《フローズン "Frozen"★★★(2010年,アメリカ)


 この映画を見ると、どこかに遊びに行く時は必ず家族か友人に行き先を伝えておいた方がいい、携帯電話は常に身につけていた方がいい、終業寸前のスキー・リフトには無理矢理乗らない方がいい、という教訓が得られます。それを守らないと、生きたままオオカミさんに食べられちゃいますよ、という映画でございます。


 舞台はアメリカのどっかのスキー場。週末の金曜日〜日曜日だけ営業しています。そして日曜日、3人の若者がスキー場にやってきます。ダン(ケヴィン・ゼガーズ)とその恋人パーカー(エマ・ベル)、そしてダンの親友ジョー(ショーン・アシュモア)です。どうやらダンとジョーは毎年スキー・スノーボードを楽しみにしている上級者で、パーカーはスノーボードを始めたばかりの初心者です。

 3人はゲレンデに出ますが、初心者のパーカーは尻餅ばかりで、ダンはパーカーに付きっきりで指導しているため、上級者のジョーは少々ご不満の様子です。そして、そろそろスキー場の営業もお終いだよというところでジョーはダンに、頂上までリフトで行って思いっきり滑ってこようぜ、と提案します。パーカーは、男二人で行ってきて、といいますが、ダンは3人でなければいけないと強引にパーカーを連れてリフトに乗り込みます。

 そして3人を乗せたリフトが山の中腹にさしかかったあたりで、リフトの操作係が社長に呼ばれ、同僚に「今3人が乗っていて、彼らが滑り降りてきたらスイッチを切るように」と申し送りします。そして、しばらくして3人のスキーヤーが滑り降りてきて、それを見た同僚は「3人が降りてきたから任務終了!」とリフトのスイッチを切ります。

 そしてダンたち3人を乗せたリフトは高さ15メートルのところで突然、停止してしまいます。呼べど叫べど、その声は空しく虚空に消えるだけです。あまつさえ、ゲレンデを照らす照明灯も消えてしまいます。携帯電話はロッジのロッカーの中です。もちろん、食糧も水もありません。おまけにここに遊びに来ていることは家族にも友達にも知らせていません。そこで彼らは自分たちが置かれた状況がのっぴきならないものであることに気がつきます。今日は日曜日、ということは来週金曜日までこのスキー場は無人なのです。そして彼らをマイナス20℃の極寒と吹雪が襲います。

 ここから脱出するためには15メートル下のゲレンデに飛び降りるか、リフトのワイヤーを伝わって支柱の鉄塔までたどり着くしかありません。

 そこでダンは意を決して雪上に飛び降りますが、着地に失敗して両側大腿開放骨折(画像から判断すると)! 創部から骨が飛び出ています。何とか止血をしますが、そこを野生のオオカミの群に襲われ!! リフトの上の2人にはなすすべはありません。恋人の断末魔を聞かせまいと、ジョーは必死でパーカーの耳を押さえます。

 降りしきる雪と寒さを何とかしのぎ、二人はリフトの上で朝を迎えます。飢えと乾きと疲労が襲ってきます。そこでジョーはリフトを吊っているワイヤーにぶら下がり、何とか支柱にたどり着き、雪上に降りられます。そして、スノーボードに腹這いになって乗り、ゲレンデを下りますが、またしてもオオカミの群が襲ってきて・・・という映画です。


 これは要するに、ソリッド・シチュエーション、つまり、特殊な状況に閉じこめられた人間の姿を描く一群の映画の一つで、ホラー映画ファンなら誰でも知っている《ソウ》とか、あるいは《オープン・ウォーター》と基本的な作り方は同じです。このタイプの映画は大がかりなセットが不要(何しろ最初から最後まで同じ部屋の中とか海の真ん中とか、舞台が同じだから)なため、低予算でも作れます。あとはアイディア一つでいくらでも面白いものが作れます。だから、《ソウ》がシリーズ化され、《ソウ》そっくりの映画が雨後のタケノコのごとく作られ、《○○ウォーター》という邦題の映画がDVD化されているわけです。

 この手の映画を作る際に考えなければいけないのは、

  1. そういう特殊な状況に陥った理由の説明
  2. その特殊状況(たいていは脱出不可能)から脱出させる方法。ここで超能力や超常現象には頼ってはいけない。
  3. 舞台が固定されている単調な状況で、観客を90分間、飽きさせない工夫
の3点です。そういう目で見ていくと、作り手側の苦労が見えてきます。


 例えば、「スキーのリフトに乗った客が取り残されて誰も気がつかない」という状況を不自然でなく作り出すためにはどうしたらいいかを考えてみます。

 まず、「スキー場の営業が終わる寸前で他の客が乗っていないのに、主人公たちだけがなぜリフトに乗っていたのか」を説明しないといけません。そのためには、「朝から滑っているのに、ジョーは滑り足りなくて、ジョーは最後にもう一滑りしないと気が済まない」という説明が必要になり、そのために「パーカーはスキー初心者で、恋人のダンが付きっきりだったから」という説明が必要になったのでしょう。さらに、リフトの係員が途中で入れ替わり、ダンたちが帰ってこないことに気がつかない、という説明も加わります。さらに、3人そろってリフトに乗り込んだのはなぜか、という説明も必要になり、そのためには「強引にパーカーを誘うダン」という設定も必要になったのでしょう。

 こういう舞台裏が見えてくると、かなり強引な部分があることが改めてわかります。こういう「強引な条件設定」が気になるかどうかで、映画に対する評価が分かれるでしょうね。


 さらに、宙吊りのリフトからの脱出ルートとしては「下に下りる」、「リフトのワイヤーづたいに移動する」の二つしかありませんから、前者の方法を試す人間が一人、後者の方法を試す人間が一人必要です。つまり登場人物は最低二人となります。前者は誰でも考えつきますが、それでは面白くないので「地上15メートル」、つまりビル5階の高さに設定したのでしょう。さらに、フワフワの新雪が降り積もっていては飛び降りた人間が助かってしまうので、ゲレンデは堅かった、という設定にしたはずです。

< さらに時間稼ぎをするために、飛び降りたら重傷を負って動けなくなった、という設定も必要ですがそれだけでは時間が潰せません。そこで登場させたのが「オオカミの群れ」と思われます。いくらアメリカとは言え、スキー客が多数訪れるスキー場にオオカミの群れが出没するとは考えにくいのですが、やはりここはオオカミでなければいけないのでしょう。 /P>

 さらに、リフトのワイヤーを伝わって下りる場合、普通ならワイヤーにぶら下がるのでなく足をかけるのが常識のはずですが、ジョーがそうしなかった理由が必要となり、「ジョーは学生時代から体育が得意でなかった」というセリフがあったのだと思われます。

 そしてさらに、ダンが亡くなったあとのシーンでダンについての回想シーンで時間稼ぎをするため、ダンの子供時代からの親友というジョーを登場させ、ダンとつきあって1年しかたっていないパーカー(=現在のダンは知っているが、子供の頃のダンは知らない)という人物が必要になったのかな、という気がします。

 さらに、最後にリフトに残されたパーカーが安全にゲレンデに降りられないと話が続かないため、リフトを支えているシャフトがはずれそうになる、という「偶然」も必要になったんですね。リフトがあそこで都合よく壊れてくれたおかげで、パーカーは無事なんですよ。このあたりの展開もご都合主義ですね。


 そういうわけで,これからスキーやスノーボードに行こうと考えているなら、絶対に見ない方がいい映画ですね。「飛行機機内での飛行機墜落映画」みたいなものですから。

(2012/11/02)

Top Page