新しい創傷治療:スピーシー・オブ・コブラ

《スピーシー・オブ・コブラ "Hisss"★★(2010年,アメリカ/インド)


 何ともへんてこなホラー映画というかモンスター映画というかコメディー映画というか、分類に困る作品です。
 このちょっと困った映画を作ったのはジェニファー・リンチで、《ツイン・ピークス》で有名なデヴィッド・リンチ監督の娘さんですね。カルト映画の遺伝子は父から娘にしっかりと受け継がれているようです・・・いい意味でも悪い意味でも。
 その娘さんがなぜか全編インドでロケをして作ったのがこの作品。

 インドの伝説の蛇女が登場するんですが、インドで作っただけに映画のテンポというか感覚が欧米映画とはかなり違っています。群衆が突然、みんなで踊り出すシーンがあるのはインド映画のお約束でご愛敬ですが、ストーリーの進め方というか、論理構造というか、そこらへんが何かおかしいんですね。そして、ストーリーのわき道へのそれ方が唐突すぎたりするし、真ん中あたりが変にダレたりするし、見ている方がうまくテンポに乗れないのですよ。インドの人たちにとっては、これが心地よいテンポなんでしょうか。

 ちなみに原題の "Hisss" は蛇が舌でシャーシャー言う音の英語表記だそうです。


 映画冒頭では、インドで古くから信じられている蛇神ナギンの伝説が紹介されます。ナギンは一言で言えば蛇女で、体内にナアグマニ(Naagmani)という不思議な石を持っていて、それを手にしたものは不老不死が得られる、という伝説です。

 そして、現代のインドに舞台が移ります。インドに暮らすアメリカ人のステイツ(ジェフ・ドーセット)は小脳腫瘍が見つかり、余命6ヶ月と宣告されます。そこで死にたくないステイツさんはナギンを捕まえて不老不死になろうと考えます。そして、手下どもを引き連れてジャングルに入り、そこで仲良くエッチの最中のコブラのカップルを見つけ、雄蛇を捕まえて、自宅地下のガラスケースに閉じこめます。そして、蛇が熱を探知することを逆手にとり、「蛇に見えないスーツ」を作り、ナギンがやってくるのを待ちます。

 その頃、ジャングルの中では旦那様を連れ去られた雌コブラが怒り心頭(?)でウネウネとのたうち回っているうちに、蛇女ナギン(マリカ・シェラワット)に変身します。ムチャ美人っす。体型はスーパーモデル顔負けです。変身するところできれいなお尻を見せてくださいます。そして鰐の卵を丸飲みしたりして、こちらも攻撃モードに入っております。

 そして山を下りたナギンは町に入り、そこで愛する雄コブラを探すかと思うと、襲ってきたレイプ野郎を丸飲みしたり、女性に暴力を振るうDV野郎を襲ったりと、「悪い男はいねがぁ」とナマハゲみたいに行動します。また、ナギンを信仰する人たちもいたりして、そこに出現しては女神様みたいになったりします。なかなか恋人探しに専念しないナギンちゃんです。

 一方、連続殺人事件が起きていることを知った刑事のグプタ(イルファーン・カーン)は捜査に乗り出しますが、自宅では奥さんのマヤ(ディヴヤ・デュッタ)との間に子供ができなかったり、同居している奥さんのお母さんの言動がおかしかったりして、前途多難の様相です。

 一方、悪い奴らを腹一杯食べちゃったナギンちゃんは消化のために横になっていますが、ここで住民に「裸の女性が寝ているわ」と通報され、グプタの警察署に保護され、その後、グプタの奥様のマヤが「かわいそう」と言うことで自宅に連れ帰り、可愛くサリーを着せてあげたりします。一方、マヤのお母さん(言動がかなり変)はいつも拝んでいるナギンの像に「自分の命を捧げるので、娘夫婦に赤ちゃんを授けて!」とお願いし、翌朝、グプタ刑事に「町外れの工場跡の地下室にナギン様の旦那様がとらえられている」と言い残して死んじゃいます。その言葉を聞いたグプタは部下を伴ってその工場に向かいます。

 その頃、ナギンは囚われている雄コブラの元にたどり着き、ステイツの手下どもを皆殺しにして、ステイツの待つ地下室に向かいますが、ここでステイツの仕掛けた罠に引っかかり、彼女も捕まってしまいます。絶体絶命です。その時、部下を連れたグプタ刑事も地下室に到着! そしてステイツとの間に激しい(?)銃撃戦が繰り広げられ・・・という映画でございます。


 ストーリー展開のテンポが何か合わないというか、途中でダレちゃうのは、ナギンが囚われの雄コブラを探す手段がないというか、ステイツが雄コブラを餌にナギンをおびき寄せる手段が何かがよくわからない点にあります。映画を見ていると、ステイツは雄コブラに電気ショックを与え、それでナギンを呼び寄せる音を出させているようなんですが、それにしてはナギンがその声を聞いている様子はないんですよ。ナギンが雄コブラを発見するのも半ば偶然の産物みたいなもんですが、そういうところは大雑把というか、作り手自身が気にしてなかったようです。

 それと、グプタの奥様のお母様の言動がかなりおかしいというか、尋常ではありません。最初は冗談で言っているのかなと思ったくらい、変です。この彼女の言動に対し、こちらはどういうスタンスで接したらいいのか、非常に戸惑いました。要するに、笑っていいのか、笑っちゃダメなのかの判断が付かないんですね。このおばあちゃんの言動に対し、インドの観客はどういう態度をとるのか、とても興味があります。


 ナギンがコブラから美女に変身するシーンはCGですが、これが結構頑張って作っています。足のない蛇から足のある美女に変身する様子は結構見物です。しかも、蛇の体表の冷たい感じとか、不気味な感じもかなりよく表現されていて、これなら及第点ですね。
 しかも、ナギン役のマリカ・シェラワットさんがとても美人でナイスバディでしかもキュートなんですよ。特に、市場のシーンで蛇使いの笛を聞いて彼女が踊り出し、やがて群舞になるところなんて、ちょっと短いけどよかったです。
 そしてもう一人の美人さんが、グプタ刑事の奥様。こちらもかなり点数高めの美女で、普通ならヒロイン役でも十分でしょう。

 あと、ナギンが市場で事件の鍵を握る蛇使いの男を見つけだし、逃げる蛇使いをナギンとグプタたちが追いかけるシーンも、いきなり本格アクション映画のノリになっちゃって、ちょっとびっくり。このあたりも「突然ミュージカルモード」のインド映画のノリですね。

 ちなみにこの映画を配給会社は「コメディー映画」に分類していますが、どのあたりがコメディなのか、私にはさっぱりわからなかったです。

(2012/10/31)

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