テレビ向けに作られたすごーく出来の悪いサメ・パニック映画。低予算で作られたTVMにありがちなレベルの作品で,要するに「暇つぶしになるかならないか,かなり微妙なライン」でございます。
映画タイトルを見るとあたかも「巨大サメが空をとぶ」ように思ってしまいますが,もちろんサメは飛びません。原題は "Swamp Shark",つまり「沼鮫」ですね。この映画に「フライング」という邦題をつけた配給会社,いい仕事をしています。さらに言えば,DVDジャケットのようなシーンは一度もありません。いたって地味なサメ映画でした。
この映画を見ようという酔狂な人はいないと思いますので,ストーリーを紹介しつつツッコんでいこうと思います。
部隊はアメリカにあるアチャファラヤ川(ルイジアナ州にある川で広大な湿地が周囲に広がっていることで有名らしいです)。いかにもお馬鹿そうな若い男女グループが川辺で騒いでおります。明日から始まる「ワニ祭り」の前夜祭のようです。そこに地元の保安官がやってきて「すぐに家に戻れ」と命令します。
若者たちがいなくなったところで,保安官は大型のタンクを載せたトレーラーに乗った男と合流します。どうやらそのタンクの中には「凶暴な希少生物」が積まれていて,保安官は裏で希少動物の取引をしている悪いやつなのです。すると,そのタンクの中の生物が不意に暴れだし,固定ロープが切れてタンクごと川にドボン! そこから何かが逃げ出します。悪徳保安官はそれを見て「長い夏になりそうだな」と一言で片づけます。後に,これが深海で新発見された世界で一匹だけの巨大サメであることが判明します。深海巨大サメを保安官が購入してどうするつもりなのか,最後までわかりません。
舞台はかわって川岸にあるレストラン「ワニの小屋」。3人兄妹(長男ジェイソン,長女レイチェル,次女クリスタル)が経営していて,売り物は「ワニに餌を与えるショー」です。ジェイソンは元アメフトの花形選手,レイチェルは真面目な頑張り屋さん,そして遊びたい盛りのクリスタルはちょっとご不満の様子です。
その「ワニの小屋」で酔っ払いジジイが暴れたんで保安官を呼びますが,なぜかジェイソンが無理やり逮捕されそうになります。すると保安官はレイチェルに「今度付き合ってくれたら逮捕しないでおくけど・・・」とか言ったりします。絵に描いたようなクズ保安官でございます。そこに今度は冒頭の若者グループがやってきて,レイチェルをナンパして電話番号を教えます。
その夜,酔っぱらいジジイが店に忍び込み,腹いせにワニの生け簀(?)に毒を撒きますが,突然,巨大なサメが襲ってきてお食事タイム! 物音に気づいたレイチェルがライフルをもって生け簀に行きますが,巨大なサメの背びれを見て,ライフルを打ち込みますがサメはどこかに消えてしまいます。ちなみにこの時点で既に,サメのサイズで混乱してしまいます。人間を飲み込めるくらい巨大なのに,水面から出ている背びれはそれほど大きくないし,水中を泳いでいる様子は「そこらにいる普通のサメ」だからです。どうやら伸縮自在なサメと思われます。
翌朝,生け簀のワニが姿を消したために保安官に通報しますが,副保安官は生け簀に引っかかっている片腕を発見。どうやら酔っ払いジジイの腕のようです。レイチェルは「サメを見た」といいますが,もちろん「沼にサメがいるわけがないだろ」と保安官は一笑に付し,酔っぱらいジジイをわにに食わせた,という容疑で営業停止を言い渡します。それを聞いたレイチェルはいきなり戦闘モードに入り,「私達でサメを退治するわよ!」と宣言し,三人兄弟と従業員2名,そして謎の常連客(後に希少動物保護の特別連邦捜査官であることが判明)も加わり,ボートに乗り込みます。どうやってサメを見つけるかって? 実は飼っていたワニに発信機を取り付けてあったんですよ。つまり発振器はサメの胃袋の中なんですね。そして,難なくサメを発見しますが,本物の巨大サメを見て怖気づいた従業員が勝手にボートを走らせたためサメを倒せません。
一方,舞台はかわって例の若者グループの船。一組のカップルが「どこか静かなところでないと嫌」とか言い出して,小さなボートに乗り込みます。そしてちょっとエッチな事をしようとしてサメに襲われ,胃袋に直行! お約束の展開ですが,二人がいなくなったことを仲間たちは最後まで気にしないので,全くの無駄死でございます。
一方,レイチェルたちは「ワニの小屋」に戻ってグダグダ喧嘩したりしますが,従業員のメタボお兄ちゃんが実は頭脳派で,そのサメの正体をネット検索で調べます。やはり「わからないことがあったらググれ!」は世界の合言葉です。
で,何だかグダグダした展開のあと,ワニ祭りの当日です。サメ映画にはお祭りがお約束ですが,ワニ祭りは気の毒なくらい盛り上がっていません。過疎の村の盆踊りより人が少ないです。祭りの警備担当の副保安官ですが,湖面を見ているよりいちゃいちゃカップルのエッチを覗き見しています。すると,その副保安官めがけてサメがジャ〜ンプ! あっ,ちょっとだけ「フライング・ジョーズ」しております。そうか,君はやればできる子だったんだね。というわけで,副保安官はサメの胃袋に直行しますが,またしても誰も気が付きません。
その頃,次女のクリスタルちゃんはナンパ野郎の船に向かい,「サメがいるから岸から離れちゃダメ!」といいますが,ナンパ兄ちゃんは聞く耳持たずで船を出しちゃいます。クリスタルちゃんと喧嘩になり,クリスタルの持っている携帯電話を川に投げます。あまりに短絡的な行動に,見ている方がついていけません。すると,船が動かなくなります。スクリューに藻が絡まったようです。藻をスクリューから外そうと一人が川に入りますが,もちろんここでサメのお食事タ〜イム! 野郎二人が食われ,ビキニの女の子の首にロープが絡まり瀕死の重傷。
その頃,レイチェルさんご一行はワニ祭りを中止するよう,保安官事務所に行きます。そこで,実は店の常連客が「違法な動物取引を潜入捜査している連邦捜査官」だということがわかりますが,保安官は「みんな逮捕してしまえ!」と部下に命令。そこでお兄ちゃんのジェイソンが逮捕された隙にレイチェルたちが逃げ出し,保安官のボートで脱出します。そして,クリスタルが打ち上げた救助信号に気が付きます。そして,クリスタルを助けますが,ここで「ワニの小屋」の従業員のチャラ男がサメに食べられます。そこでレイチェルは血の匂いでサメをワニ祭り会場に誘導する作戦に切り替えます。「祭り客のいる会場に連れていっちゃダメだろ」と誰しも考えると思いますが,レイチェル姉さん,気にしません。サメ君もノコノコついてきます。
一方,留置所から脱走したジェイソンとメタボ青年は「でかい扇風機みたいなので動くボート(正式名称知らん)」に無断で乗り込み,ワニ祭り会場に急ぎます。そしてメタボ君と一緒に「腐った魚と一緒に網に入れたガスボンベ」を作ります。これを食わせてボンベを撃って爆発する・・・という「あのサメ映画」と同じ作戦を取ります。そこにサメを引き連れたレイチェルも到着。祭り会場は大パニック・・・のはずですが,何しろ客が少ないので大した混乱は起きません。レイチェルさん,ナイス判断でした。
するとサメ君,いきなり地上にダイブして悪徳保安官を食べちゃいます。おーっと,これが「フライング・ジョーズ」ってやつか? 悪徳保安官,あっけなく胃袋に直行! あれっ,こいつが食われるのはお約束だけど,あまりに呆気なさ過ぎないか? 悪役らしく,最後まで無駄な抵抗して欲しかったです。
で,ジェイソンが例のボンベを投げ込み,それをサメ君が咥えます。もちろん,レイチェルが銃を構え,引き金を引きます。「ここで命中させてはあのサメ映画のパクリになってしまう」と気がついたレイチェルさん,見事外します。レイチェル,ナイス判断! ボンベは間抜けな音を出して宙をとび,なんと悪徳警官と裏取引していた密輸業者を直撃!
それを見た連邦特別捜査官はサメをおびき寄せて水中銃みたいなのを発射! 今度は命中します。銛にはロープがついています。そして銃を「でかい扇風機のついたボート」に投げ込み,メタボ兄ちゃんがおもいっきりアクセル(?)を踏みます。レイチェルと連邦捜査官はロープを引っ張ります。すると巨大サメがジリジリと引き寄せられます。どうやら,人間二人で引っ張れる程度のサイズの鮫だった模様です。そして回転する扇風機でサメ君はミンチになっちゃいます。そして,レイチェルとクリスタルとメタボ兄ちゃんと連邦捜査官が抱きあい,二組のカップルが誕生したところで大円団を迎えます。「深海のサメで体表面が硬く銃弾も通さない」と説明したばかりなのに,実は扇風機でミンチにできました。めでたし,めでたし。
(2012/10/25)