新しい創傷治療:プレデタリアン

《プレデタリアン "Creature Unknown"(2003年,アメリカ)


 映画を見終わったら速攻で感想を書かないといけない作品があります。内容が余りにひどすぎるため,見ている最中にもその前のシーンを忘れちゃうような印象の薄〜い映画です。この映画がそれです。見終わってからまだ10分も経っていないのに,どういう映画だったのか思い出すのに一苦労しています。

 それにしてもこの邦題,センス抜群っすね・・・もちろん,悪い意味で・・・。このタイトルを見てぴんと来る人はよほどのB級映画ファンです。もともとは《エイリアンVSプレデター2(AVP2)》というショーモナイ映画がありまして,こちらに登場するモンスターが「プレデリアン」です。今回の《Creature Unknown》ではそれに一文字加えて「プレデタリアン」としたわけでしょう。「プレデター+エイリアン」⇒「プレデターエイリアン」⇒「プレデタエイリアン」⇒「プレデタリアン」という進化したわけですね。

 とは言っても,進化したのは名前だけで,クリーチャーとしては退化しております。姿形は大昔の半魚人っぽいというか,仮面ライダーショーの着ぐるみそのまんまというか,そういうレベルです。おまけに,姿を消す能力があるとか,戦闘力がすごいとか,超能力が使えるとか,そういう方面の能力は皆無です。木に登っては上から襲ってくるだけです。

 さすがにこのクリーチャーだけで80分を持たせるのは難しいと判断した脚本家は,「クリーチャー+痴話話」という新分野(?)を開拓したのです。とにかくこの映画では,クリーチャーがらみのシーンを除くと,後は延々と痴話話・恋愛談義が続くんですよ。「本当はあなたが好きだったの」とか,「君に振られてからはずっと一人さ」とか,「あなたが本当に好きだったのは私でなくあの子だったじゃない」とか,そういう会話が延々と続くのです。この手のシーンが死ぬほど好きな人にとってはたまらないものがあるんでしょうが,この手の会話が死ぬほど嫌いな人間にとっては,もうこれは拷問レベルです。

 ちなみに,最後のメイキング映像を見ると,どうやらこの映画の作り手は本格モンスター映画を作ったと満足しているようです。最後の双子ネタの謎解きとか,明らかに本格路線を狙っていたようです。しかし,その作り手側の意欲が空回りしちゃったようです。


 映画は二人のお姉ちゃんが山奥でキャンプするシーンから始まります。そこで別荘みたいなのを見つけるんですが,そこで何者かに襲われて逃げ出しますが,二人とも殺されちゃいます。

 そして舞台は変わり,主人公のスティーブ(クリス・ホフマン)が昔の仲間たちに手紙をタイプするシーンです。どうやら,高校の同級生らしく,7,8人でいつも仲良く遊んでいたようですが,4年前のキャンプでスティーブの双子の弟ウェス(マット・ホフマン・・・どうやら,クリス・ホフマンと本当の双子のようです)が行方不明になるという事件が起こり,それから仲良しグループは自然消滅してしまったようです。

 しかし,いつまでも弟の不可思議な死に囚われていてもダメだ,と考えたスティーブは,仲間たちを集めて弟の追悼パーティーを開こうとしたわけです。そして,スティーブの元カノだったアマンダ(マギー・グレース),女好きのショーン(ジョン・ケイサー),ショーンの婚約者のアリー(クリスティン・ヘロルド),黒人青年のランス(コリー・ハードリクト),ランスの元カノのコーラル(ベティ・オキノ),ウェスの元カノのレイチェル(エラ・ボウマン)の7人が集い,4年前にパーティーを開いた山奥の別荘(ちなみに,映画冒頭の二人が見つけるのはこれですね)に入ります。

 一方,ちょい年上のお姉さん(チェイス・マスターソン)が半魚人みたいなのに「投網発射銃」みたいなので捕獲を試みていますが,逃げられます。この女性の正体は後に明かされますが,キャットという医者です。この時点でプレデタリアンの全身像がわかりますが,大半の人がこれを見て「オイオイ,これがプレデタリアン? これかよ!」と予想外の出来の悪さに驚くと思いますが,とりあえず先を急ぎます。

 一方,7人組は4年前にウェスが姿を消した場所に行き,焚き火なんぞをして故人を偲ぶんですが,「あのとき,あんなに酒を飲ませなければよかったんだ」,「酒をどんどん飲ませたのは誰なんだよ」,「もともとウェスは君のことが好きだったのに,兄貴のスティーブが奪ったんだ」,「大体,君が一番好きだったのはスティーブだったんだろ」とか,そういう会話が延々と続きます。すると,ウェスの元カノ(終始,タバコばかり吸っているチェーンスモーカー)は怒り出して一人で森の方に歩いていきます。そこで何をするかと思うとずっとタバコを吹かしております。よほど,独りでタバコが吸いたかった模様ですが,ここでプレデタリアンに襲われ,あっけなく絶命。

 彼女がいなくなってしばらく経ってから,ようやく6人はウェスの元カノを捜しに森に入りますが,「どうせ奴はそこらでふてくされてんだよ」程度にしか心配されず,6人は別荘に戻ります。この人たち,本当に親友同士なんでしょうか?

 翌朝,起きると停めていた車が荒らされています。動物の仕業だろうということで,ランスが車に乗って町に食料を買い出しにいきます。一方,スティーブとアマンダはレイチェルを捜しに森に入りますが,ここで女医のキャットが地面のマンホールの穴みたいなのから出てくるところに見かけます。そしてスティーブはアマンダに「町の医者なんだけど,息子の病気を治そうとしていろいろな研究をしていたが,何かの原因で医師免許を剥奪されたようだ」と教えます。そういえばさっきから何度も,実験室の様子とか人体標本とかのシーンが挿入されていましたが,それが彼女の「研究」だったことがわかります。この時点で,この女医さんがプレデタリアンの生みの親であることが誰に目にも明らかですが,とりあえず気がつかないフリをするのが大人の知恵です。

 そしてスティーブとアマンダは別荘に戻りますが,悲鳴が聞こえます。昨夜,行方不明になっていたレイチェルの死体が木に縛り付けられているのです。すると,そこになぜかキャットがバイクで乗り付け,「死体を降ろして,私が持ってきた死体袋に入れなさい。そしてここから立ち去りなさい!」と命令して,バイクに乗って去ります。死体袋をいつも携帯している女医さんなんているのかよ,と怪しさ満点ですが,誰も怪しく思いません。

 すると,アマンダが「彼女は何かを知っているはず」とスティーブとともにキャッツを追いかけます。バイクを歩いて追いかけられるのかなぁ,と誰しも不思議に思いますが,とりあえず先を急ぎます。そして二人はキャッツの研究所に到着。そして中に入って怪物のような奇怪な生物の標本を見つけますが,そこに到着したキャッツに銃で脅されて退散します。

 一方,食料買い出しに行ったランスは途中でプレデタリアンに襲われます。一方,別荘ではアリーのシャワーシーン,その後,アリーとショーンのエッチシーンなどのサービスシーンがあり,エッチの最中にプレデタリアンに襲われ,二人ともご昇天。そこにスティーブ,アマンダ,そしてキャッツが登場し,キャッツはプレデタリアンに銃を向けますが,なぜか殺しません。

 その番はプレデタリアンは襲ってこなかったため,翌朝,コーラルをバイクの後ろに乗せたキャッツと,徒歩のスティーブとアマンダという珍妙なスタイルで別荘を出発します。そして途中で怪我を負いながらも生きていたランスに再会しますが,ここでスティーブとキャッツの言い争いになり,キャッツは「実はプレデタリアンはあなたの弟のウェスなのよ」と告白します。どうやら,瀕死の重傷を負ったウェスを見つけたキャッツが,彼を助けるために爬虫類のDNAを導入し,それで助かったそうです。でもその後,半魚人型に変身しちゃったんですね。そこにプレデタリアンが襲ってきてキャッツは殺され,アマンダはお姫様抱っこで連れ去られます。

 アマンダを助けるためにスティーブたちはキャッツの研究所に向かい,そこでアマンダを発見しますが,その時アマンダは,実はウェスがスティーブで,スティーブがウェスであることを・・・という映画でございます。


 というわけで,双子ネタが最後に炸裂しますが,それが全く効果的でありません。やはり,双子ネタはここぞと言うところで使わないと効き目がないです。この映画のようにグダグダ・ノロノロの展開だと,「兄が弟で弟が兄? それがどうした」という反応になっちゃいますね。せっかく,双子の俳優を使ったのに残念です。

 でもよく考えると,何でスティーブ(というかウェス?)が昔の仲間を集めようとしたのか意味不明です。確かに最初の時点ではウェス(というかスティーブ)がプレデタリアンに変身していることは知らないんだけど,何もわざわざ旧交を温める必要もないし,元カノのアマンダに会ったら正体がバレるだろうし(何しろ双子の兄弟といっても性格は全然違っていた,という設定だから),バレたら真相が明らかになるしとメリットゼロです。

 それにしても,携帯電話も通じない山奥の研究所で人間と爬虫類の遺伝子組み替えに成功,というのもお笑いだし,あれだけの数の「怪物化した人間のホルマリン標本」を作るために,この女医さんはどんだけ人を殺したんだよ,ですね。

 そういえば,最後のシーンで殺されたはずのキャッツが生き返るシーンで終わりますが,これって「続編に続く」パターンですが,残念ながら,どう考えても《プレデタリアン2》が作られる可能性はないと思います。

(2012/11/16)

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