土砂崩れで外部から孤立した精神病院で起こる連続猟奇殺人事件を描いた、ホラー風味強いトルコ製のサスペンス映画です。ラスト5分で事件の真相が明らかにされますが、なるほど、そうだったのかとちょっとびっくり系の真相で、ストーリー自体はかなり見事です。しかし、この「衝撃のラスト」に行くまでの展開が遅くて淡々とし過ぎているため、ラストまでたどり着けない人が多いかもしれません。確かに、いろいろなところに伏線が張られていて(例:院長先生の水の飲み方とか)、それらを総合すると「事件の真相」はある程度、予測できるんでしょうが、テンポが悪すぎて大方の人はそれが伏線であることを忘れちゃいますね。私なんて、95分を過ぎてもまだ事件の真相が明かされないので、「もしかした映画監督は事件の真相を説明するのを忘れているんじゃないの?」と心配になったくらいです。
それと、ラストの後味の悪さはかなりのものですので、ハッピーエンドのサスペンス映画が好きな人は見ない方がいいです。ここまで救いようのないエンディングは久しぶりでした。
あと、大どんでん返し系映画なのでネタバレはしません。こういう後味の悪い映画を見たいという人はあまりいないと思いますが、万一いらっしゃったら、ネタバレ系の解説は絶対に読まないで見るべきです。
ちなみにこの映画の監督であるゴックベイカーは撮影時、まだ21歳だったそうです。
舞台はトルコの山奥にある精神病院。ここに精神科医になったばかりの女性医師デニズ(ドーガ・ルトケイ)が赴任するが、到着早々、彼女は病院の屋上から投身自殺した患者の死体をハリル刑事(ハルデュン・ボイサン)、セミル刑事(セミル・ビュクデュゲルリ)が調べているところに遭遇する。
やがてデニズはメティン院長(マフムット・ゴークゴーズ)、院長の腹心の部下であるサディック(セファ・ゼンギン)から病院内を案内されるが、入院患者は重症の緊張型統合失調症が多く、電気ショック治療が行われていた。一方、ハリル刑事は外部と連絡を取ろうとすると、携帯電話は通じず、大雨の地滑りで電話線が切れていて、連絡を取ることもできないことがわかる。
その夜、入院患者が惨殺されるという事件が起こるが、死体はペニスが切り取られ、目が抉り取られ、内臓が取り出されていた。二人の刑事は病院職員に質問するが、皆、アリバイがあった。そして翌日の夜もまた、殺人事件が起こり、同様の手口で殺されていた。そしてセミル刑事はついに二人の犠牲者の共通点を見いだす。二人とも「20年以上、この病院に入院している」患者だった。そして次に日の夜、ついに3人目の犠牲者が・・・という映画です。
映画の冒頭、患者を電気ショックにかけるショッキングな映像から始まります。私は、これって一体、いつの時代の精神病院を舞台にした映画なんだろうって思っちゃいましたよ。何しろ、精神病の治療として電気ショックが盛んに行われていたのは第二次大戦の頃までで、クロルプロマジンが1950年代に合成されてからは姿を消した治療だからです。でも、それ以外の小道具(携帯電話など)は舞台が現代であることを示しているんですよ。
そしたら、真相が分かってしまうと、この電気ショック自体が伏線だったんですね。そういえば、精神科医師の免許取り立てのデニズが病院の医師から「ここでは治療として電気ショックを行っています」と説明を受け、驚く様子も見せずに「その様子を見てみたいわ」と答えるんですが、これも伏線の一つですね。
確かにこの病院の入院患者はやたらと拘束衣を着せられたりベッドに縛り付けられていたり、意識がなかったりしていて、現代の精神病院らしくないんですが、これも重要な伏線の一つです。デニズの先輩医師が患者を集めて集団カウンセリングするシーンもすごく変ですが、これももちろん、ラストまで見ると理由がわかります。あと、院長先生のコップの持ち方が変な理由とか・・・。
若い女性医師デニズを演じる女優さんは黒髪のトルコ美人で、とても魅力的。この人がラストであんな目に遭わされ、結局、母親と同じ運命になるのは見ていて心が痛みます。このラストはないだろ、と言いたくなりますね。
と言うわけで、ネタバレしないで書くレビューとしてはここらが限界のようです。
(2013/10/04)