ちょっと珍しいデンマーク製映画。中身はエイリアンが乗り移った代用教員に対し,その正体を見破った少年少女たちが戦いを挑むというもので,派手さはないもののなかなか丁寧に作られていて,しかも,未知のものに立ち向かうことで成長していく子供の成長物語がメインテーマとなっていて,好感が持てる作品です。ちなみに原題は《代用教員》という意味のようです。
デンマークの農村に宇宙から小さな球体が落下し,そこから飛び出した生命体は農場主の妻に乗り移り,彼女はウーラ(パプリカ・スティーン)という名の代用教員としてある小学校に赴任し,6年生のクラスを受け持つ。
そのクラスにはカール(ヨナス・ヴァンドシュナイダー)という少年がいた。彼は自動車事故で母親を亡くしたばかりだったが,母親の死を受け入れることができず,自分の殻に引きこもっていた。そこにウーラがやってくるが,奇妙な言動と強圧的で暴力的な態度にカールや転校生のリッケは反発し,両親にウーラのことを相談する。
親たちは臨時集会を開いて話を聞こうとするが,文部大臣を伴って登場したウーラの言葉巧みな説明に納得してしまい,子どもたちが嘘を言っていると信じこんでしまう。だが,カールはウーラが球体を操作して文部大臣を創りだす様子を見ていた。そして彼は,ウーラのバッグから自分たちが写っている奇妙な写真を発見する。
カールは父親のイェスパー(ウルリク・トムセン)に相談するが,イェスパーはウーラの魅力に取りつかれ,自宅に呼び寄せ,ウーラを抱き寄せようとする始末だった。そして,パリへの修学旅行の日がやってくるが,ウーラは途中で養鶏場に立ち寄れと命じ・・・という映画です。
エイリアンに取り憑かれたウーラ先生を演じるパプリカ・スティーンが迫力たっぷりにモンスター熟女役に徹していてすごいです。これはもう,怪演といってもいいでしょう。イカれたような異常言動の連続と,子どもたちの親の前で豹変する様子は,最初見ていて不快なんですが,ここまで突き抜けた演技を見せられると,後半は爽快感さえ感じるほどです。個人的にはもうちょっと若くていかにも北欧美人という感じの女優さんを使って欲しかったですが(でないと,カールのパパがウーラに言い寄るシーンに説得力がありません。これじゃ,パパは単なる熟女好きですってば),ここまで 「最高にイカれた演技」 が見せてくれるならよしとしましょう。
そして,少年少女たちがどれも魅力的です。主人公を演じるヨナス・ヴァンドシュナイダー君が端正で寂しげなルックスと雰囲気を漂わせていて素晴らしいです。彼がスクリーンに登場するだけで画面が引き締まって見えます。この映画が2007年公開ですから,もう20歳くらいになっているのかな? しかし,出演映画がこれ一本しかないみたいです。ちょっと惜しいなぁ。
彼以外の少年少女たちもみんなキャラが立っています。デブゴリラ君,出っ歯君,告げ口ちゃん,ガリ勉くん・・・とすぐにでもあだ名が付けられそうな人物ばかりで,しかも,それぞれがしっかりと自分の役割を果たしながらウーラ先生に立ち向かおうとします。こういうところは,正統派の少年少女SF映画の良き伝統を受けついています。そうそう,ガリ勉くんが大型バスを運転して脱出を図るシーンは 『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』 でぼーちゃんがバスを運転する名シーンを彷彿とさせます。ここは格好よかったな。
あと,少年少女が主人公の映画ということからか,スプラッターシーンはないし(せいぜい,ウーラ先生が後ろ向きでニワトリを食べちゃうシーンくらい),グロイシーンもほとんどありません(せいぜい,ウーラ先生の顔から触手が出るシーンくらい)。音楽の使い方も正統派そのもので,雰囲気を盛り上げる役に徹しているのも好感が持てます。
そういうわけで,思わぬ拾い物のデンマーク映画でした。
(2013/02/22)