《エア スコーピオン》 (2002年,アメリカ)


 アホ・モンスター映画,クズ・ホラー映画の殿堂,それがアルバトロス。今回のこの映画もアルバトロス配給ですが,一般的なモンスター映画だと思ってみると呆れ果てるしかない作品ですが,アルバトロスだと思ってみると,まぁ,こんなものかな,という感じで特にひどい出来という感じではないですね。無茶苦茶な内容だけどストーリーは一応あるしさ。
 どうやらアルバトロスに免疫ができちゃって,審美眼のレベルがかなり下がってきたみたいです。

 映画の内容を一言で言えば,「巨大生物パニック映画」と「飛行機パニック映画」を合体させた欲張り映画ということになるでしょう。でも,どちらも詰めが甘いため,結局,中途半端になっています。虻蜂取らず,という言葉の見本です


 ちなみに,こういう風な宣伝文で販売されています。

大量の巨大スコーピオンが、密室の旅客機内の乗員乗客に襲いかかるパニック作品。生物学者のジェニファーとスコットが旅客機に持ち込んだ、遺伝子操作されたサソリが突如巨大化。次々とサソリは増え、犠牲者も増加。空の上での壮絶な闘いが始まる。
 もちろん,この文章を鵜呑みにしちゃ駄目です。


 まず一番悲惨なのは巨大サソリがハリボテであることです。ハサミは動かしているものの,足の関節はろくに動いていません。1950年代の怪獣映画より作りが雑で,21世紀の映画とは思えない枯れた味わいを醸し出しています。

 このサソリは元々,普通サイズよりちょっと大きい位なんですが,逃げ出したとたんに数メートルの大きさに成長します。なぜ短時間で巨大化したのか,もちろん説明なんてありません。

 しかも,巨大化しているくせにいきなりコックピットに忍び込んで副操縦士を殺したりします。どこから入り込んだのかは永遠の謎です。


 舞台となる飛行機ですが,ビジネスクラスもエコノミークラスも席がガラガラで,空席ばかり目立ちます。もちろん,登場人物を少なくして制作費をケチるためでしょう。みんな,貧乏が悪いんです。
 それなのに,わずか20人ほどの乗客でも多すぎたためか,巨大サソリが登場するとすぐに,6,7人を残してサソリにあっさりと殺されちゃいます。低予算映画のお手本的展開です。

 巨大サソリは10数匹いますが,とりあえず「非重要登場人物」を殺しまくった後は姿を現さなくなります。この間にサソリを倒せるものはないか,ということで飛行機内にあるものを工夫して武器を作りますが,どれも哀しくなるほどチャチです。特に,骨折してギプスをまいている少女がギプスにナイフとフォークをくっつけて武器にするあたりは,いくら何でもそりゃないだろう,と思いますが,なぜかこのフォーク付きギプスでやっつけられるサソリ君がいたりします。

 そうそう,機内にアラブ人兄弟がいて,この二人はアメリカへの密航を企てていて,どんな機械も直せる,作れるという設定です。彼らは機内の配電盤を修理したり,サソリを倒す電気機器を作ったりします。大昔のテレビ映画,《特攻野郎Aチーム》なんぞを思い出しますね。


 で,操縦室にとりわけでかいサソリが居座りますが,映画の中では「女王サソリ」と説明されます。どうも,ハチやアリ,あるいはシロアリと勘違いしている模様です。もうちょっと理科の勉強をしたほうがいいと思うよ。

 で,機内のあちこちにサソリがウジャウジャいるわけですが,その退治法が素敵です。飛行中の飛行機の非常口が開いて(というより,開けて),機内の人間やものが外に吸い出されちゃうという飛行機パニック映画お約束のシーンがあるんですが,これでサソリ君達,外に放り出されます。常識的には,これで「全ての」サソリ君達がいなくなったとは考えられないのですが,「サソリはみんな,いなくなったわ」という乗客の一言で,すべていなくなったことがわかります。なぜ? なんて言っちゃ駄目です。

 でもやっぱり,女王サソリが残っていたんですね。やはり一匹くらいは残っていないと,次の展開にならないもんね。こいつが機長の目のところを尻尾の針でひっかいたため出血しちゃいます。もう目が見えません。そこで,一人の女性(前述のフォーク付きギプスのお姉ちゃん)が機長の目の代わりとして副操縦士席に座り,何とか高度計とか読みながら,飛行機を着陸させようとします。


 一方,女王サソリを倒すためにヒロイン(サソリ研究者)が身につけるのは,アラブ兄弟が作った真っ赤な防護スーツ。機内で見つけたスウェットスーツを絶縁体とし,背中に発電機を背負い,両手にアイロンみたいな放電盤を持ち,頭には豆電球が3個ついたヘッドギア。豆電球が笑えます。高校の文化祭のコスプレみたいで,なんだか微笑ましいです。そして女王サソリのハサミや針をかいくぐって両手のアイロンを押し当て,感電死させます。

 そして間一髪,飛行機は無事に着陸します。あわや大惨事というのに,飛行場には消防車も救急車も来ていません。予算が足りなかったものと思われます。飛行機から機長とヒロインが仲良く降りてきます。もちろん,誰も迎えに出てくれません。彼女はさっきの真っ赤なスーツのままです。そこで二人の会話。

  「早く病院に行きましょう」
  「いや,大丈夫だよ」

 巨大サソリの毒針に目をやられているんですけど・・・。大丈夫じゃないと思うんだけど。そのままだと失明するか,死んじゃうよ。早く病院に行こうね・・・ラブシーンをする暇があったら。

(2006/06/30)

 

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