『謎解き・海洋と大気の物理』(保坂直紀,講談社ブルーバックス)

 2003年の夏は世界中で異常気象だった。日本では東日本は梅雨が明けないまま秋に突入し,冷夏と日照不足だった。そして,ヨーロッパは猛烈な猛暑(オイオイ・・・「猛」の字が重なっているぞ)で,スイスでは最高気温が40度を超えてアルプスの氷河が溶け出し,フランスでは街路樹が熱のために裂けて大きな枝が落下した。
 そして,この「異常気象」は世界各地で被害を及ぼしている。これはどう考えても尋常ではない。

 こういう時は,「異常でない気象」とは本来どういうものなのかが知りたくなる・・・というわけで読んだのが,本書。

 面白かったし,勉強になったぞ。私が個人的に長年の疑問だった「なぜ平坦な海の中に海流が生じるのか?」「大気の中に圧力の差が生じるのはなぜか?」「高気圧と低気圧って,そもそも何で生じるの?」などの疑問に,明確に答え,わかりやすく説明してくれている。この手腕はすごいと思う。
 「難しいことを難しく説明」するのは易しいが,「難しいことをわかりやすく説明」するのは容易なことではない。この本はそれを軽々とクリアしている。

 そして何より,読んでいるだけで発想が雄大になる。読むだけで,地球サイズで物事を考えるのを手助けしてくれる。

(2003/08/15)

 

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