同室になります。そして、なんだか訳のわからんエピソードがダラダラとあり、突然、囚人さんは残飯バケツを見て「その肉を食うのは止めた方がいい。それは人肉だ!」と言います。
で、研究室でDNAの研究をしていた女性の一人、フランシーヌは実は「ネフィリムなんだけど裏切り者」であることがわかります。彼女によると、ネフィリムは実は火星人で、火星人は共食いをしているんだそうです。でも、共食いしていたら全滅しちゃうんで、そこで地球人に目を付けたんだそうです。でも、「火星人が食べるのは火星人だけ」なのでそのままでは地球人は食料になりません。そこで、食べられるようにするために地球人のDNAを操作しているらしいです(・・・という説明でいいのか、よくわかりませんが)。そして、このフランシーヌさんは「地球人になりたい」と考えているようです(・・・という説明でいいのか、よくわかりませんが)。
その頃、囚人オッサンは「実はバスの事件は巨大な芋虫が襲ってきて全滅し、自分の息子まで食われてしまった。しかし政府はその事実を隠蔽し・・・」とかなんとか説明します。となると、火星人の本体はこの芋虫ということになりそうですが、全く説明なし。
で、訳のわからんエピソードが幾つかあって、ジョディと囚人オッサンとフランシーヌの三人組は、ロサンゼルス郊外のランカスター武器庫に向かいます(ここに武器がたくさんあるという情報があったから)。そして、訳のわからんエピソードが幾つかあって、ジョディとフランシーヌは「壁」の下のトンネルを通って外の世界に出ます。そして、ジョディは娘を捜すために自宅のあるリトルロックに向かいますが、そこは廃墟になっていて娘愛用のぬいぐるみが落ちているだけです。
で、二人は武器庫に向かい、なぜか途中で姿を見せなくなった囚人オッサンも復活して合流。しかし、武器庫はすでに破壊されておりました。
するとなぜか、フランシーヌは「近くの倉庫に行きましょう。医療設備もあるし」とか言い出します。もう何がなんだかわかりません。そこでフランシーヌは、ネフィリムのDNAを破壊する薬を調合してジョディに飲ませます。
そして、フランシーヌはジョディを伴って投降し、二人は芋虫さんの餌になります。すると、ネフィリムたちは悶え死にます。食った芋虫さんが死ぬのは当たり前として、何で食ってもいないネフィリムの皆さんが死んじゃうのか,理由を知りたい人はこの映画の監督に質問して下さい。
そして、火星人たちはさっさとトンズラこいて、火星に戻っていきましたとさ。そしてラストシーンでは、例の囚人オッサンがジョディの娘さんに「君のままは英雄なんだ」と教えるのでありました。
ちなみに、冒頭の火星人様ご一行の乗る宇宙船団が地球に向かうシーンはかなりのクオリティです。この映画で唯一、「映画らしいシーン」です。しかし残念なことに、このCGで予算を全て使い果たしてしまったようです。
(2012/10/02)