悪魔崇拝をテーマにしたちょっと気合いの入ったスペイン製のスプラッター色の強いホラー映画。丁寧に作られていて、ストーリーも起承転結がしっかりしていますが、ちょっときれいにまとめすぎたかな、という気もしました。
最初の舞台は1965年のスペイン北部の街で、ここはあと1年でダムの底に沈む予定だった。廃墟となった街を遊び場にしていた二人の少年が、立ち入り禁止の柵を越えて入るが、無人のはずの街から声が聞こえてくるのに気が付く。声を頼りに一軒の家に入った二人は鎖に繋がれた人々を見る。そして、一人の男が「ロープを切って助けてくれ」といい、一人の少年がロープを切ってしまう。ところがその男は少年に襲いかかり、少年は惨殺され、もう一人の少年は逃げ出してしまう。
40年後、その土地には広大なデバリア・ダムができ、マリンエバートという町ができていた。その街に暮らす少女クララ(シャルロット・サルト)は友人のスサナ、そのボーイフレンドのアントニオをダム湖のほとりで遊んでいたが、突然、アントニオが何者かによって水中に引きずり込まれ、姿を消してしまう。すぐに警察が駆けつけるが彼の姿は見つからない。
一方、町長はダムができてから40周年の記念祝賀会の準備に余念がなく、クララの母親でレポーターのテレサ(ラクエル・メロノ)も祝賀会の報道にかり出されていた。
一方、各地のダム湖に沈んだ町の廃墟を追い続けている報道写真家のダンは、デバリア・ダムの取材に訪れ、ダム湖に潜水するが、そこで異常な水の流れがあることに気が付き、何かにからみつかれてしまう。
実はこのダム湖は、先代の町長をしていたクララの祖父が突貫工事で作り上げたもので、町を沈めるために造ったダムだった。その頃この町ではサラスという男が悪魔崇拝を広めていた。そしてクララの祖父は悪魔崇拝から町を守るために、サラスとその一派を一つの建物の中に閉じこめ、封印の呪文を書いた書を教会に納め、町を丸ごと封印しようとしたのだ。
そして、サラスは祝賀会の時にダムを決壊させて町を壊滅させ、悪魔の町を復活させようと企んでいた。そして、サラスの魔の手はクララにも及び・・・という映画です。
この手の悪魔系オカルト映画についてはツッコミを入れようと思うといくらでもツッコミポイントがあります。悪魔崇拝で不思議な能力を手に入れたサラスを、なぜ一般人であるクララの祖父が抑え込めたのかとか、あの封印のラテン語をなぜ祖父が知ったのかとか、突貫工事で造ったダムが40年間水漏れもしないっておかしくないとか、いろいろ気になる点はあります。まぁ、オカルト映画だから見逃すことにします。オカルトに論理は通用しませんからね。
ヒロインのクララ役のシャルロット・サルトさん、美しいです。これだけでこの映画を見た甲斐があったというものです。しかも、最初の方ではスクール水着(?)姿を披露します(彼女の友達はきわどいビキニだけどね)。一部マニアの方にはたまらないものがあるショットかもしれません。
悪魔系ホラー映画ですが、ゾンビのように人間を喰う奴とか、朽ち果てた死体みたいな奴とかがバンバン登場します。スプラッターシーンもかなり力が入っています。特に、冒頭の少年2人のシーンで、復活したサラスが少年一人を惨殺するシーンはちょっと迫力・・・というか、このあたりがハリウッド映画との最大の違いでしょうね。ハリウッドでは子供が殺されるシーンは絶対NGですが、スペインでは大丈夫みたいです。
それと、最後の方の「ダム建築40周年記念パーティー」の会場が、次第に狂乱・酒池肉林の乱交パーティーに変化していく様子はちょっとすごいです。オッパイがばんばん映るし、皆さん、そこらでまぐわっております。これなら悪魔崇拝ってのも悪くないかな、なんて思ったりして・・・。
湖底に沈む町の様子はCGですが、丁寧に作られていて、ゆらゆら揺れる水の様子が美しく描写されています。こういうあたりに監督のユズナのセンスの良さが光っています。
最後、めでたし、めでたしで終わるかと思ったら、少年が! ううむ、そう来たか。この終わり方はちょっとよかったです。
というわけで、ホラー映画好き、オカルト映画好きなら押さえておいてもいい佳作でした。
(2013/09/23)