ジャズが弾きたくなったクラシックピアノ弾きのための楽譜ガイド

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【ジャズ ベスト・ヒット10 上級編】
【ステージで弾きたいジャズ All The Things You Are】
【ハイ・クラス・ジャズ・ピアノ スタンダード名曲集】
【カフェで流れるモダン・ジャズ・ピアノ曲集】
【プロフェッショナル・ジャズ・ピアノ 中島徹】
【プロフェッショナル・ジャズ・ピアノ 松本圭司】
【ジャズ・ピアノ・ファン Vol.2 藤井英一】
【スウィングベストヒット10 上級編】


 個人的なことだが,私はピアノ演奏がほぼ唯一の趣味である。上手いか下手かで分けると,多分間違いなく上手な方に入ると思う。一応,高校2年生まではきちんと先生について練習していて,最後の1年間はショパンのエチュードの作品25全曲,バラード,ラヴェルの水の戯れがレッスン曲目だったといえば,どのくらいの腕だったか(・・・もちろん,過去形だけどね)はわかる人はわかると思う。現在,50歳を過ぎているが,ホロヴィッツの「星条旗」を弾こうとするくらいのピアノ馬鹿状態は維持している。
 で,現在もそこそこ弾けるんだけど,外来ではジャズピアノを流していることもあり,クールにジャズを弾けたら格好いいよね,なんて考えたりするのだ。こう思っている「ジャズも弾いてみたいクラシックピアノ弾き」って結構いるような気がするがどうだろうか。

 で,楽譜は読めるのでジャズピアノの楽譜を買って独学で,ということになるのだが,これがなかなか大変だ。楽器屋さんに行ってジャズピアノの楽譜コーナーを見ても,やけに簡単そうなものばかり並んでいるからだ。本当はそういうあたりから始めればいいのだろうが,何しろこちとら,ショパン・エチュードをバリバリ弾いてたもんね,という変なプライドがあるから,四分音符ばかり並んでいる楽譜なんて弾きたくないのである。楽譜は音符が詰まっているほど,音符が多いほど価値があると思っているんだもの。
 おまけに,多くのジャズの楽譜は,左手は和声コードと二分音符が書かれているだけのものが多い。本当は,そのコードを見ながら和音を弾くんだけど,何しろクラシックピアノ弾きはそういう教育を受けていないもんだから,数字が書かれていても和音が弾けないのである。

 では,左手の和音がしっかりと書かれていて,右手がちょっと難しそうな楽譜があったら,楽譜どおりに弾けばジャズになるかというと,そうは問屋が卸さない。ジャズ独特にスウィング感は楽譜には書かれていないからだ。つまり,楽譜どおりに弾いてもジャズにはならない。やはり,ジャズピアノを弾くにはそれなりの努力と勉強は必要なのである。ま,当たり前のことなんだけどね。


 というわけで,楽譜で独学勉強ジャズピアノ弾きまがい(=私のこと)が,経験から学んだこと,購入した楽譜の内容について雑感をまとめてみる。

【全般的な注意点など】

 以下,私が持っている楽譜で弾いたことがある曲についてちょっと紹介。

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【上級 ジャズ ベスト・ヒット10】
多数のアレンジャーによる曲集で,最初の2ページはテーマ,そのあと2〜4ページのアドリブ,そのあと最初に戻ってコーダ,という形式の曲が多い。あまり凝ったアレンジがなく,「ピアノが弾けるジャズ初心者」にはとっつきやすい曲集といえる。

  1. 枯葉
    • 結構速いテンポで演奏するジャズ版の「枯葉」
    • 和声的に変に凝ったところがないため,とても弾きやすい。
    • アドリブ部分はそれなりにテンポが速いが,左手の和音の入るタイミングさえ覚えてしまえば,ジャズっぽく弾けるはず。
  2. 酒とバラの日々
    • アドリブはテンポは速めだが弾きやすい。
  3. ワルツ・フォー・デビィ
    • ビル・エヴァンスのゆっくりしたワルツ。この部分は変音記号さえきちんと読んでおけば,初見でも弾けるはず。
    • 4拍子のアドリブ部分は部分的に弾きにくいところがあり,きちんとした譜読みをして指使いを書き込む必要がある。
  4. フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン
    • テーマ部分はボサノバのリズムであり,テンポも速くないのだが,これが結構弾きにくい。ゆっくり目のテンポから練習してリズム感をつかむしかない。
    • アドリブ部分は弾きやすく,速い三連符の部分は弾いていて楽しい。
  5. マイ・ファニー・ヴァレンタイン
    • ゆったりしたバラードで,アドリブ部分は右手の16分音符が連続するため,クラシックピアノ弾きには弾きやすいと思う。部分的に速いパッセージがあるので,そこは練習が必要。
  6. 二人でお茶を
    • お気楽ムードで弾ける楽しい曲。アドリブの部分も左手が一定のリズムなので,初見でもそれなりに弾ける。
    • シンプルなアレンジだが,余裕ができたら色々遊ぶのに最適の一曲だろう。
  7. 虹のかなたに
    • 超有名曲によるゆっくりしたバラード。
    • アドリブ部分も含め,クラシックピアノ弾きには非常に弾きやすく,スウィングするような弾き方さえマスターしたら,結構ジャズになる一曲である。
  8. 時のたつまま
    • これもゆっくりしたバラードで,前曲同様,弾きやすい。
  9. 煙が目にしみる
    • 曲はゆっくりしているのだが和声的にかなり凝っている部分が多く,初見だとちょっと辛いかも。特に,変ホ長調からロ長調にいきなり転調する部分は,しっかりとした譜読みが必要。
  10. バードランドの子守唄
    • アップテンポの楽しい曲。アドリブのところは,左手の入るタイミングさえ覚えてしまえば,指が勝手に弾いていくような感じで演奏でき,気持ちがいい。

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【ステージで弾きたいジャズ All The Things You Are】
 これも多数のアレンジャーによる曲集。演奏難度はかなり高いが,演奏効果もかなり高い。挑戦する価値がある曲集だと思う。

  1. オール・ザ・シングス・ユー・アー
    • かなり凝ったジャズワルツのアレンジ。
    • アドリブ部分は結構難しく,途中にある16分音符の連続は不規則に音が並んでいるため,スムーズに弾けるようになるにはかなり練習が必要。
    • 非常に演奏効果が高く,かつ美しいワルツである。
  2. 星に願いを
    • 冒頭部分はゆったりとしたバラードで,とても美しい。
    • そのあと3拍子の軽快なジャズワルツになるが,演奏は難しくない。
    • 最後はちょっと壮大な感じになり,派手に鳴らせて楽しい。
  3. あなたと夜と音楽と
    • テーマの部分はテンポは速めだが弾きやすい。
    • アドリブのところも弾きにくくなく,快適なテンポで進み,弾いていて楽しい。
  4. ムーン・リバー
    • ジャズというよりはイージーリスニング系のアレンジ。肩の凝らないきれいなアレンジで,途中で注音域にメロディーが移るところは美しいが,弾き応えという点ではちょっとかな?
  5. マイ・フェイバリット・シングス
    • アレンジャーは星出尚志さんという方で,実はピアノサイトを作っていたころのメル友の一人。作曲の勉強もきちんとされている方のアレンジで,まさに演奏会向きのジャズワルツとなっている。演奏効果もいい。
    • 左手のリズムがとりにくい部分が連続し,ここはかなり弾きにくく,それ以外の部分も全体に演奏難度は高い。
    • さりげなく左手にメロディーが移ったりする部分があり,一般的なジャズのアレンジとは一味もふた味も違っている。
  6. バードランドの子守歌
    • アップテンポの軽快な曲。
    • アドリブ部分は4ページと長く,速い音符が連続するところが多く,それなりに練習しないと弾けないし,演奏は結構難しい。
    • 演奏効果は高いので,練習して弾けるようになったときの爽快感は格別。
  7. 明るい街角で
    • ラグタイム風の軽快な曲。
    • ラグタイム風の左手伴奏はアドリブ部分もずっと続き,右手もそれほど難しくない。
    • スウィングする感じさえつかめれば,気持ちよく弾けると思う。
  8. サテン・ドール
    • テーマ部分の右手は,密集した和音が連続するため,ちょっと弾きにくい。
    • もともとのテンポがあまり速くないこともあり,アドリブ部分も演奏は難しくない。
    • 最後にハ長調から不意に変二長調に転調してコーダに入るが,ちょっと意表をつかれて楽しい。
  9. イマジン
    • テーマ部分はレノンのアルバムのピアノパートをちょっと変えた感じ。
    • アドリブ部分はそれなりに面白いが,イマジンの曲調がジャズアレンジにちょっと合っていないかも。
  10. イパネマの娘
    • もちろんボサノバの定番中の定番。テーマ部分は単純な楽譜で音もそれほど多くないのに,なぜかとても弾きにくい。左手のボサノバのリズムとメロディーの絡み方にちょっと癖があり,クラシックしか弾いたことがないピアノ弾きには,結構難しいかも。
    • アドリブの部分はとてもきれいで弾きやすい。リズムがちょっと取りにくい部分はあるが。
  11. メリー・リトル・クリスマス
    • ゆっくりとしたバラード。とてもきれいな曲であり,きれいなアレンジだ。
    • 右手がちょっと速い部分があるが,基本的には弾きやすい。

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【ハイ・クラス・ジャズ・ピアノ スタンダード名曲集】(納谷嘉彦,CD付き)
アレンジャー自身による演奏が入っていてとても参考になる。全体的に難易度は高いが,演奏効果も高く,苦労して練習すると報われる,という感じの曲が多い。

  1. Take The "A" Train
  2. My One And Only Love
  3. Night And Days
  4. Spring Can Really Hang You Up The Most
  5. My Funny Valentine
  6. Satin Doll
  7. Fly Me To The Moon
  8. Body And Soul
  9. Someday My Prince Will Come
  10. Summertime
  11. Autumn Leaves
  12. Moanin'
  13. Stardust


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【カフェで流れるモダン・ジャズ・ピアノ曲集】(中島久恵編曲)
楽譜のタイトルを見ると,シャンソンを素材にした簡単な曲かな,と思ってしまうが,要求される技術の水準は高く,楽譜の通りに演奏するにはちょっと技量が必要。また,密集した和音が多く,譜読みもちょっと大変。
また,ジャズの楽譜には珍しく,きちんと指使いが書かれているし,強弱記号や表情記号もきちんと書かれているのがありがたい。特に,右手のパッセージのアクセントはジャズっぽく弾く(聴かせる)ためには必須のものだが,どういう風に弾けばいいのかがよくわかる。
ちなみに,同じ編曲者による【 ピアノソロ ジャズバーで奏でるモダンジャズピアノ曲集 】という曲集も売られているが,内容は全く同じなので間違えない(騙されない?)ように。さらに,全く内容の曲集がもう一冊あることを書店で確認しているが,書名を記録するのを忘れてしまった。

  1. Take Five
    • 非常に有名な変拍子ジャズだが,アドリブの部分には速いパッセージがちりばめられていて,弾いていて楽しい。
  2. Cherokee
    • テーマの部分は二分音符と全音符しか並んでいないため,楽譜を最初に見ると「易しすぎて弾く気になれない」と思うが,実は「二分音符=120」というスピードなので,その後のアドリブの八分音符は結構速く弾かなければいけないし,その中で個々の音にアクセントをつけるのだから,弾きこなすにはそれなりの腕が必要。
  3. Left Alone
  4. Maiden Voyage
  5. On Green Dolphin Street
  6. Waltz for Debby
  7. Love Is Here To Stay
  8. Blue Bossa
  9. Cleopatora's Dream
  10. My Favorite Things
    • 速いテンポのジャズワルツのため,アドリブでもそのテンポを維持しようとすると結構大変。
    • しかも,左手が活躍する部分が多く,しかも跳躍している箇所があるので,いきなり初見で弾くのはまず無理だろう。
    • でも,アレンジ自体は洒落ていてきれいなため,弾く価値あり。
  11. Autumn Leaves
    • いかにもカフェ,という感じで始まるが,和声的に凝った部分があり,アドリブ部分は結構弾きにくいと思う。テクニカルにも弾きにくいパッセージがところどころにある。
  12. St. Thomas
    • メロディーはよく知られている軽快なもの。
    • アドリブ部分は左手の7度の和音が1拍目と3拍目にあり,それに乗って右手が動く形式で,テンポも速くなく,右手のパッセージもあまり凝っていないため,とっつきやすいと思う。
  13. 'Round Midnight
  14. I Remenber Clifford
  15. C Jam Blues
    • 軽快で楽しいデューク・エリントンの曲。
    • テンポは速くなく,右手のパッセージにも複雑なところがなく,和声も平易のため,弾きやすい曲だ。ジャズのリズム感をつかむために,最初に練習するのにいい曲かもしれない。

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【プロフェッショナル・ジャズ・ピアノ 中島徹 (CD付き)】
アレンジャー自身の演奏CDが付録していて,演奏もなかなかよく,これだけでも楽しめる。16ビートバラード系というのだろうか,16分音符と付点音符で画面が埋め尽くされている感じの曲が多いが,楽譜を見ながら演奏を聞くと,なるほど,こうやって弾くとこんな感じになるのか,というのがよくわかる。。

  1. What A Wonderful World
    • ルイ・アームストロングのために書かれた名曲。メロディーを聴くと誰しも,あのアームストロングのしわがれた味のある歌声を思い出すはず。
    • 演奏効果もあるし,弾いていてとても楽しい感動的なアレンジだと思う。何より,格好いいアレンジだ。
    • 和声にちょっと癖がありきちんと譜読みをする必要がある。
  2. All The Things You Are
  3. Night And Day
    • これも16ビート系のアレンジ。楽譜はとても単純なのに,編曲者の演奏を聞くと,楽譜から想像できない豊穣さがある。
    • これも格好いいアレンジだ。
  4. Someone To Watch Over Me
  5. Bess, You Is My Woman Now
  6. The Girl From Ipanema
  7. Dream
  8. Everything Happens To Me
  9. Fly Me To The Moon
  10. Three Views Of A Secret
  11. I'm Gettin Sentimental Over You
  12. Warm Valley

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【プロフェッショナル・ジャズ・ピアノ 松本圭司(CD付き)】
アレンジャーの演奏するCDがついているが,この演奏がスピード感と心地よい緊張感に満ちていてとてもいい。こういう演奏,好きである。
オリジナル曲3曲とスタンダードナンバーが選ばれているが,かなり難しい曲が多く,アレンジャーと同じテンポで演奏するにはかなりの技量が必要。これまで紹介した曲集の中で一二を争う難しさだろう。アドリブ部分が5ページにわたる曲もあり本格的だ。

  1. Smile
    • テーマの部分は比較的シンプルだが,アドリブ部分はかなり手が込んでいる感じ。
    • 右手のパッセージは速く,音型も複雑な部分が多いので,かなり本気で練習しないとアレンジャーのようには弾けないようだ。
  2. Autumn Leaves
    • かなりテンポの速いアレンジになっていて,一言で言えばすごく格好いい。
    • 短い前奏の後にいきなりアドリブに入り,これが5ページにわたって展開され,それからテーマが提示されるという構成をとっている。クラシックの曲でも,最初に変奏があって,一番最後に主題が始めて提示される変奏曲があるが,それと同じである。
    • テクニカルには結構難しい。
  3. Allice In Wonderland
  4. For Sentimental Reason
  5. Belfast Song
  6. Stella By Starlight
  7. I'll Remember April
  8. Alfie
  9. The Ring
  10. Someday My Prince Will Come
  11. Playback
  12. On A Clear Day
  13. Somoke Gets In Your Eyes
  14. Over The Rainbow

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【ジャズ・ピアノ・ファン Vol.2 藤井英一】
 1980年出版と古い楽譜なので入手はまず不可能だろうが,アレンジャーの藤井英一さんの楽譜が素晴らしいので紹介する。この方は多くの楽譜を出版していて,現在でもかなりの数の曲集が店頭に並んでいるので参考になればと思う(下記参照)。
 彼のアレンジはとても華やかでしかも演奏しやすいのが特徴だと思う。なぜ弾き易いかというと,音階やアルペジオ,半音階などの基本的な技術がそのまま使われていることが多く,ツェルニーを弾いているような感じで指になじむパッセージだからだ。だから,ツェルニー40番がきちんと弾ける人には楽勝だと思う。
 また,和声も基本に忠実で奇異に走らず,エキセントリックな部分がないため,古きよきジャズの王道という雰囲気を漂わせ,弾いていて心安らぐ感じになり(これは,聞いている人にとっても同じだろう),曲想も掴みやすい。つまり,尖がったところはないが,安心して弾ける,安心して聴けるジャズだと思う。老舗が長年にわたって築き上げた味,ってやつだ。このため,ピアノの基礎ができている人にとっては,ジャズ独特のスウィング感,リズム感だけに専念して勉強すればそれなりに弾けるようになり,コストパフォーマンスが高いといえる。
 ここで紹介する曲集の特徴は8ページ以上の長い曲ばかりだという点にある。主題のあとにアドリブ,そして最後に主題に戻るというオーソドックスな構成の曲ばかりだが,アドリブ部分が長く,5つ以上の変奏が続く曲もあって演奏時間は5分以上に及び,堂々たるコンサート用のアレンジである。
 楽譜もきちんと書かれていて,変音記号の記載漏れはほとんどないようだ。また,ピアノの全音域使って演奏するような曲が多く,華麗な演奏効果を生み出している。そして,変ホ長調,変二長調といった弾きやすい調性の曲が多いのも特徴。
 ゆったりしたバラード調のアレンジと,テンポの速い曲が交互に並んでいるので,まず最初はジャズに慣れるという意味からもゆっくりした曲を練習し,それが弾けるようになったら速い曲に挑戦するようにしたほうがいいようだ。
 とはいっても,きちんと演奏するなら,ツェルニー40番程度の技術は要求されるので,ちょっとピアノが弾けるんだけど,というレベルの人にはかなりハードルが高いと思う。
 このような楽譜だが,どうしてもご覧になりたいという方がいらっしゃったらメールでご連絡ください。私の詳細(?)指使い付きの楽譜をご覧に入れます。

  1. Ovewr The Rainbow
    • 私のジャズ初挑戦の曲であり,今でもよく弾いている。
    • ゆったりしたテンポ,正確に刻む左手の伴奏に乗って,右手が華やかな即興を繰り広げるもの。和声の動きを覚え,右手の細かいパッセージのきちんと練習すれば,さほど苦労せずに弾けるようになるはず。
    • 8ページとちょっと長い。
  2. Autumn Leaves
    • これは現在でも,私が得意としている曲の一つで,とても格好いいし,演奏効果も派手だし,弾いていて気持ちがいい。ちなみに楽譜は10ページに及び,長大なアドリブが楽しめる。超お勧めの一曲。
    • 非常にテンポが速く,「四分音符=168」という速度指定があるが,これをインテンポで弾ききるには,かなり練習しないとダメだろう。
    • 左手の伴奏が常に2拍目の裏と4拍目の裏に入り,1拍目の頭にくることがめったにないため,この手のジャズのリズムに慣れるまでは苦労した。
    • 一旦覚えてしまえば,手が勝手に動いていくようなアレンジであり,華麗な演奏が楽しめる逸品である。
  3. Laura
    • ゆったりしたテンポの曲で,基本的な曲の作り方は同じ曲集の第1曲目とほとんど同じ。演奏の難易度も同じくらい。
  4. On Green Dolphin Street
    • これも大好きなアレンジで,よく弾く曲の一つだ。
    • かなり速いテンポで次々に即興を繰り出していく感じで,実に華麗だ。
    • アレンジの仕方も「枯葉」に似ている。こちらも10ページもある。
  5. Misty
    • ゆったりしたバラードで,アレンジの仕方は「虹を越えて」とほとんど同じ。
  6. All Of You
    • 一転して,急速な曲。リズムの処理,アドリブの技巧ともに「枯葉」に似ている。
    • これも演奏効果が高く,弾いていても楽しいが,両手を合わせるのに一苦労した。
  7. Stardust
    • ゆったりした曲で,「虹を越えて」と同じ感じ。
    • 変二長調なので急速なパッセージも弾きやすい。
  8. Satin Doll
    • 落ち着いた感じの4ビート調の軽快なアレンジで,これも私が好きな曲の一つ。
    • テーマ部分は,右手は和音の連続,左手は10度を含む跳躍が結構あるため,きちんとした技術が求められると思う。
    • アドリブはあまり長くないが,次から次へとさまざまな演奏テクニックが登場し,定型的な音階や半音階があまり登場しないため,真面目に譜読みをしておく必要がある。
  9. Tenderly
    • ゆったりしたバラードで始まり,アドリブは軽快な4ビート,そして最後にバラード調に戻る。これも10ページと長い。
    • 最初と最後の部分は華やかで弾きやすいアルペジオが連続するため,クラシックピアノ弾きには楽勝だろう。
    • 中間部分の左手は規則的な4拍子のため,リズムの難しさはないが,右手のアドリブにはそれなりに複雑な音型も登場するので,きちんと練習しないとなかなか弾けないと思う。
  10. Come Rain Or Come Shine
    • これも基本的にはゆったりとしたバラードで,「虹を越えて」に似ている。難易度も同じくらい。

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【スウィングベスト・ヒット10 上級編】
 ちょっと懐かしい感じのスウィング・ジャズの有名な曲をアレンジした曲集。どこかで聞いたことがあるよね,という感じの曲が揃っているため,クラシックしか知らない人にも曲調がつかみやすいだろうし,アレンジの仕方も変に和声に凝った部分がなく,技術的にもそれほど難しくないため,左手のリズムの取り方を勉強するのに格好の教材かもしれない。最初に取り組む曲集としてはお勧めの一冊である。
 しかも,取り上げられている曲はなぜか,ジャズ映画の傑作,《スウィング・ガールズ》に使われている曲とかなりかぶっているのである。例えば,一番最初にみんなで練習するんだけどジャズのリズムにもなっていないというシーンの「イン・ザ・ムード」,初めてジャズのリズムの取り方を会得するシーンで使われる「故郷の空」,吹雪で電車が止まってしまうシーンで険悪なムードになったときに流れる「A列車で行こう」,コンクール本番で流れる「ムーンライト・セレナード」と「シング・シング・シング」,といった具合である。欠けているのは,エンドロールで使われる「ラブ」くらいである。この映画が好きな人にもお勧めかな。

  1. イン・ザ・ムード
    • あまりにも有名な曲で,人前で弾くのはちょっと恥ずかしいくらいだが,ノリノリのリズムはやはり弾いていて楽しい。
    • テンポが速く,右手は和音を含むパッセージが多いため,快適なテンポで弾くにはきちんとした練習が必要か。
  2. ムーンライト・セレナード
    • 低音の伴奏,中音域のメロディー,そして高音部の伴奏音型という,いかにもピアノ的な音響が楽しめるアレンジ。
    • リズムの難しさもなく,技術的にも容易。音階がきちんと弾ければ数回練習すれば弾ける感じだ。
  3. A列車で行こう
    • スウィングジャズといえばこれ,というくらい有名な曲。
    • テンポが速いため,初見で弾くのはちょっと難しいが,右手の指使いをきちんと決めておけば,快適に気持ちよく弾けるはずだ。いかにもジャズを弾いている,という感じで楽しめる楽しいアレンジ。
  4. シング・シング・シング
    • 指定されたテンポが「四分音符=116」と落ち着いたテンポで,アドリブ部分の右手のパッセージも難しくないが,例によって,左手のリズムの取りかたがちょっと難しいかも。
    • 主部の左手は単音だが,繰り返しではオクターブにした方がピアノ曲らしく響く。
  5. 故郷の空
    • 有名なスコットランド民謡で,映画《スウィング・ガールズ》では歩道橋の青信号でこのメロディーが鳴っていて・・・というシーンで使われていた。
    • アドリブ部分はちょっとファンキーな感じで,弾いていて楽しいアレンジだ。
  6. オール・オブ・ユー
    • この曲集で,私が最も好きな曲であり,好きなアレンジ。
    • テンポが速く,指になじみやすいパッセージで,しかもノリのいいアレンジとなっている。
  7. スウィングしなけりゃ意味がない
  8. ナイト・アンド・デイ
    • ジャズの楽譜では非常に珍しい嬰へ長調(つまりシャープが6つ)で,変音記号も多いため,事前に十分に譜読みをしておく必要がある。それさえしておけば,曲想さえつかめれば難しくは内容だ。
  9. 茶色の小瓶
    • 有名なアメリカ民謡。恐らく,このタイトルを知らない人でもメロディーは知っていると思う。
    • 覚えやすいメロディー,素直な和声,軽快で弾きやすいアドリブと,弾きやすい要素が揃っていて,数回練習すれば簡単に気持ちよく弾けるはず。
  10. サテン・ドール
    • テンポが速く(四分音符=156),アドリブの右手は16分音符の細かいパッセージが連続するため,指使いはあらかじめ楽譜に書き込んでおかないと弾けないと思う。
    • きちんと練習すればかなり楽しめるアレンジであり,演奏効果も高い。

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(2008/01/10)

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