《BATS2 蝙蝠地獄 "Bats: Human Harvest"★★(2007年,アメリカ)


 以前,《BATS 蝙蝠地獄》 という大群のコウモリが人を襲うパニック映画を紹介しましたが,これはその続編ですが,はっきり言うと作らないほうが良かった,という続編です。私はいつも「続編に傑作なし」と書いていますが,まさにその見本です。前作の方はモンスター・パニック映画の基本的な作り方がわかっていて,定石通りの展開ながらもストーリーの組み立て方と語り口のテンポの良さがある佳作でしたが,この続編には全く取り柄がありません。

 マッド・サイエンティストとデルタフォースだけにすればよかったのに、スペツナズ(ロシア特殊部隊)とチェチェン武装勢力まで絡ませたために物語が散漫になってしまいました。前作との差別化を考えたのかもしれませんが、それだったらコウモリを巨大化させるとか、特殊能力を付加するとか、そっちの方向で差別化を図るべきでしたね。


 イラクのテロリストを急襲したアメリカ軍は、軍の生物兵器の研究者でアメリカから逃亡したウォルシュ博士が、チェチェンの「ベルザンの森」に潜伏して研究を通づけていることを知った。ウォルシュ博士を拘束するため、アメリカ軍は特殊部隊であるデルタフォースをチェチェンに派遣することにした。その「ベルザンの森」は地元民から「生きて帰れない森」と呼ばれて恐れられていた。

 ベルザンの森に到着したデルタフォール部隊は森に入っていったが、そこで何者かに食いちぎられた多数の死体を発見する。それはロシア特殊部隊「スペスナズ」だった。そしてデルタフォースは、ウォルシュ博士が作り出した人喰いコウモリの群に遭遇する。果たして彼らはウォルシュ博士を捕まえ、生きて帰れるのだろうか・・・というお話でございます。


 この映画の何がダメかというと、「デルタフォース vs 人喰いコウモリ vs スペスナズ vs チェチェン独立派武装集団」という複雑な対立構造(アメリカ軍とロシア軍が対立し、ロシア軍とチェチェン軍が対立し、チェチェン軍とアメリカ軍も対立している)にしたことです。そして、アメリカ軍内にロシア出身の軍人(女性)を入れて、これが実は・・・という複雑さです。このため、デルタフォースとスペスナズ、チェチェン武装集団の戦いがメインになってしまい、デルタフォースと人喰いコウモリ(とウォルシュ博士)の戦いは添え物というほど印象が薄くなってしまいました。デルタフォースがウォルシュ博士を確保する部分も印象が薄いし、ラストの人喰いコウモリ軍団を全滅させるシーンも唐突で無理矢理という感じです。

 これは多分、俳優陣をデルタフォース、スペスナズ、チェチェン部隊に3分割したため、デルタフォースは5〜6人の少人数になってしまったことがそもそもの原因です。人喰いコウモリに勝利するのは主人公を含むデルタフォースですが、あまりにも人数が少ないために「各シーンでの犠牲者は1人だけ」となってしまったのです。そのため、「犠牲者以外のデルタフォース隊員は銃を撃って無数のコウモリを倒せる」という無理矢理設定を作っちゃいました(こうでもしないとデルタフォースがすぐに全滅しちゃいますからね)。このため、デルタフォースが人喰いコウモリ軍団に襲われるシーンも少なくせざるを得なくなりました(頻繁に襲われたらすぐに全滅しちゃいますからね)。でもそれだと人喰いコウモリを登場させた意味がありませんから、人喰いコウモリ軍団はスペスナズを襲ったり、農民を襲ったりして時間潰しをすることになったわけです。このため、展開がモッタリして、盛り上がりにも欠けてしまうことになりました。


 もちろん、ちょっと評判のよかった前作の続編ですから、ちょっとは変化を持たせないといけないよなぁ、と考えた制作陣が、「デルタフォース vs 人喰いコウモリでは普通すぎるから、ロシアのチェチェンを物語の舞台にすればチェチェンとロシアの対立も入れられるし、深みのあるパニック映画になるんじゃないだろうか」と考えたことは十分想像できます。でも、これが見事にハズしちゃったのです。ヘタな考え、休むに似たり、というやつです。

 普通なら、チェチェンなんて面倒なところを舞台にせずにアメリカのどっかにして、デルタフォースなりアメリカ軍の人員を3倍にすれば、「軍が人喰いコウモリに襲われる」⇒「部隊の1/3くらいがやられる」⇒「どこかに逃げ込む」⇒「また襲われる」⇒「さらに犠牲者が」⇒「しかし、その戦いを経て人喰いコウモリの特徴や弱点などが明らかになる」⇒「それを利用して主人公が人喰いコウモリを一カ所に集めて一網打尽にしようとするが・・・」という、モンスターパニック映画らしい展開にできたのです。そして、人喰いコウモリを作り出したマッド・サイエンティストと軍とのトラブルとかを絡めれば、普通に面白い映画になったはずです。


 そして、この映画でさらにダメなのが、人喰いコウモリが全然怖くないことです。サイズはオオコウモリ程度で、牙も小さいです。映画の中ではコウモリの牙で人間の腕がもぎ取られたりしますが、何が何でもこの大きさじゃ無理ですよ。「人喰いコウモリは群で襲ってきて、人間をムシャムシャ食べちゃいます」という設定の方がよほど怖かったと思います。

(2013/07/11)

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