スズメバチの大群が人を襲っちゃうというパニック映画です。でも,すごくいい加減で雑なストーリー展開なんで,途中で見ているのが辛くなります。
ストーリーそのものは単純なんだけど,まとめようとするとさあ大変。行き当たりばったりのストーリー展開だからです。
ま,要するに,グアテマラとかの奥地で先住民たちが神様のように崇めてきたスズメバチがいてですね,こいつは猛毒を持っているらしいのです。先住民たちも怖がって近寄りませんが,その巣を運び出して箱に入れ,メキシコに運び込もうとしている連中がいるんですね。で,その箱を積んだトラックが途中で事故を起こして横転。事故を発見した警官がトラックのなかのハチの巣の入っている箱を開けちゃったからさあ大変。大群が逃げ出しちゃって,この警官が全身刺されて死んじゃいます。
ここで登場するのが,町でマラリア撲滅に奮闘している昆虫学者(ヒーロー)と,麻薬密輸を追っている女性作家(ヒロイン)。昆虫学者がその死体を見て「これは大きなハチ,例えばスズメバチに刺された」ということに気が付きます。
一方,近くの町は2日後に「死者の祭り」とかいう祭りがあって,市長さんはそれに大忙し。どうやらその町の一大イベントみたいです。だから,昆虫学者がスズメバチの大群が襲ってくる危険性があるから祭りを中止しろと進言しても聞く耳持たず(お約束ってやつね)。そして人手が足りないと市長に文句を言う警察署長さん(昆虫学者と仲がいい)に,応援を頼むから,といってどっかに電話します。すると登場するのは,生物による事故の解明だか対策を行っている世界機構の関係者と名乗る人物。見るからに胡散臭そうです。あっ,そうだ! コイツは映画の冒頭で先住民族を脅してハチの巣を盗もうとしたやつじゃないか。
そうこうしているうちにお祭りになっちゃって,ハチの大群が襲ってきて,次々と刺されちゃって,町はパニック。犠牲者を助けるでもなく喜々としてデータを集める世界何とか機構の博士一派。実はこいつは人体実験大好きでこの組織を追放されたというとんでもないやつです。この連中,猛毒スズメバチに刺されても死なずに生き残る人間を見つけるためにこの惨劇を仕組んだということが後で明らかになります。
そして,スズメバチに刺されても大丈夫なのがヒロインです。ヒロインから抗体を精製するために彼女を拉致する博士一派。それを追う昆虫学者。ついに突き止めた洞窟内の巨大なスズメバチの巣。さぁ,どうなるでしょうか,という映画ですね。
まず,生物学的な説明が無茶苦茶です。
最初の犠牲者を診察した昆虫学者は「ハチは刺すと針が残らないのに,彼の体には針が残っている」と説明しますが(日本語吹き替えでは),これは明らかに間違い。ミツバチの針は相手の体に残りますが,スズメバチは残しません。
このスズメバチは人を刺しては麻痺状態にした上で,人間に卵を産み付けて体内で孵化して増えるそうです。これはスズメバチじゃなくて,狩人蜂の習性ですね。で,最初の犠牲者の腹部から大量のハチが飛び出します。遺体安置所はハチで一杯になりますが,人間のお腹にあれだけ大量のハチが入っていたのはびっくり。いずれにしても,卵を産み付けて一日で成虫になって飛び出すとは成長早すぎです。
ちなみにここまでの展開を素直に読めば,人間に卵を産み付けるのは女王蜂の仕事ではなく,あの巣に入っていた全てのスズメバチが生みつけることができることになります。
ところがその後の展開では,蜂に刺された人はほとんど死んでしまっています。「人間を麻痺させて卵を産み付ける」のを蜂自身が忘れたんでしょうか。
ところでこの巨大スズメバチ,どのくらいの大きさか最後まで不明です。ハチ一匹一匹を映してくれないからです。宣伝文には「巨大スズメバチ」とありましたが,画像で判断する限り,せいぜい,オオスズメバチ程度です。ちなみに登場するハチはすべてCG(それも安っぽい)です。黒い雲か煙のように飛び立つ姿しか見せてくれません。せっかくの巨大スズメバチなんですから,姿を見たかったです。
で,この人体実験大好き学者の目的は,ハチ毒に自然抗体を持つ人間から抗体を抽出し,それであらゆる病気やら癌やらを治すことが目的とのことです。このあたりの説明,何がなんだかわかりません。
その他にも,意味不明の濃い人物が出てきます。特に,頭に金属で作った三角錐をかぶり,イグアナか何かの剥製を抱えていて,宇宙人の侵略から町を守っている(つもりの)おじさんが登場します。正真正銘の電波系,ってやつです。雑魚キャラなんですぐにハチに襲われて死にますが,その時の「宇宙のハチが襲ってきた」という最後の言葉がなんだかとても痛々しいです。
そうそう,クライマックスのスズメバチ軍団の退治の仕方がユニークです。ヒーローとヒロインの後ろからハチの大群が迫って来るんですが,洞穴の入り口からコウモリの大群が入って来るんですよ。そしてスズメバチを捕まえては食い尽くしちゃう。「これが自然の摂理なんだ」と昆虫学者は説明して,めでたし,めでたしですが,スズメバチを喰っちゃうコウモリというのはすごいですね。世界でもっとも獰猛なコウモリといえましょう。このコウモリはそこらにいる普通にいるコウモリですから,普段食べるのは蛾のはずですが,なぜか猛毒のスズメバチに刺されもせずに食料にしています。まさに,意表を突く解決法ですね。
というわけで,これからスズメバチに襲われたら,「コウモリさん,コウモリさん」と呼べばいいらしいです。
(2006/07/14)