《レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー Reykjavik Whale Watching Massacre★★★(2009年,アイスランド)


 ホラー映画ファンなら,この英語のタイトルを見ただけでピンとくるはずです。そうです,《悪魔のいけにえ The Texas Chainsaw Massacre (1974)》への一種のオマージュのスプラッター系ホラー映画です。しかもアイスランド(人口32万弱・・・新宿区の人口と同じくらいですね)で初めて作られた本格的映画らしいです。おまけに,あの裕木奈江さんが戦闘力の高い悪女役で出演しています。ヒロインではありませんが,完全にヒロインを食っています。これだけでも見る価値があるかもしれません。

 映画としては穴だらけです。ストーリーはなんだかドタバタしているし,意味不明のシーンやエピソードもあります。スプラッター・ホラーとしても迫力不足です。日本語がたどたどしい日本人夫婦も登場するし,人種差別ネタも多いです。

 しかし,「捕鯨反対の連中とかグリーンピースとかシー・シェパードとか,みんなまとめて皆殺しだ!」という,それまで捕鯨で食べていた人たちの心の声,心の叫びを代弁する勇気は清々しいくらいです。よくぞこんなアブナイ映画を作ったものだと,ちょっと感動したくらいです。

 というわけで,「頭のいいクジラを食べるなんて許せないわ」の人たちはこの映画は絶対に見てはいけません。それ以外の「シー・シェパードの連中,うぜえ」と思っている人だけご覧下さい。


 映画はこんな感じ。

 アイスランドは小国ながら,かつては世界第3位の捕鯨量を誇っていた捕鯨大国だった。しかし,圧倒的多数を締める反捕鯨国の前で捕鯨は諦めざるを得ず,捕鯨業者たちは捕鯨船をホエール・ウォッチング用の観光船に仕立てて,観光客を乗せて糊口をしのぐ毎日だった。

 そんな船にに数組の乗客が乗り合わせる。アネット(ピーラ・ヴィターラ)ら二人の若い女性,裕福な日本人夫婦とメイド(裕木奈江),ドイツ熟女3人組,黒人一人,そして絶えず酔っ払っているフランス男だ。しかし,いつもの餌場でクジラは見つからず,船を走らせている最中に,フランス男の身勝手な行動から船長(ガンナー・ハンセン)が瀕死の重傷を負ってしまう。それを見たもう一人の乗組員は非常用ボートに乗り込み,さっさと逃げ出してしまう。

 客だけが残されて船は漂流するが,運よく捕鯨船が近づいてきて,3人(母親,兄と弟)が船に乗り込んでくる。これで助かったと思ったその時,弟が乗客一人に近づき,隠し持っていた凶器を脳天めがけて振り下ろした。彼らは反捕鯨国に職を失われた捕鯨漁師で,ホエール・ウォッチングの客を皆殺しにしようとする基地外一家だった・・・という映画でございます。


 まぁ,ストーリーはこれ以上でもこれ以下でもないので,細かいところに突っ込むのは野暮というものでしょう。気がついた点を箇条書きにします。

 裕木奈江さん,すごくいいです。日本人夫婦のメイドという役ですが,ありあわせのもので火炎瓶(?)を作り,それを雇い主の奥様に持たせて基地外母さんの前に押し出して殺させ,基地外母さんも焼き殺します。戦闘力も高いし頭も切れます。フランス野郎と一緒に逃げるシーンでも,「イエローモンキーのくせに威張るな」という男の手を冷酷に踏んづけてヒイヒイ言わすし,最後にはまんまと大金持ちの奥様になりすまします。見事なまでの悪女っぷりです。
 ちなみに,この映画の続編が企画されていて,そちらでは裕木さんがヒロイン役に決まっているんだとか。すごいぞ,裕木奈江! 頑張れ,裕木奈江!

 アネット役のピーラ・ヴィターラさん,かわゆい美人さんです。しかも,途中で基地外弟に捕まってレイプされそうになるシーンではオッパイも披露しています(大きくないけど)。血まみれシーンもきちんとこなしていて,女優根性があります。役の上では「結婚式間近で彼が事故で死んでしまった。彼とは新婚旅行でホエール・ウォッチングする予定だった」という設定で,最後の救命ボートのシーンで「私はただクジラが見たかっただけなのに」というセリフはちょっと泣かせます。最後は海に放り出されますが,無事に助かって欲しいです。

 もう一人の若い女性はムチャクチャ性格が悪いです(・・・というか,この映画の登場人物はほとんど性格が悪い)。こいつは助からなくていいと心底思っていたら,最後はクジラがとどめを刺してくれました。クジラ君,グッジョブ!!


 日本語がたどたどしい日本人夫婦は笑えるぞ。特に旦那の方の日本語はかなり変(ちなみに演じているのは日系ブラジル人俳優さん)。しかもガチガチの男尊女卑で,今どきの日本にこんな奴はいないだろう,と言う感じがします。しかも,途中で韓国ネタが入ってちょっと危ないです。ちなみにこいつは,海に逃げたところを基地外兄に捕鯨用の銛を打ち込まれちゃってお陀仏です。この死に方はなかなかグッドです。

 ドイツ人の三人オババもすごいぞ。黒人男性を見て「愛人用にはいいけど」みたいな発言はするわ,日本人夫に変な言葉は教えるわと,これまた「早く死んで欲しいキャラ」満開です。


 ちなみに,映画の冒頭では捕鯨船がクジラを仕留め,船内で解体する様子が克明に流れ,シー・シェパードに喧嘩を売りまくっています。「クジラは野生動物の一つだ。野生動物を捕まえて食べるのがイカンというのなら,野生の魚を網で捕ったり,野生の鹿や鳥を銃で撃ったり,中国でクマやハクビシンを食べるのにも反対しろよ!」ということなんでしょうね。

 生物種は一度滅んだらそれっきりです。だから,野生動物は保護が必要です。人間がここまで増えてしまった以上,本来の生息域が狭められている野生動物はどんどん数を減らし,絶滅してしまいますからね。その意味で「野生動物を保護しましょう」というのは正しいし,「野生動物を食べるのでなく家畜を食べましょう」とすべきです。
 そこらにたくさんにいるから大丈夫だよね,と野生動物を食料や狩りの対象にすると,リョコウバトやミヤコキクガシラコウモリやニホンカワウソやニホンオオカミのように,絶滅します。北海道でニシンが激減したのもウナギがとれなくなったのも理由は同じです。

 イルカやクジラは野生動物だから保護しましょう,というのは正しいですが,イルカやクジラは可愛くて頭がいいから殺しちゃダメ,と言うのは間違いです。

(2014/02/11)

Top Page