《ファイナルバトル・オブ・ロストアイランド "Dark Island"★★★(2010年,カナダ)


 カナダ製のサスペンス・ホラー映画ってどれもこれも印象が地味で,記憶に残っているものがほとんどありません。おまけに,映像のバックの空がいつもどんよりした曇り空なんで,見ている方が次第に気分が滅入ってきます。冬の日本海側の東北地方の空を思い起こさせて,一層気分が暗くなります。この映画もそういうカナダ映画の一つです。

 ストーリー展開そのものは悪くないし,それなりに考えて作っていることはわかります。映画監督としては,低予算の割には本格映画っぽく作れたな,と満足が行く出来でしょう。ただ,その 「本格志向・本格っぽい路線」 がアダになりました。サスペンス・ホラー映画に最も欠かせないスピード感がなくなり,グダグダしている部分ばかり目立ちます。これは多分,正味85分程度の映画なのに,登場人物の過去にあった出来事を丁寧に描きすぎたからです。そういう 「過去を説明する回想シーン」 がやたらと多く,しかもそれぞれが結構の長さのため,そのあおりを食って,メインテーマであるはずのモンスターの登場シーンは少なくなるわ,モンスターとの対決シーンは淡白だわと,一体何の映画なんだよ,という感じになってしまいました。そういう意味では,むしろ予告編のほうがコンパクトにまとまっている分,面白いくらいです。

 ちなみに,B級サスペンス・ホラー映画といえばお色気シーンが必須ですが,何しろ生真面目なカナダ人ですから,そっち方面への配慮は皆無です。それと,登場する俳優さんは,顔を見ても 「あっ,あの映画にでていた人!」 と思い浮かぶ人は一人もいません。そこら辺もちょっと寂しいです。


 ストーリーはこんな感じ。

 舞台はカナダ沖に浮かぶ無人島・マレ島。ここで武器などを作っている軍事企業のアルトラコープ社が,生物兵器 「テスト48」 の実験を行なっていたが,現場を指揮しているミチェル(エリック・リム)からの連絡が途絶えてしまい,その後,一切連絡が取れなくなる。そこでアルトラコープ社は捜索隊を結成し,マレ島に送り込んだ。

 捜索隊の指揮をとるのは科学者で元軍人のレイ・フア(ゼロ・カザマ)であり,以下,女性軍医のソフィ・ミラー(ヴィクトリア・フローロ),元軍人の社員ケイン・ウィル(ジャイ・コートラエ),IT専門の空軍士官のアレン(ロバート・オブライエン),そして元軍人のレイチェル(メアリー・クリスティーナ・ブラウン)の面々だった。

 マレ島に到着した彼らは早速ミッチェルらの捜索を始めるが,そこで串刺しになったカラスの死骸を見つけ,不気味なものを感じる。その時,ミッチェルが姿を現すが,彼は漆黒の煙に変身し,襲ってくるのでありました・・・という映画でございます。


 どうやらこの映画の主役の「漆黒の煙」はあの《LOST》のパクリなんだとか。とは言っても,私はこの《LOST》は見ていないので,どのくらい似ているのかは不明です。もちろん,原題《Dark Island》と似ても似つかない邦題といい,LOST の文字をやけに強調したDVDジャケットといい,パクリ路線の王道と言えますね。

 まず,良い点を見つけると,アクションシーンがかなり本格的なこと。元軍人ばかりの捜索隊を募った意味はここにあったんだな。真っ黒煙に乗っ取られたミッチェルやレイチェルが,他の捜索隊と格闘するシーンはマジにマーシャルアーツ系で,見事な身のこなしが楽しめます。

 あと,ストーリーがこの手の映画としてはかなり本格的で,結構それなりに練られています。最後の最後に全体像が明らかになりますが,なるほどね,そういうわけだったのか,という感じです。このあたりは,そこら辺に転がっているクズ・ホラー映画とは一線を画していますね。


 とは言っても,この「最後の最後に明かされる真相」はちょっと作り過ぎでしょう。この映画では2回どんでん返しがあり,「えっ,この人が実は黒幕だったの?」という展開が2度ありますが,これが全く生きていません。こういう「本当の黒幕はね・・・」という技は,もっと長尺の映画で,登場人物が多く,人間関係が交錯している映画でないと効果がありません。この映画みたいに主要登場人物がせいぜい5人とか6人じゃ,2人が裏切り者だったらまともな人物が3人しかいなくなってしまうからです。

 それにしても,最後に生き残る二人のうち一人が黒幕で,残りの一人が裏切られちゃうという展開は,ちょっとダークですね。アメリカの脳天気映画みたいに二人がハッピー&発情期になる必要はないけど,この映画であの結末はないでしょう。


 そういえば,この映画の主人公というかヒーロー役って誰だったんでしょうか。ヒロインがソフィだということは最初からわかるけど,ヒーロー役はアジア系俳優さんが演じるレイだとばかり思ってましたが,最後に助かるのは別の男性でした。「そうか,こいつが主人公だったのか」と映画のラストシーンが近づいてようやくわかりました。地味目の俳優さんばかりだからでしょうね。

 肝心の 「黒い煙のモンスター」 ですが,もちろんCGです。これが襲ってくるシーンは結構な迫力とスピード感があり,それなりによろしいです。それに対し,登場人物たちの対抗策は 「とりあえず走って逃げる」 です。どう考えても,煙から逃げられっこないんですが,なぜか犠牲者はあまり出ません。登場人物が少ないため,殺すに殺せなかったんですね。だから,モンスターの外見のインパクトとは裏腹に,怖さは全くありません。ここらはやはりケチケチせず,20人とか50人規模の軍隊を投入して,煙モンスターが人間を襲って死体の山を築くシーンを入れるべきだったと思います。もちろん,貧乏なんでエキストラを雇えなかった,というのが真相でしょうけどね・・・。同様の理由から,登場人物が少ないため,煙モンスターが襲ってくるシーンも少なくせざるを得なかった模様です。

 貧乏といえば,煙モンスターが乗り移った人間の変貌もチャチでしたね。目に黒いコンタクトレンズを入れ,墨を鼻と口から垂らしているだけでした。やはりここは,派手に変身するシーンを作ってみせて欲しかったです。

 あと,煙モンスターが海岸近くに来ない理由とか,あの煙幕銃みたいなので倒せる原理とか,そこらの説明も欲しかったです。登場人物の過去なんてセリフひとつで説明できるんですから,余計な回想シーンは全て省いて,こういう 「ストーリーの理解に必要な説明」 部分を増やすべきですね。


 というわけで,予告編のほうがコンパクトにまとまっている分,面白かったかも・・・という映画でございました。

(2012/12/18)

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