《フローズン・インパクト "FROZEN IMPACT"★★(2002年,アメリカ)


 アメリカのディザスター映画の悪いところを集めるとこういう映画になっちゃうんだよね,という見本のような作品。ディザスター映画,つまり火山噴火とか大地震とか竜巻などの自然災害をテーマにした映画ですが,アメリカの場合,それに必ず「家族の再生」を絡ませるのがお作法になっています。「家族が互いに反目し合ってバラバラになりかけていたけど,巨大竜巻が襲ってきたため家族は一致団結してそれに戦い,それを通じて家族の絆が元に戻るのでありました」ってな映画です。私の印象では,アメリカのディザスター映画で「家族の絆の再生」が絡んでいない作品はほとんどない,と断言しちゃいます。だから,「家族の再生」部分の比重が大きすぎると「単なる家族の映画」になってしまって自然災害は単なる添え物になってしまいます。実は今回紹介する作品はその好例です。だから,やたらとウザったい会話が連続します。そのあたりが大好きな人にとっては面白い映画でしょうが,「ケッ,アメリカ人の会話ってウザってぇ!」と思う人間にとっては,拷問のようにツマラナい映画になります。

 さらに,「家族の再生」がメインテーマの場合,最後までその家族だけは死なないことが最初の時点でわかってしまいますから(死んだら和解できないもんね),主人公家族を何が襲ってきても大丈夫なんですよ。竜巻も火山の溶岩もその一家を避けるように進むんですよ。だから見ている方はハラハラもドキドキもしません。お役所の手続きのように,次から次へと危機が襲ってきては,判子を押すように危機は主人公一家の頭上を通り過ぎます。

 この手の映画は5本くらい見ると,新しい映画でも筋書きすべて読めちゃいます。こんな半で押したような映画を作って何が楽しいんだろうと思いますが,どうやらアメリカンな映画人はそう思っていないようです。

 ちなみにこの映画では野球のボール大の雹が街を直撃するという設定ですが,雹が主人公のディザスター映画は初めてじゃないかと思います。


 まず,セスナ機の機内の様子です。どうやら肝臓移植用の肝臓を運んでいるようです。すると,無線で嵐が起きそうだと連絡が入ります。もちろんパイロットは「嵐なんて大丈夫さ。一刻も早く肝臓を運ぼう」と嵐につっこむことを決断します。ちなみにこの時点では,肝臓を運ぶ先の病院には連絡が入っていません。この時点で早くも「寝言は寝て言え!」と言いたくなります。

 一方,街のレンジャーのダン(テッド・マッキンレー)と,彼の妻で女医のクリスティ(リンダ・パール)は口げんかの最中です。肝臓移植の順番を待っている息子ジェイソンが中古車オークション会場で手品を披露したいといいだしたからです。ダンは「行ってもいいんじゃない。疲れたら帰ってきたらいいし」といいますが,クリスティは「何かあったらどうするのよ!」の一点張り。おまけに娘がロッククライミングに行きたいといいだします。母親は子供たちに「一歩も外に出ないで!」と命令して病院に出勤しますが,父親のダンは長女に「ジェイソンをオークション会場に連れて行って,しっかり面倒を見なさい」と送り出します。この時点で,このブーたれお姉ちゃんが,弟を会場に残してロッククライミングに行くんだよね,と誰でも先が読めてしまいますが,まだ気がつかないフリをしましょう。

 姉は弟をオークション会場に連れて行きますが,案の定,ロッククライミングに出かけます。ディザスター映画の登場人物にふさわしい行動ですね。


 一方,肝臓輸送中のセスナ機は雷雲につっこみますが,巨大な雹の直撃を受けて墜落し,森の中に真っ逆様! ちなみにこの時点でも,病院には「これから肝臓を持って行くね」という連絡は入っていません。

 ここで父親のダンにセスナ機が墜落したので生存者の救助に当たるようにと連絡が入ります。この頃,病院の母親に「これから息子さんの肝臓移植用に肝臓を運ぶから受け入れ体制を整えてね」と連絡が入ります。母親は自宅に電話しますが誰も出ません。夫に連絡してもなかなか繋がりません。


 一方,オークション会場では中古車のオークションが始まります。ジェイソンも子供たちの前で手品を披露して子供たちが飽きないようにしています。そして,オークションが最高潮に達したところで会場を巨大雹が直撃します。車はボコボコ,フロントガラスは粉々ですが,映像をみる限りでは,地表を直撃した雹は発泡スチロールの玉のようにポンポン弾んでいます。そういえば,野球ボール大の雹が雨霰と降っているのに,雹の直撃を受けた人たちはピンピンしていて,せいぜい「アウチ!」と言うくらいです。よほど柔らかくて弾力があって軽い雹だった模様です。ジェイソンと中古車ショップのオーナーはショップに避難しますが,屋根が崩れてきて下敷きになります。ちなみにこのショップは最初のシーンの大きさと,最後の方ではサイズが全然違って見えますが,多分気のせいです。

 そして病院には怪我人が殺到します。クリスティはその処置に対応しますが全然人手が足りません。病院の新しい理事長が儲け第一主義で,現場を無視した命令(現場で判断せずにすべて理事長を通すこと。きちんと書類にして提出すること・・・)を出して,医者と看護師の首を切りまくっているからです。理事長の顔が鬼に見えます。この映画で唯一素晴らしいシーンでございます。


 その頃,ロッククライミング中の娘たちを雹が直撃します。野球ボールが直撃しているというのに誰も怪我をしませんが,娘の友人が岸壁に宙吊りになってしまいます。

 一方,セスナ機墜落現場に到着したダンは乗組員一人が助かっているのを発見します。彼はダンに「この肝臓を一刻も早く病院に運んで欲しい。緑色のランプがすべて消えたらも移植に使えない」と告げ,肝臓の入ったボックスをダンに託します。ダンは彼のために雹を避けられるようにセスナの翼を使って雹除けの屋根を作ってあげます。普通なら,一刻も早く移植用の肝臓を運ぶところですが,アメリカンな映画の主人公はみんなを助けるのです。

 ダンは車で急ぎますが,途中で娘たちが岸壁宙吊りになっているところを見て,そこに駆けつけて娘を救出。娘を車に乗せて先を急ぎます。移植用肝臓を入れたケースのランプが,ウルトラマンのカラータイマーのように点滅していますが,ダンは全然気にしません。
 ちなみに,ウルトラマン・シリーズでの「ダン」といえば「モロボシ・ダン」ですが,こちらの方はウルトラセブンの世を忍ぶ仮の姿でございました。


 その頃,崩壊した中古車ショップのジェイソンは気が付きますが,オーナーは柱に足を挟まれて動けません。ここでオーナーとジェイソンの間での会話が延々と続きます。余りにのどかな会話に緊迫感ゼロとなり,ディザスター映画であることを忘れそうです。

 一方,ダンは妻に「これから肝臓を運ぶから」と連絡を入れますが,ここで車は雹の雨霰に巻き込まれ,車はスリップして横転。この頃,病院のクリスティに「飛行場が嵐のために封鎖され,肝臓移植チームが来れなくなった」と連絡が入ります。おまけに理事長はクリスティに「私に連絡もなしに肝臓移植する事は許さない。幸い,移植チームも来れないようだし」と鬼のようなことを言います。

 横転した車の中でようやくダンと娘が意識を取り戻します。ガソリンが漏れ,ちぎれたケーブルから火花が出ています。ダンのシートベルトがはずれません。でも大丈夫,危機一髪のところで娘が持っていたナイフで切ってくれ,間一髪のところで脱出成功。運良く,自宅の近くだったため,自宅に急ぎます。運がいいぞ,ダン! でも,臓器ケースの緑のランプは残り2個です。大丈夫か,ダン!


 ダンと娘は自宅に到着し,ダンは車庫に入っているバイクの修理を始めます。この緊急時にバイクの修理っすか? 普段から整備しとけよ。
 そこでまた巨大雹がダン宅を襲います。ちなみにさっきから,巨大雹は数分間降ってはすぐに降り止む,の繰り返しであることにそろそろ気がつき始める頃だと思います。これは「主人公ご一行に怪我させちゃいけない」という雹さんたちの自主規制なんですよ。アメリカン・ディザスター映画では,雹も主人公様に気を使うんです。

 で,雹の重みで車庫が崩れますが,ここでも間一髪,バイクで逃げ出せます。ところが途中でまた雹が降ってきて,バイクはまたもスリップして横転。危機一髪の連続過ぎて,ハラハラもドキドキもしません。過ぎたるは猶及ばざるが如しです。


 一方,病院のクリスティは肝移植チームがやってこないと告げられますが,たまたま偶然,中古車オークションを取材にきて雹で怪我をした地元テレビ局のスタッフから,「手術の様子を撮影してボストンの肝臓移植の専門家のテレビに映しだし,遠隔指導をしてもらって手術をすればいい」,という解決策を提案されます。なんとクリスティは小児外科医で肝臓移植もできる模様です。能ある鷹は爪を隠していました。すごいぞ,クリスティ!

 一方,バイク横転事故を起こした二人は怪我一つせずに立ち上がります。なんとそこは,あの中古車ショップの近くです。運がいいぞ,ダン! そしてダンは息子のジェイソンとオーナーを助け出します。この時,ダンは足を骨折してしまいます。運が悪いぞ,ダン!

 そこで彼らは,中古車ショップのバスに乗り込みます。運転できるのは娘しかいません。娘の運転でバスは病院を目指しますが,ここでまた巨大雹が襲います。バスはまたもやスリップしますが,父親の機転でバックで進み,何とか病院に到着。ジェイソンは手術室に運ばれます。


 するとあの鬼理事長が「この手術に協力したスタッフは全員クビよ!」と喚き散らします。すると,テレビカメラがその鬼の形相を捉えて放送しちゃいます。鬼の理事長,スゴスゴ退散。鬼理事長,もうちょっと頑張って欲しかったな。

 そして手術が始まります。もちろん執刀医は母親のクリスティです。よく見ると,ジェイソンは酸素マスクだけで挿管していません。全身麻酔もかけずに肝移植するのがアメリカの常識のようです。すごいぞ,アメリカ医学界!

 そして,手術は成功し,家族はまた固い絆を取り戻すのでありました・・・ってなお話です。

(2012/11/06)

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