映画で第1作目、第2作目・・・とシリーズ書されたものは多いが、得てして続編は第1作目の出来を越えることは極めてまれです。続編が第1作目と同程度に面白い、なんてことは滅多になく、むしろ、回を重ねるごとにつまらなくなっていく作品がほとんどです。理由は単純で、最初からシリーズかを予定して第1作目を作り始めた映画はごく少数で、ほとんどの場合は単発の作品として企画されるからです。だから、映画監督はその作品に全てを込めて作るため、第1作目は非常に面白いものになります。
その成功を受けて第2作目が作られるのですが、あらゆる工夫とアイデアを詰め込んだ第1作目を越えることは不可能なんですね。でも、第1作目の評判と配給会社の宣伝で観客はそこそこ入ります。そしてさらに続編が作られますが、もうそうなると惰性でしかありません。かくして駄作がだらだらと続くことになります。
そして今回の映画ですが、なんと、よりにもよって、あの《メガ・シャーク VS ジャイアント・オクトパス》の正式続編なんですよ。制作はもちろんAsylumなんですが、なんで評判にもならなかった映画の続編を作っちゃったんでしょうか。理由は続編を見るとよくわかります。サメが泳いだりするシーンのCGをコピペして使い回しているようです。ワニのシーンも別の「巨大ワニ映画」からの使い回しがあるようです。できるだけ安く、手抜きで作る、という目的で作られた映画としか思えません。
そして内容は第1作目(低レベルながら、ストーリーはきちんと作られていた)をはるかに劣化させた感じで、ストーリーが何がなんだかよくわかりません。なぜこうなったのか、どうしてこうなったのかという説明シーンが全て省かれているからです。どうやら、適当で大雑把なストーリーしか決めずに撮影が始まり、全てのシーンを撮り終わってから繋ぎ合わせたんじゃないかと思います。
というわけで、体長450メートルの怪物同士の対決を楽しむことにしましょう。
最初の舞台はアフリカのコンゴ民主共和国のダイアモンド鉱山。地元民が採掘していると、突如、鉱山の奥の方から巨大なワニが出現し、鉱山労働者はあえなく全滅。そして、怪物捕獲で有名なクロコダイルハンターのナイジェル(ゲイリー・ストレッチ)に白羽の矢がたち、彼は見事に巨大ワニの捕獲に成功する。そして麻酔で眠らせたワニを積み込んだ貨物船は大西洋上を航行していた。
コンゴに巨大ワニが出現した頃、大西洋上のアメリカ海軍の戦艦ギブソン号は巨大生物に遭遇した。それはかつてアメリカ海軍に多大な損害を与え、巨大タコと戦って海中に姿を消した、あの巨大ザメ、メガロドンだった。さらに巨大化したメガロドンの攻撃を受けて、ギブソン号はあっけなく沈没する。ギブソン号の唯一の生き残りで、サメの研究家だったテリー(ジェイリール・ホワイト)は復讐を決意する。
そのメガロドンの目の前を航行していたのが、ナイジェルがしとめた巨大ワニを積んだ貨物船だった。そして、メガロドンの攻撃を受けた貨物船はあっけなく沈没し、巨大ワニは大西洋に逃げ出してしまう。
凶暴な2匹の怪物が大西洋を我が物顔に暴れまくっていることを知ったアメリカ海軍は、女性捜査官のハッチソン(サラ・リーヴィング)に事件解決を命じ、ハッチソンはナイジェルとテリーに協力を求めた。
ナイジェル、テリー、ハッチソンは海岸に向かい、そこでワニが多数の卵を生んでいることを発見。そしてワニの卵を狙ってメガロドンも近づいてきた。ハッチソンは軍に爆撃を命令するが巨大ワニもメガロドンも逃がしてしまう。そして巨大ワニはマイアミに上陸して街を踏みつぶし始める。
テリーは、ワニが電流を嫌うことを利用して海に追い払う計画を立て、原子力発電所を使ってアーク放電をワニに浴びせ、ワニは海中に姿を消す。一方、ナイジェルは軍に巨大ワニの卵を分析して弱点を探す作戦を提案するが、巨大ワニの卵を乗せた船はまたもメガロドンに襲われて沈没。どうやら、巨大ワニの卵はメガロドンの大好物らしい。
そこでナイジェルは、巨大ワニの卵でメガロドンと巨大ワニを一カ所に集めて閉じこめ、爆撃する作戦を立てる。巨大ワニは母性本能が強く、卵があれば必ず寄ってくるはずだ。そして、卵がパナマ運河に運び込まれ、二匹の怪物は運河に入り、運河を閉鎖して閉じこめたが、ワニとメガロドンは互いに攻撃し合って暴れ、今度は太平洋に逃げ出してしまう。巨大ワインはポロポロと卵を生みながら太平洋を泳ぎ、それをメガロドンが追っていく。卵からふ化した子ワニたちは母ワニのそばを泳いでいる。
怪物たちはハワイ沖に近づくが、ここでテリーはサメをおびき寄せる電波を出す装置でサメをおびき寄せ、ワニも近づいたところで一気に海底火山を噴火させる作戦を提案する。果たしてこの作戦はうまくいくのでしょうか・・・という映画でございます。
巨大ワニもメガロドンもデカいっすよ。何しろ450メートルですから、メガロドンの尾の一振りでアメリカ海軍の戦艦は破壊されて沈没するし、原子力潜水艦はひと飲みで腹の中です。マイアミの高層ビルも巨大ワニに踏みつぶされます。
しかし、例えばマイアミのシーンですが、マイアミの日常の風景の映像と、巨大ワニのCGと、逃げまどう人たちの映像の合成がド下手なため、臨場感がまるでありません。他のシーンも同じで、怪物くんたちのCGが背景から浮き上がっているので、すごさが全く伝わってこないのです。どのシーンもあっさりしすぎていて、「戦艦がやられました。次にマイアミがやられました。パナマ運河もやられました」という感じで、淡々としたものです。なにやら、小学生の夏休みの絵日記の文章を読まされている感じです。
何でこうなったかというと、二匹の怪物が余りに巨大すぎて人間側に対抗策がないからです。これが普通のモンスターパニック映画だったら、人間側がモンスターの弱点を探し出して倒すとか、動物学者が活躍するとか、軍と民間の軋轢があるとか、悪徳市長が絡んでくるとか、ヒーローとヒロインがカップリング反応するとか、いろいろあるわけです。しかしこの映画は怪物が異次元的デカさのため対抗策がないし、おまけに登場人物の人間関係を絡めていく気もなかったようで登場人物も薄っぺらです。それなのに90分映画にしないといけないのですから、舞台を転々とさせて怪物くんたちに大暴れするしか手がないんですね。
ちなみに、映画の中では「体長450メートル」ですが、シーンによっては10メートルくらい、別のシーンでは100メートルくらいに見えたりと、伸縮自在です。遠近法が狂いまくっていますが、この手のモンスター映画特有の現象ですね。
それにしても、最初の方でクロコダイルハンターのナイジェルは、どうやって巨大ワニを捕まえたんでしょうか。捕獲シーンが全くなく、いきなり船に積み込むシーンになっちゃいます。アメリカ軍が総攻撃してもぴんぴんしているワニをほとんど素手で捕まえるんですから、ナイジェルさん、すごいです。
それにしても、最後のハワイ沖の海底火山をどうやって噴火させたんでしょうか。このあたりも説明は全くありません。海底火山を自在に操るテリーさん、すごいです。
あと、この手の映画ではビキニのおねーちゃんとかシャワーシーンとか、お色気シーンが必須ですが、この映画では途中まではそっち方面への配慮は全くありません。これじゃマズいと気がついたのか、途中からハッチソン捜査官(かなり美人)が無意味にタンクトップ姿になり、ちょい巨乳を披露してくれます。この映画唯一の見所です。
というわけで、とりあえず巨大なワニとサメが暴れているシーンさえあればオレは満足だね、というニッチな映画ファンにのみお勧めの映画でした。
(2013/07/19)