《アラクニア》 (2003年,アメリカ)


 見たら必ず後悔するモンスター・パニック映画。ゴミ映画の見本みたいな作品でした。

 えーとですね,大学教授(古代生物の研究家)が女性秘書と学生3人(二人の女と一人の男)を引き連れてアリゾナの化石発掘現場に行こうとしてセスナ機での移動中,隕石の落下に伴う爆風でセスナ機が操縦不能になっちゃって森の中に不時着。そこで何とか人家を発見するんだけど,そこで巨大蜘蛛に襲われる,という映画。


 まず,DVDのジャケットには「鋼鉄製肉食蜘蛛」とあります。何ですと? 鋼鉄製ですと? ってことはロボットか何かかな,と思うでしょう? 確かに,ライフルで撃っても弾ははねとばされますが,映画中には「鋼鉄」という説明は出てきません。単に外殻が固い蜘蛛のようです。どっから出てきたんだ,「鋼鉄製」って。誇大広告じゃないか。JAROに言いつけるぞ!

 この蜘蛛さんたち,穴を掘って集団で暮らしているようです。おまけに「女王蜘蛛」がいて卵をしこたま生んでいます。どうもこの映画の作者,蜘蛛とアリの区別が付いていないようです。この女王蜘蛛の形は,どうみても女王アリであって蜘蛛じゃありません。

 またこの蜘蛛さんたちは,歩き回って獲物を捕まえています。穴を掘る蜘蛛の場合,歩き回らずにその穴の出口で獲物を待ちかまえるはずだけど・・・。おまけに捕まった奴は蜘蛛の巣(お馴染みの放射型のネット)にひっかかっているんだけど,これって蜘蛛の種類が違ってませんか? もうちょっと,勉強しろよ!


 おまけに,登場人物がどれも魅力なし。

 教授は「単位をあげるから一緒に発掘作業に行こうね。そこで私が何を要求しているか,わかるね」ってなタイプのエロオヤジ。パイロット(一応この映画のヒーローね)は銃や爆薬の扱いに慣れているんだけど,何かというと教授を殴る短気野郎。教授秘書の黒人女性(一応ヒロインみたい)は偉そうな命令口調で喋るわりには,蜘蛛の巣穴の中では小蜘蛛に驚いて銃をぶっ放してみんなを窮地に陥れるし,男子学生(大学院生らしい)は女子学生の入浴シーンをのぞき見して喜んでいるくらいしか役に立たないし,2人の女子学生は頭が空っぽで色気とオッパイしかない馬鹿二人組。

 要するに,こいつだけは助かった欲しい,と感情移入できる登場人物がいません。「そろそろこいつが喰われる番だな」と思った奴から順に喰われますが,見ている方としては「ようやく喰われたな」くらいの感じです。


 女子学生が本当に馬鹿です。脳味噌スカスカです。隕石は地球より大きいと思っています。おまけに,九死に一生を得たというのに,ようやくたどり着いた廃屋だと言うのに,「お風呂に入りたい」とかぬかします。「さっさとクソして寝ろ!」と誰か言ってやれよ。

 ところが,なぜか水がたっぷりあって,お湯が沸かせたため,お約束の入浴シーンとなります。オッパイ見せまくりです。栄養が脳味噌に行かず,オッパイに集まった模様です。

 おまけにこの姉ちゃんたち,二人でベッドに入っては修学旅行気分です。午前一時まで男の子の話とかでキャッキャ騒いでいます。うるさいと注意されると,今度はレズっちゃいます。底抜け馬鹿です。さっさと喰われちゃえ。こいつら,助からなくていいです。


 この映画の主人たる蜘蛛の動きがなんかギクシャクしています。1950年代の怪獣映画より動きがたどたどしく,そこだけコマ落ちシーンに見えます。洞窟で追ってくるシーンがありますが,なぜかなかなか追いつきません。登場人物を逃がすための配慮でしょう。

 家の屋根に登ってきた蜘蛛をダイナマイトを投げつけて倒すシーンがありますが,正確に蜘蛛だけが爆破され,屋根には傷一つついていませんし,窓も割れません。この天井,いったい何でできているんでしょうか。馬鹿姉ちゃんの一人がヘナヘナと投げたダイナマイトも正確に蜘蛛に命中します。

 馬鹿姉ちゃんの一人が蜘蛛に捕まりますが,そこでみんなで助けに行きます。蜘蛛の巣がどうなっているのか,何匹くらいいるのか,どこに捕まっているのか,という情報なしに助けに行きます。当てずっぽうに巣穴に入っているのに,なぜかちゃんと見つけます。フェロモン系お姉ちゃんのフェロモンが漂っていたんでしょうか。


 そして,最後に空軍が助けに来ます。秘書の黒人女性の父親が軍の指揮官だったからです。ところが助けに来た父親は白人です。人種が違いますが,彼女は養女だったから,とウルトラC級の説明をします。
 オイオイ,そんな面倒な説明をするくらいなら,最初から黒人のお父さんを用意すればいいじゃないか。あるいは,白人女性を最初から秘書にするとか・・・。もしかしたら,ギャラが安い白人俳優が見つかったから,「娘(黒人女性)は養女」という設定にしたんじゃないか。

(2006/07/04)

 

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