新しい創傷治療:カジノ・ゾンビ

《カジノ・ゾンビ "Steve Niles's Remains"★★(2011年,アメリカ)


 クズ作品が圧倒的に多いゾンビ映画の中では、これはかなりまともな方です。特徴は主人公とヒロインの性格が悪いこと(特にヒロインはすごく可愛いんだけど、性格が・・・)と、夜になるとゾンビが眠っちゃうこと。

 とは言っても,飽きるほどゾンビ映画は見ているけど、まだ見たいんだよね、というゾンビマニアにはオススメしますが、それ以外の善良な映画ファンはもちろんスルーしてください。

 ちなみに、原題からわかるようにスティーヴ・ナイルズというアメリカの漫画家のコミックが原作とのことです。


 舞台はネバダ州の小都市リノ。カジノのディーラーとして働いているトム(グラント・バウラー)は、ウェイトレスのトーリー(エヴァレナ・マリー)とエッチしようと倉庫に誘うが、いざエッチと言うときに突然建物を衝撃が襲い明かりが消える。異変に気づいた二人は倉庫を出るが、カジノの中は廃墟と化していた。二人は何とか警備員室にたどり着くが、その防犯カメラには客や従業員たちがゾンビと化し、生き残った人々を襲う恐ろしい様子が映し出されていた。

 カジノの中の生き残りがさらに二人見つかり、4人はカジノに籠城することにしたが、トランシーバーからは救援部隊が向かっているという情報が流れるが・・・と言う映画です。


 今回のゾンビ化の原因は「放射能を無害化する画期的な実験でトラブルが起きて大爆発が起こり、大放出された放射能を浴びた人間がゾンビになって」と、説明されています。まぁ、ゾンビ化の原因なんて、ゾンビ映画を見る方にとってはどうでもいいんで、こういうとってつけたような理由付けで十分納得です。ゾンビ映画の基本構造は、〔外の世界はゾンビで一杯〕⇒〔建物に籠城〕⇒〔でもいつまでも籠城しているわけにいかない〕⇒〔脱出して安全なところへ〕にあるわけで、そういう状況を何となく説明できれば十分なんですね。


 ゾンビ映画と言えば低予算作品が圧倒的に多いのですが、これは比較的予算をかけた方じゃないかと思います。ゾンビメイクもばっちり決まっているし、ゾンビ役のエキストラも多数使っていて、町中にゾンビがワラワラ湧いて出た様子を十分に描いています。最後には爆破シーンもあります。

 あとは、魅力的な人物造形ができるかですが、前述のように主人公のトムは本当にショーモナイくらいのダメ男で、行動も行き当たりばったり(特に、シャッターの錠を衝動的に銃で撃って使えなくして脱出できなくなるシーンには笑ったぞ)で、おまけに、後半で新しく加わる女性兵士のシンディ(タウニー・サイプレス)と仲良くなってトーリーを無視したりと、いいところが一つもなし。一方のヒロインのトーリーはエロカワイいんだけど性格は悪いです。自分が生き残れればそれでいいや、という方針まっしぐらで、仲間を見捨てるなんて朝飯前。まぁ、見事なまでのビッチぶりです。ここまでくると、最後までこいつは生き残るんだろうなぁ、なんて思っちゃいますが、なんと最後のところでゾンビの群に襲われます。「アレっ、こいつ、ここでおしまい?」と思ったその時、ラストシーンではゾンビ・クイーンになってゾンビの群を率いているじゃありませんか。転んでもただでは起きない、って奴だな。すげえぞ、トーリーちゃん。


 あと、ゾンビは夜になるとエネルギー切れでたったまま寝ちゃう、というのも面白い設定だし(夜眠るゾンビ、という設定のゾンビ映画はほかにもありましたね)、食い物(=生きている人間)が見つからないとゾンビ同士が共食いをする、という設定もよかったな。惜しかったのは、後半、さらに運動能力が高まったゾンビが街に迫ってくる、というのがストーリーの上で全く生かされていなかったこと。どうせ「ゾンビの共食い」を出したんだから、「ゾンビ同士の共食いで強いものが生き残り、ゾンビが進化した!」とかいう設定にして、これをメインに据えたゾンビ映画にすれば面白かったんじゃないだろうか。

 他にも、いろんなエピソードを詰め込みすぎて、ゴチャゴチャしてしまったのも惜しかったな。シンディをトムに絡ませるんだったら、軍隊をもっと早い段階で登場させるべきだったと思いますね。だから、後半にシンディが戻ってからの展開が急すぎて、トムとシンディが仲良くなりかけるところも「オイオイ、若くて可愛いトーリーでなくて、ちょっとおばちゃんっぽいシンディでいいの?」と、見ている方が納得できないのです。


 と言うわけで、基本設定はこのままで、もう少しストーリーを整理すれば、さらに面白いゾンビ映画に大化けする可能性がありそうです。

(2013/06/12)

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