《DECODER デコーダー[解読者] "BEACON 77"★★(2009年,イギリス)


 この映画の監督の頭の中にある構想は何となくわかるんですよ。そしてアイデア自体も悪くないんですよ。ただ、その考えを映像にする才能が欠けていて、説明能力が欠如しているだけです。子供が一生懸命に話しているんだけど、前後関係と因果関係がめちゃくちゃなために、子供が話そうとしていることは何となく推理できるんだけど、いまいち要領を得ない・・・という感じに近いですね。「自分ならショパンのコンチェルトはこう演奏したいんだけど,ピアノが弾けないんだよ」というのに似ているかな。

 情熱と意欲に溢れているのはわかるけど、映画を作る前にまず映画作りの基礎を勉強した方がいいと思うよ、という映画でした。


 舞台はイギリスのどっか。女子大生のサラは親友のゾーイに誘われて、ゼミのマルコム教授が住むアパートの最上階を訪れる。ゾーイは教授と肉体関係を持ってしまったらしく、彼とつきあうためにゼミを辞める相談をするためらしい。教授の部屋に入ると、そこはコンピュータとモニターが部屋中を埋め尽くしていて、そこには教授の他に天才ハッカーのデクランと彼の恋人のケンドラがいて、一心不乱にコンピュータを操作していた。

 彼らが企んでいるのは聖書に書かれた暗号を解き明かし、解き明かした謎をインターネット・ラジオで全世界に放送していた。そして、最大の謎を解き明かすためにバチカンのデータベースに侵入して最も古い石版に刻まれた聖書の画像を入手し、それを三次元的に積み重ね、特定の文字列の配列から「秘密」を解こうとしていた。厳重に管理されたバチカンのセキュリティーを破り、ついに彼らは聖書の原典を入手する。

 しかしその時、システムが暴走し、三次元データをさらに高次元のマトリックスに再構築していく。そして異変が起こり、5人はペンとハウスに閉じこめられてしまう。そのまま宇宙は終末を迎えてしまうのだろうか・・・ってなお話です。


 この粗筋を読んでも訳が分かりませんよね。書いている私も訳が分かりません。途中に小難しい哲学論争や宗教に関する議論とか、CIAの超能力に関する研究とか、いろんなネタが散りばめられているんですが、全く一つにまとまる気配すらありません。どれがメインのテーマなのか、それすらわからないまま結末を迎えます。

 最初のバチカンのデータベースをハッキングするあたりはサスペンスフルで悪くありません。ハックしたデータを元にコンピュータが解析をする場面も安っぽいけど悪くありません。それなのに、そこから先は一気にオカルトモード、サイコキネシス・モードに走ってしまい、主人公が超能力使いに変身してしまうので、見ている方が混乱するんですよ。えっ、これってそういう映画だったの、ってね。


 それと、低予算映画でコンピュータ画像のCGでお金を使い果たしてしまったらしく、登場人物は5人とあと数人のみ、舞台はアパートの一室(ペントハウス)のみとなってしまいました。そのため、この映画監督が描こうとした世界のスケールと、実際の映画の画面に描かれる四畳半的スケールがまるっきり釣り合わなくなりました。低予算なのはしょうがないのだから、低予算でも映像を大きく見せる工夫、背後にある世界の大きさを感じ取らせる工夫をすべきですね。

 多分、バチカンのデータベースへの侵入と、侵入を感知したバチカン側からのサイバー攻撃を中心にして、後半のオカルトチックな部分を切り捨て、天才ハッカーとそれを取り巻く人間ドラマを絡めれば、同じ予算でもまともに面白い映画が作れたはずです。


 もうこれ以上書くべきことがありません。そういう映画でした。

(2013/06/05)

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