《レッド・サイクロン "SUPER STORM"★★(2011年,カナダ)


 カナダでテレビ向けに作られたディザスター映画,と聞いていやな予感がしたあなたは鋭いです。カナダ製映画なのに舞台はアメリカのド田舎の町,と聞いて,見る価値はないかな,と感じたあなたも鋭いです。ヘッポコ・パニック映画のすべてが込められているのがこの映画です。

 何より悪いのは,映画制作側が「だってテレビ向けで低予算なんだもん」を言い訳にしていることですね。低予算だから登場人物は可能な限り削らないといけない,低予算だから大都会が大災害に見舞われるシーンは撮影できない,低予算だから人が住んでいない田舎町を舞台にするしかない,低予算だから手抜きのCGしかできない・・・と,言い訳しか伝わってきません。こういう性根の腐った連中に面白い映画が作れる訳ないです。この映画がつまらない理由は,制作側に熱意がなく,低予算を跳ね返すだけの才能もないことにあります。


 大した内容の映画でもないので,内容をざっくりと紹介。

 アメリカのド田舎の町を赤い色をした竜巻が襲い,放電(?)を繰り返しては家を破壊していきます。ここで一組の親子が死にます。

 一方,母親アンドレアと息子ウィルが乗っている車が故障して,息子が修理しようとして,例の放電現象に遭遇します。でも彼らは主人公なのでケガ一つしません。息子のウィルは高校を遅刻ばかりしているために「罰登校」の処分を受けて学校に向かうところです。学校に行くと,罰登校担当の体育教師ジェイソンが登場しますが,なんと彼はアンドレアの旦那様にして,ウィルの父親です。ちなみに,母も父も息子が大学に進学しようとしないことを気に病んでいます。ちなみに,罰登校が課せられたのは天才科学少女のメーガン,バスケット部の筋肉頭のローソン,新聞記者志望のスーザンです。ちなみに罰登校で何をするかというと,高校の科学祭の飾り付けをするんだとか。ちなみに,メーガンはウィルと共同研究した作った装置を展示するんだとか。

 そうこうしているうちに町のあちこちで街灯が爆発するやら,電話が普通になるやら,テレビもラジオも聞こえなくなるやら異変が続発。あちこちで「赤い竜巻」が襲い始めます。

 一方,メーガンが雑誌に書いた論文を素粒子物理学者(女性)が読み,大興奮。なんとそれは地球にはなく木星にしかない破壊粒子,エクスポゾンの存在を地上で証明したものだったからです(この映画によると,木星は元々岩石でできていたけど,エクスポゾンのために全て気体に変わり,現在のようなガス惑星になったんだってさ)。映画の説明ではよくわかりませんが,どうやら,木星の大赤斑が消滅したことに関連しているらしく,木星のエクスポゾンが地球の大気に集まって,地球上の固体を気体に変えようとしているらしいのです。女性科学者は渋る同僚を誘って,小型セスナに乗り込んでメーガンに会いに田舎町に向かいます。

 この頃,田舎町ではウィルの奮闘でテレビがつきますが,ニューヨークやワシントンDCが全て破壊され,アメリカは壊滅状態,というニュースが飛び込んできます。嘘でもいいから,壊滅したアメリカの様子の映像を流してほしいです。

 そして,なんだかんだあって,女性科学者はジェイソンと会い,地球の危機を救えるのはメーガンが高校科学祭用に作った手作り装置にあると告げられます。その頃,なんだかんだあって,ウィルの母親のアンドレアはメーガンの父親(天体物理学の天才だけど,なぜ過去の田舎町で隠遁生活している)から「実は本当の天才はウィルで,メーガンはそれを手伝っただけ」と教えられます。

 で,なんだかんだあって,「エクスポゾンは固体を昇華させながらエネルギーとしているのだから,エネルギーを絶てばいい。それにはエクスポゾンの比率が臨界点を超えさせるんだ。すると赤い竜巻は自分自身を食べ始めて消滅する」というウィル理論を元に,作りかけのロケット(もちろん,ウィルとメーガンの父親が作ったもの)にウィルの装置を乗せて竜巻めがけて打ち込む,という作戦を立てます。溶接の技術を持つウィルの母も手伝います。

 あと少し,というところで発電器が故障。いくらロケットでも電気がなければ飛ばせません。するとウィルの父が「電気でいいなら,そこらで放電しまくっている。その電流を導けばいい」という危なっかしい提案をします。果たして,ベンジャミン・フランクリンの凧実験のようにうまく行くのでしょうか,果たしてロケットは打ち上げられるのでしょうか,果たしてエクスポゾンは消滅するのでしょうか,果たして映画の最後まで生き残る登場人物は何人いるのでしょうか・・・というナイスな映画でございます。


 アメリカやカナダのディザスター映画では「親子・夫婦の和解」がメインテーマです。この映画で言えば,天才ウィル君の才能を全く見抜けない(関心がない? 理解するだけの能力がない?)ウィルの両親と,ウィルの和解を描くことになります。だから,この3人は最後まで生き残ってラストシーンで抱き合う必要があります。それ以外の登場人物は用がないのでバシバシと死んでいきます。生き残るのはメーガンくらいかな? 女性科学者も「ジェイソンへの伝令係」程度の役割で活躍の機会すら与えてもらってなかったしなぁ。

 前述のように「低予算」を言い訳に,登場人物を削りに削っています。ローソン君とスーザンちゃん以外は二組の親子だけじゃん,という状態です。これだけ登場人物が少ないのに科学の天才児が2人いるとか,ろくに人もいないようなド田舎の町にロケット工学の天才と,天才児2人がいるとか,ものすごい「天才出現率」です。

 でも,その天才君が作った「エクスポゾン自滅装置」が悲しくなるくらいショボいです。こんな装置で地球的規模の破壊が止められるのですから,いつものアメリカディザスター映画(たいていは原爆を落として問題解決)よりは安上がりで,環境に対する影響も少ないようです。

 ワシントンDCとニューヨークを壊滅させた,という説明がありますが,なぜかメーガン父の自宅だけはよけて通っているし,ウィル親子とメーガン親子だけはエクスポゾン放電(?)だけは当てないように配慮しています。さすがにここまで露骨だと,お笑い映画寸前です。


 というわけで,地球規模の危機を「半径500メートルの田舎町」だけで描いたヘッポコ映画でございました。木星の大赤斑消滅と絡めるアイディア自体は悪くないので,もう少し予算をかけてリメイクしてもよろしいかと存じます。

(2013/11/08)

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