新しい創傷治療:シャーク・ナイト

《シャーク・ナイト》★★(2011年,アメリカ)


 しょうこりもなく、またもやサメ・パニック映画です。私はこれまで傑作からクズまで数え切れないほど多くのサメ映画を見ていて、そろそろサメ映画もネタ切れだろうなと思っていましたが、今回のサメ映画はちょっぴり新機軸です。

 まず、登場するサメの種類が多いです。宣伝文句には「46種類のサメが登場」とありますが、さすがにそこまでサメは集められなかったようですが、6種類くらいは登場します。通常のサメ映画は1種類のサメしか登場しませんが、6種類もサメが見られるのは水族館チックでちょっと楽しいです。

 また、最近のサメ映画は「なぜか湖に人喰ザメが!」というのが多いですが、今回も舞台は湖です。でも、悪い奴らがある目的のためにサメを育てている,というこれまでにない(・・・多分)設定だったりします。これならちょっと期待できるかもしれません。

 ちなみに監督はデヴィッド・R・エリスさんで、あの秀作サスペンス映画《セルラー》とか,蛇がウジャウジャ登場する《スネーク・フライト》を作っています。今回の「多種類のサメ」は後者の「多種類の蛇」に通じるものを感じたりして,ちょっと期待しちゃいます。


 舞台は豊かな自然に囲まれた広大なクロスビー湖。美しい女子大生サラ(サラ・パクストン)は休暇を過ごすため、仲良し男女大学生5人を河畔の別荘に誘う。実はサラはこの町の生まれだったが、3年ぶりの帰郷だった。

 バカ騒ぎに興じる彼らだったが、水上スキーをしていた一人が突如、何かに襲われ、右腕を食いちぎられ、瀕死の重傷を負う。やがて彼らは、襲ってきたのがサメであることを知る。外部に連絡しようにも携帯電話は圏外のため、怪我人を乗せてボートを走らせるが、そのボートをサメは執拗に追いかけてきて、ついにボートを失ってしまい、彼らは脱出手段を失ってしまう。

 そこに、地元のダイバー(サラの元カレ)たちがやって来て、「船で携帯電話が使えるところまで行き、救助ヘリを呼べばいい」と提案するが、彼らの様子は何かおかしかった。二人がその船に乗り込んで町に戻ろうとするが、ダイバーたちは恐ろしい計画を立てていて・・・という映画です。


 クズ映画というほどひどくはないし、多種類(といっても6種類くらいだけど)のサメの姿はきれいに撮影されているし、この手の映画としてはストーリーもまとまっています。ただ、この手の映画に必要な「おバカパワー」がありません。小ぎれいにまとまりすぎている、という感じです。
 また、この手の映画に必須(?)のエロ的要素は皆無です。これだけ若い女優さんが出演しているのなら、途中に必ずシャワーシーンとかポロリシーンとかあるのが定石ですが、「もしかして映画監督はそういうシーンを入れ忘れたんじゃないの?」と不思議になるくらい、サービスシーンはありません。


 ネタバレ、というほどの内容の映画ではないのでネタバレすると、サメはダイバー君たちが湖(一応、塩水湖らしい)の一角を生け簀みたいにして飼っているものです。何で飼っているかというと、人間がサメを襲って喰う迫力ある映像を撮影して売るため・・・。要するに、スナッフ・ビデオってやつです。
 ダイバー君の説明によると、「テレビの自然派ドキュメンタリー番組でサメが一番人気だ。しかし、人間はより刺激の強い映像を見たがるようになり、どんなに金を払ってもいいから、本当に人間が喰われている様子を見たい、という連中が必ずいるんだ」ということのようです。そのために、サメの体に小型カメラを装着して、そのサメのいる生け簀にエサの人間を放り込んで、パクついている様子を撮影しているんだとか。
 そういう映像を金を払っても見たいという連中がいる、というのは事実なんでしょうが、多種類のサメを生け捕りにして輸送する手間、そのサメを生け簀で育てる手間、サメを補充する手間(いったん、湖に出してしまったら、サメは生け簀に戻ってきませんから、常にサメを捕まえてこないといけないはず)・・・などを考えると、とてもじゃないけど儲けにはならないような気がします。
 しかも,湖に次第に人喰いサメが増えてくるわけで「湖で行方不明者」もそれに比例して増加しますから、どうしたって騒ぎになり、商売としては必ず破綻するパターンですね。

 もちろん、サメ飼育の一味の保安官には、「バカ大学生のバカ騒ぎに振り回されるのはもううんざり。こんなバカはサメのエサにしちゃえ!」という理由付けもあるみたいで、それはそれなりに理解できますが、バカ大学生に復習するためにサメを生け簀で飼うんだ、という発想はさすがに無理ではないかと・・・。

 それと、高校時代のサラはダイバー君とつきあっていたけど、不慮の事故で彼の顔に傷を付けてしまい、サラは町を離れた、という説明があります。いかにもいかにもな過去ですが、それならなぜサラは3年ぶりに故郷に戻ったの、という疑問が生じます。普通なら、そういう因縁と曰く付きの元カレのいる町には行かないですよね。やはり、「病気のおばあちゃんが一目会いたいと呼び寄せた」とか、「親の遺産相続でいやでもその町に行かざるを得なくなった」とか、「復習の鬼となった元カレが騙して呼び寄せた」とか、そういう理由付けは必要だったと思います。


 あと、サメのスピードが無茶苦茶速すぎます。モーターボートに余裕で追いついちゃいます。このサメ君たち、ドーピングでもしているんでしょうか。あくまでも「自然界のサメ」という設定なんですから、ここまで速く泳がせる意味はなかった気がします。

 あと、片腕を食いちぎられた黒人青年が、恋人(彼女もサメに襲われて死んだ)の敵を討とうと銛を持って湖に入るシーンがあります。出血多量で危険な状態、という割には元気一杯で、片腕で銛一本で巨大シュモクザメを戦い見事に倒しちゃいます。これはさすがに、無理すぎだよ。シュモクザメはそんなにひ弱な生物じゃないぞ。もちろん、彼の気持ちはわからんでもないけど、数時間前に右腕を肘のところから食いちぎられたばかりですから、普通なら起き上がることすら不可能ではないかと・・・。


 というわけで、「携帯電話が圏外になる湖の小島に遊びに行くのなら、衛星電話は必ず持って行こうね」という教訓が得られた映画でした。

(2013/11/15)

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