《ハウス》★★(2008年,アメリカ)


 全米を震撼させ恐怖に陥れたベストセラー本「HOUSE」を《X-MEN》のプロデューサーが映像化しました・・・というのがウリ文句のスピリチュアル系ホラー映画ですが,はっきり言って,なんでこの程度の内容で「全米が震撼」したのか,よくわからんですなぁ。もちろん,原作の小説はすごく怖いのかもしれないし,ラストのところは原作と大きく異なっているという話なので何とも言えませんが,少なくともこの映画を見て震え上がるのは,余程のホラー映画初心者じゃないかと思います。

 もしかしたら,アメリカ人って悪魔が出てきただけで震え上がっちゃうのかな? 天使とか悪魔とか,本気で信じている成人が多い特異な国のようですから・・・。

 それと,物語としてこの映画がどの方向に向かっているのか,後半に差し掛かってもなかなかわからないのも,見ていてイライラしてきます。オカルト映画なのか,田舎の古ぼけたホテルに巣食うキチ●イたちの物語なのか,悪霊系映画なのか・・・というような,映画の基本路線が見ていてもわからないのです。だから,緊迫した映像が連続して目が話せないんだけど,隔靴掻痒というか,ルールの分からないゲームを延々と見せられているようなと言うか,そういう感じなんですね。

 あと,基本的な説明もすっ飛ばしているところが多く(もしかしたら,原作にはしっかりと書かれているのかな?),最後まで見ても回収されない謎がいくつも残ります。これもイライラ感を募らせる原因になっています。そこらをきちんとしてくれたら,もうちょっと高評価の映画になると想うんだけどね。


 舞台はアメリカのアラバマのどっかにあるド田舎の町。

 作家のジャックと歌手のステファニーの夫婦は,二人で一緒に心理カウンセリングを受けるために車を走らせていた。しかし,途中で道に迷い,挙句の果てに道においてあった農機具(?)を踏み,車のタイヤがパンクし,立ち往生する。見ると,もう一台の車も同じ目にあったらしく,乗り捨てられていた。もちろん,携帯電話は圏外だ。二人はどこかで電話を借りようと雨の中を歩き,古ぼけたホテルを発見し,中に入る。そのホテルには既に一組のカップル(ランディとレスリー)がいて,どうやらさっきの道端に乗り捨てられていた車に乗っていたらしい。

 すると突然,このホテルの経営者だと名乗る不気味な老婦人ベティと彼女の息子のピートが登場。どう見ても怪しい二人だ。そしてこの頃から,ステファニーに赤い服の子どもが見え始める。ジャックは電話を借りようとするが電話は通じない。

 夕食が始まり,ベティの長男スチュワートが加わるが,彼の暴力的な態度と意味不明の言動にジャックが切れ,ホテルの外に出ようとするが,外にはライフルを持っている男が立ちはだかっていた。ベティは「そいつはブリキ男よ。私たちは殺そうとしている」と叫び,ホテルの扉を閉ざしてたてこもる。

 そして,ジャックたち4人にベティ家の3人が牙を向き,武器を持たない4人はバラバラになってホテルの中を逃げ惑うが,彼らの過去と犯した罪が次第に明らかになっていく。ジャックとステファニーは不注意から一人娘のメリッサを溺死させてしまった過去があり,ランディはスパルタ教育の父親からクズ扱いされていたし,レスリーは叔父から性的虐待を受けていた。そして,彼らの罪を責め立てる声が彼らを追い詰めていき,黒幕の悪魔が姿を表し・・・という映画です。


 こういう「一見,オカルトホラー映画みたいだけど,実はスピリチュアルなダーク・ファンタジー映画なんだよ」系の映画に整合性を求めるほうが間違っているかもしれないけど,最後まで見ても「だからこの映画は何が言いたかった映画なの? 何を伝えたくて作った映画なの?」という,一番大事な部分が意味不明な点が辛いです。ジャックとステファニーの夫婦は娘メリッサの魂が守ってくれていたから大丈夫だけど,ランディとレスリーにはそういう存在がなかったからダメだったのね,と言いたいのか,過去に罪を犯した人は悔い改めないと悪魔に付け込まれちゃうよ,と言いたいのか,あるいは全く別のことが言いたかったのか,どれなんでしょうか?
 それと,ジャック夫婦の場合(仕事人間ジャックと不注意人間ステファニーがメリッサを事故死させた)と,ランディとレスリーのカップルの場合(彼らに殺された人間の方に明らかに悪い)とでは,同一に扱うのは無理じゃないかと思いますね。だって,メリッサには非はないけど,ランディの父親とレスリーの叔父には非がありますからね。これは最後まで違和感を覚えました。

 あと,重要な役割をする「空き缶」に書かれていた3つの文章ですが,キリスト教の素養がない人間からすると「それって何?」ってなもんです。途中から登場する謎の少女の「光は闇を破壊する」という言葉も,あまりにもキリスト教そのままで,これで事件解決と言われても困っちゃいます。

 よくわからないといえば,このホテルって結局何だったのでしょうか? ベティ一家と保安官の関係もよくわからんぞ。謎の少女がメリッサと別人である理由は何? そもそもこの映画(そして原作の小説)のタイトルが「House」である理由は何? 悪魔さんの「This is my House!」というセリフにあるだと思うけど,悪魔にとってhouseって,そんなに重要なものなの?


 というわけで,「守護霊がいれば悪魔なんて怖くないわ」と本気で信じている人だけにオススメしちゃう映画でした。

(2014/01/17)

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