Syfyのテレビ向け映画なんで,最初からヘッポコSF映画だということを知った上で見たんですが,予想を超えるヒドさでした。これまで見てきた幾多の「最低辺レベルSF映画」よりは多少マシかな,というレベルですので,普通の映画ファンは絶対に見ちゃダメですよ。
女性科学者のオハラ博士(ダグマー・ドーリング)は画期的な発明に成功し,それを披露するために大物大臣や大統領科学顧問のファースト博士(キャサリン・ウォーカー)を呼んで,お披露目を始めます。なんと彼女は「常温核融合」と「平行宇宙(?)を見ることができる装置」の両方の発明に成功したのです。ちなみに彼女は常温核融合について「画期的発明の前では大した発明じゃないですけど」と,シレッと説明しております。常温核融合を「どうでもいい発明」と言い切っちゃうオハラさん,すごいです。ちなみに,この研究所の警備主任みたいなのが元軍人のシン大佐(ジョー・フラニガン)です。
そして,「異次元観察装置」とやらを起動させます。するとホログラフィー映像でどっかの並行宇宙の様子が映し出されるんですが,大物大臣は「これで本物と言われたってなぁ・・・」と,イマイチ反応がよくありません。まぁ,当然といえば当然ですけどね。するとオハラ博士は「これは見るだけで,直接向こうに行けるわけではありません」と,これまた至極当然の説明をするんですが,するといきなり装置が故障して暴走し始め,でかい火の玉が飛び出し,部屋の全員が気を失います。
そして,シン大佐が真っ先に意識を取り戻しますが,なんと一人死んでいて,得体のしれない生物が食いついています。シン大佐はこの生物を追い,仕留めます。そして全員が目を覚ましますが,どうやら部屋ごと並行宇宙に移動したことが判明します。外には怪物がいます。しかし,大物議員さんは平行宇宙なんて信じていないので,部屋の外に出ちゃいます。一発で怪物の餌食になります。
で,オハラ博士は助手と一緒に装置の修理に取り掛かりますが,ファースト博士は平行宇宙の来れたのが嬉しくて,「世界最初の発見よ! 外を探検しましょう!」とか言い出して,シン大佐とその部下たちと一緒に外に出ます。で,怪物に襲われたり,逃げたり,襲われたり,襲われたり・・・とグダグダした展開が続きます。
一方で,オハラ博士は修理に成功した模様ですが,動力源として273リットルの水が必要だと言い出します。おまけに,元に世界に戻れるタイムリミットは6時間なんだそうです。部屋の中には水はありませんから,オハラ博士の助手が装置を担いで外に出ます。この時点で,「常温核融合+平行宇宙観察・移動装置」がスーツケースより小さいサイズであることがわかります。おまけに,外では電源なしに動いていますのでバッテリー駆動のようです。
で,水を求めて歩いているうちに,森の向こうに大きな建物らしいのが見えます。それを見たファースト博士は「さっきの怪物以外に,この星には知的生命体がいるんだわ。彼らがあの建物を作ったのよ。私はその知的生命体に会いたい! これは世界初の発見よ!」と言い出します。ここで一行は,「水探し班」と「知的生命体コンタクト班」に別れて行動することになります。「世界初」と興奮するのはわかるけど,まず元の世界に戻るのが先決だろ,と言いたくなりますが,とりあえず先を急ぎましょう。
一方,水を探しているオハラ博士はさらなる難問に直面。冷却材が漏れていて,水があっても起動できないことが判明したのです。「冷却材って冷蔵庫で言えばアンモニアみたいなやつか?」,「アンモニアといえば,あの怪物の血液はアンモニアだったよ!」,「でも怪物を新たに倒すのは大変だぞ」,「なら,怪物の卵をいただけばいいじゃないの」ってな,とってつけたような会話があり,水と怪物の卵をゲットできれば元の世界に戻れることが判明しました。
で,川の水を飲んでいた怪物を何とか追っ払い,シン大佐の部下が死んだりしますが,なんとか卵をゲット。273リットルの水を吸い込んだ装置(・・・ということは273kg以上の重量のはずですが,何故か軽々と持てます)に,卵の中身を入れてスイッチオン! 起動成功です。オハラ博士とシン大佐は元の世界に戻れます。一方,ファースト博士は知的生命体の建物に近づきますが,なんとそれは,研究所の隣にあった税務署の建物で,一緒に移動してきたものでした。ファースト博士,目が点でございます。するとそこに怪物が襲ってきて食われちゃいます。
というわけで,ツッコむ気力すらなくなるような映画でございますが,それにしてもこの映画を作った人たちは,一体どういう映画にしたかったんでしょうか。
映画のヒーロー役はシン大佐,ヒロイン役はオハラ博士でいいと思うのですが,途中からファースト博士の「知的生命体に合って話がしたい!」と暴走するあたりから,彼女のキャラが立ちまくりですが,ヒロインのはずのオハラ博士は最初から最後まで地味キャラなんですよ。おまけに,オハラ博士は「美人じゃないオバちゃん」だけど,ファースト博士は「普通に美人のオバちゃん」です。なら,最初からファースト博士をヒロイン役にしてストーリーを練り直したほうが,よほどスッキリしたはずです。
そういえば,シン大佐はイランだったかアフガニスタンの戦争の時に何か起こして,除隊になったという過去があるらしく,その経緯をファースト博士が知っているようなんですが,このエピソードがまるっきり生かされていないため,単なる無駄エピソードになっています。このあたりも映画作りが下手だなぁ,という感じですね。
同様に,グダグダした無駄シーン,無駄説明シーンがあるかと思うと,後半は展開を急ぎすぎて何が何だか分からないという部分も少なくありません。多分,映画作りの基本がわかってないんでしょうね。
モンスターの造形はテレビ映画としてはかなり頑張って作っている方だし,CGもテレビ映画としては水準をクリアしている方じゃないかと思います。ただ,怪物が結構大きいのにシン大佐たちが持っている武器は拳銃だけですから(もともとが研究室の警備担当なんで,重火器で武装している方が不自然ですけどね),人間 vs 怪物の実力差がありすぎて勝負になりません。せいぜい,「怪物は卵を異常に大事にする」という性質を逆手にとるくらいしかできません。つまり,モンスター・アクション映画としての要素はほとんど皆無です。この辺りも映画作りのセンスが悪いです。
というわけで,金をとってみせる映画を作りたいなら,もうちょっと基本的なところから勉強をしなおした方がいいよ,というレベルの映画でした。
(2013/04/18)