新しい創傷治療:新トレマーズ モンゴリアン・デス・ワームの巣窟

《新トレマーズ モンゴリアン・デス・ワームの巣窟 "Mongolian Death Worm"★★(2010年,アメリカ)


 アメリカ映画の舞台がモンゴルだろうとインドだろうとフランスだろうと南極だろうと、そこを舞台にする必然性があれば、別にどうだっていいわけです。と言うわけで、この映画の舞台はモンゴルなんですが、モンゴルでなければいけない理由がすごく希薄です。この映画には「チンギス・ハーンの宝」というのが絡んできますから、舞台はモンゴルでなければいけないのはわかるんですが、そもそも「チンギス・ハーンの宝」なしでもよかった映画、と言うところに難点があるんですね。この程度の映画なら何もわざわざチンギス・ハーン様に登場いただかなくてもいいわけで、ミネソタでシェールガスを掘削していたら怪物が、でも構わないんですよ。

 ところが、アメリカ映画なんだから当然、主人公とヒロインはアメリカ人でなければいけないから、「モンゴルでチンギス・ハーンの秘宝を追い求めるトレジャー・ハンター」を主人公に据え、「モンゴルに発生した奇妙な伝染病を治療するため現地入りしたアメリカ人医師団」の女医さんをヒロインにし、おまけに敵役もアメリカ人でなければいけないということで「モンゴルでシェールガス掘削を進める会社の工場長(?)」まで登場させる羽目になっちゃいました。ここまでアメリカ人で固めるんだったら、最初から「カンザスのシェールガス田」でよかったんじゃないの、と言う気がします。

 ちなみに、テレビ向け映画のようです。


 舞台はモンゴルの草原。ここでチンギス・ハーンの墓にあるとされる秘宝を探し続けているのがトレジャー・ハンターのダニエル(ショーン・パチリック・フラナリー)。しかし、手がかりはつかめたもののお宝は見つからず、出資しているギャングから追われる毎日だ。

 そんなある日、車の故障で立ち往生している女医のアリシア(ヴィッキー・プラット)たちと出会う。彼女は近くの村で発生した奇妙な伝染病の治療に当たるためにNGO「希望の医師団」から派遣されて村に向かう途中だった。そこでダニエルは彼女たちを村に送り届けることになる。しかし、ダニエルの車も途中で故障してしまい、野営をすることになったが、そこでギャングたちに襲われてダニエルとアリシアは拉致されてしまう。

 一方、その近くでは地中奥深くに埋蔵されているシェールガスを採掘する大規模なアメリカのプラントがあった。どうやらその工場長(ドリュー・ウォーターズ)は採掘の途中で何かを見つけたらしく、それを本社に知られまいと必死の工作をしている最中だ。

 そんなさなか、工場の敷地内で一人の従業員が行方不明になる。迷信部会モンゴル人従業員たちの間ではそれが「チンギス・ハーンの墓と秘宝を守る伝説のUMA、Monglian Death Wormが蘇ったためだ」という噂が流れてしまう。実は、シェールガスを採掘するために高温の水を地中奥深くに大量に送り込んだだめ、長い間眠りについていたDeath Wormが目覚めてしまったのだ。どうやら、村で発生している伝染病もDeath Wormによるものらしい。

 一方、拉致されたダニエルとアリシアは脱出を試みようとしていたが、そのさなかにギャングのキャンプが巨大なDeath Worm数匹に襲われ、ギャングたちは全滅し、ダニエルとアリシアは無事に逃げられ、アリシアは同僚医師の待つ診療所(と言っても掘っ建て小屋だけどね)に向かい、彼女も診療に当たる。しかし、その診療所もDeath Wormに襲われてしまう。

 果たして、アリシアたちはDeath Wormから逃れることができ、ダニエルはチンギス・ハーンの秘宝を手に入れることができ、なおかつ、Death Wormを全滅することはできるのでありましょうか・・・ってなお話です。


 と、まとめてみてもわかるように、やたらと無駄なエピソードが多く(伝染病ネタ、チンギス・ハーンの秘宝ネタ、ギャングとの抗争ネタなど)、しかもそれらが同じような比重で並列的に描かれるため、散漫でまとまりが悪くなりました。Death Worm自体はCGでかなり丁寧に作られていて、この手の映画のモンスターとしては水準はクリアしているのですから、モンゴルに固執せず、トレジャー・ハンターも登場させず、普通にアメリカのどこかでを舞台にしたシェールガス採掘がらみのモンスター映画にした方が、余程よかった気がしますし、その方が「シェールガス景気に沸くアメリカに警鐘を鳴らす」みたいで格好良かったんじゃないかと思います。

 それと、Death Wormを見せるのが早過ぎ! こういうのはもうちょっと勿体ぶって、最初の方では一部だけチラ見せしておいて、次第に全身各部分を見せ、最後に「巨大な女王Death Worm」登場、とするのが定石です。それなのに、最初の方ですでに全身見せちゃうんだもの。ここらは下手だなぁ、と思います。

 それと、Death Wormが外見のサイズ(3メートルくらいかな?)の割に弱っちくて、拳銃の数発とかライフル1発で呆気なく倒せます。そのため、モンスターと人間のバトルというのがありません。襲ってきたDeath Wormを人間はひたすら撃ちまくるだけです。このあたりも作り方が下手ですね。

 それと、唯一格好良かったのが初老の保安官(?)なんですが、モンゴルって保安官じゃないですよね。それなのに、制服もテンガロンハットもまるで「アメリカの保安官」そのものです。おまけに、乗っているパトカーにはしっかりと英語で「Police」って書いてあります。ここらはもうちょっと丁寧に作らないとだめでしょう。


 と言うわけで、モンスターのCGだけは合格点だけど、あとは全て赤点不合格、と言う映画でした。

(2013/03/29)

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