《ミッシング・テープ Evil Things★★(2009年,アメリカ)


 いわゆるPOV(Point of View)によるサスペンス・ホラー映画ですが,80分間が異様に長く感じられますよ。つまらない意味のないシーンが延々と続き,肝心の事件がなかなか起きないからです。不要なシーンを削除したら15分映画になりそうです。その,ラスト15分でも襲ってきた敵は誰なのか,なぜこいつが襲ってきたのかは最後まで明かされないので,ものすごく消化不良のまま終わってしまいます。不気味な雰囲気は十分に伝わってくるのですが,それ以上でもそれ以下でもないんですね。

 あと,そろそろPOVは止めて欲しいなぁ,と。もう数え切れないほどこの形式の映画は見たけど,手持ちビデオを回し続ける不自然さばかり目立つんだよね。もちろん,怪物に襲われてもシリアル・キラーに襲われても爆発事故が起きてもビデオを回し続けないと映像がなくなり,そこで映画が終わっちゃうから仕方ないんですが,もうほとんど「木口小平のラッパ」状態になってしまい,見ている方が辛くなります。POVにしなければもっと自然な映画になるのに・・・ってね。

 また,「ビデオを撮影する登場人物は最後まで死なない」というのも最初の時点でわかってしまうため,これもサスペンス映画なのに緊張感を削ぐことになります。

 もちろん,POVは作り手側からするとメリットはたくさんあります。家庭用ハンディビデオカメラでも撮影できるし,画質が多少悪くても「POVだからこんなもんか」と大目に見てくれるからです。でも,映画の観客が求めているのは「POVだけど面白い映画」であって,「面白くないけどPOVで安上がりに作れた映画」ではないのです。この映画の作り手は,そのあたりがまるっきりわかっていません。だからこの映画は駄作,凡作なのです。


 一応,ストーリーを紹介すると,こんな感じ。

 2009年1月,5人のニューヨークに住む大学生が,週末を過ごすために山奥の別荘に向かい,そこで消息を絶った。その数ヶ月後,FBIに差出人不明のビデオテープが送られてくるが,そこには5人の姿が写っていた。

 大学生のレオたち5人(男子2人,女子3人)は,ミリアムの21歳の誕生日を祝うため,雪山の別荘に向かっていた。その別荘はミリアムのおばが所有する豪華なもので,週末を楽しく過ごす予定だった。

 しかし,田舎道に入ったところで一台のバンが執拗に煽ってきたり追い抜いては止まったりと嫌がらせをしてくる。なんとかその車が脇道に入り,5人は別荘に到着。翌日,別荘近くの探険に行くが,危うく迷いかけるがなんとか別荘にたどり着くことができる。

 その夜,,ドアをノックする音が聞こえ,外に出てみるとVHSビデオが置かれていた。それを再生した見たところ,あの車から撮影された映像が写っていて,それどころかこの別荘に入り込んで撮影した映像まで記録されていた。誰かがこの別荘に入り込んでいる! そして突然,明かりが消えたかと思うと・・・という映画でございます。


 とにかく,事件がなかなか起こりません。80分ちょっとの映画なのに60分を過ぎでもかったるい映像が延々と続きます。もうこのまま終わっちゃうんじゃないの,と心配になるくらいです。もちろん,「執拗に追いかけてくる謎のバン」は不気味なんですが,それが再度登場するのはラストの15分で,途中ではストーリー展開に絡んでこないので,見ている方も「あの黒いバンは結局関係ないのね」と思っちゃう始末です。また,雪山で迷うシーンもありますが,ここも単に迷うだけなんで,ストーリーとは全く無関係のエピソードです。時間稼ぎでしかありません。

 では,残りの時間は何が映されるかというと,5人のダラダラした様子だけ。登場人物たちは「楽しんでいる演技」をしていますが,観ている方からすると「それで君たちは本当に楽しいの?」という感じです。しかも,5人の人間関係もよくわからないし(一組のカップルがいるのがわかる程度),どの程度の仲良しグループなのかも不明です。途中で男子学生の入浴シーンがありますが,そんなもの見せられたって迷惑です。普通なら女子学生のシャワーシーンを挿入するのがホラー映画,サスペンス映画の常道ですが,何しろこの映画はPOVですから,そういうシーンを撮影するわけにもいきません。だから,ウダウダと話をするシーンで時間稼ぎをするしかなくなったのですね。


 そして,60分過ぎに襲撃されますが,学生たちがギャーギャー騒ぐシーンだけで,肝心の「何が起きているのか」は全くわかりません。これもPOV映画の限界ですね。

 しかも,襲撃側がドアのところに置いたビデオによると,彼らがニューヨークを出発した時から撮影をしているようなんですよ。であれば,襲ってきたのはニューヨークの人間ということになりますが,そこらの説明も一切なし。そういうわけで,「いきなり,理由もなしに,5人の学生が襲われました」となってしまい,観客は置いてけぼり状態です。せめて,ニューヨークでトラブルがあったとか,悪霊に祟られたとか,そういう説明をして欲しかったです。


 一番不自然なのは,2009年の映画なのに,ビデオカメラが肩に掛ける大型タイプであること,そしてVHSビデオが登場することです。VHSなんて久しぶりに見ましたよ。というより,別荘によくVHSビデオテープ・プレーヤーが置いてあったな。ここは骨董店か?

 ちなみに,3人も女子学生が登場するのに,美人が一人もいないというのもなんだかなぁ・。特に,21歳の誕生日を迎えたという設定のミリアムちゃんが老け顔というか,おばちゃん顔なのは,見ていて気の毒になります。しかも歯列矯正中だし・・・。なんでこんな人を出演させたんでしょうか。


 というわけで,POV映画ならなんでも大好き,という人にだけオススメするクズ映画でした。

(2013/12/20)

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