《リビングデッドザ・ビギニング》 (2003年,アメリカ)


 見所も何もないクズ映画。まだ終わらないの,どうせ同じシーンがくり返されるだけでしょう,と80分足らずの映画なのに,やたらと長く感じられ,見ているのが苦痛でした。ホラー映画としては怖くもなければ恐ろしくもなく,ゾンビ君が主人公なのにスプラッターシーンはないし,おまけに映像のスピード感はゼロときています。どこか一点でも褒めてよ,といわれても,その一点が見つかりません。まさに救いようがありません。

 恐らく作り手は,異色ホラー映画,ってところを狙ったんだろうと思います。ゾンビに変わってしまった人間(?)の心理,ゾンビに変わってしまったカップルの愛はどうなるのか,というあたりを描こうと思ったんでしょう。一言とで言えば「叙情ホラー」ってとこでしょうか。でも,この出発点ですでにボタンをかけ間違っているのですよ。

 しかも,超低予算ときています。人件費もロケ代もフィルム代も極限までケチっています。これより安い予算で映画って作れるのかな,というくらい超緊縮予算で撮影した模様です。


 主たる登場人物はカップルの二人。その他は数分だけ登場するのが数人いる程度。ロケ地は最初は森の中の車の中で,その後はどこかの建物(誰かの別荘らしいけどよく判らない)の一室のみです。別荘内の他の部屋が映るシーンも一度しかありません。

 こういうホラー映画のヒロインってのは,細身の美女,巨乳ならなおよし,という不文律があるはずなのに,この映画のヒロインときたら美人でもないばかりか二重顎ちゃんです。恋人役の男性もそこらにいるお兄ちゃんで,二人揃って華がありません。このお兄ちゃんとお姉ちゃんが車の中で「ひどいこと言って御免,でも,私はあなたを愛しているのよ」なんてかったるい会話が延々と続くのですよ。こういう会話が許されるのは美男美女だけだってば。ま,唯一救われるのが,この二重顎姉ちゃんとお兄ちゃんのベッドシーンが一つもないこと。もしもあったら,はっ倒してやるところです。


 ストーリーをちょっと紹介すると,ジョニーとジェニファー(だったかな?)の恋人二人が森の中をドライブするんだけど,道に迷っちゃって,おまけにタイヤがパンクしちゃう。暗いしスペアタイヤもないため車の中で一晩すごそうとジョニーが提案するんだけど,ジェニファーちゃんが「死体みたいなのが転がっているわ」って何かを見つけちゃう訳よ。真っ暗な森の中でなぜ見つけられたかは不明だけど,「あなたが見てきてよ」とジェニファーちゃんがぶうたれるもんで,仕方なしにジョニーが見に行くとそこで何者かに首を咬まれちゃう。どうやら,その死体君が咬んだようです(咬まれるシーン,暗すぎて何がなんだか・・・)

 その時は「大丈夫だよ」とか言っていたジョニー君なんだけど,具合は悪くなってくるし,おまけにジェニファーちゃんが「死体がなくなっている」なんて言い出すわけ。結局二人は襲われたもんだから走って逃げ,森の中の空き家を見つけ出すんだ。ちなみに,この「噛みつく死体」君はそれ以上襲ってくるわけでもなく,追いかけてくるわけでもなく,これで出番なしでお役御免。

 翌朝になってジョニー君,自分の鼓動が止まっていることに気がつくわけさ。「病院に行きましょう?」というジェニファーちゃんだけど,ジョニー君は「病院に行ったら実験材料にされるだけだ」とか言ってしぶるんだけど,結局は病院に行きます。

 で,聴診した医者の顔色が変わり,「ちょっとお待ち下さい」とか行って部屋の外に出ちゃう。そして医者が,「警備員を呼べ。救急カートを用意しろ」とか訳のわからん事を言っているのを聞いて,実験材料にされちゃうんだと思いこんで病院を抜け出しちゃう。


 こう書くと,なんだか緊迫したように見えるけど,ここまで描くのになんと30分近くを費やしているのですよ。やたらを展開が遅いのですよ。おまけに,この後,さらに反加速度的に展開が遅くなるのです。

 この後はずっと,森の空き家の一室でのシーンが延々と延々と続きます。ジョニー君は肌がはげ落ちてきたため顔に包帯を巻いていますが,なぜか,手はきれいな皮膚ですが,気が付かないフリをしてあげましょう。ジェニファーちゃんも次第に具合が悪くなっているようですが,なぜか二重顎は健在です。そういう二人が,「こういう目に遭わせて御免」とか「でもあなたを愛している」とか,「生きるために他の人間を犠牲にするなんて我慢できない」とか,「生きるためには仕方ない」とか,そういう会話を延々と延々と続けるのです。


 最近見ているB級映画ですが,《ダ・ヴィンチ・ウォー》⇒《デッドマン・ゾルジャーズ》⇒《リビングデッド》と加速度的に質が落ちています。ところが,これよりひどい映画,まだまだあるんだよ。乞う,ご期待。

(2007/01/10)

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