《キラー・モスキート 吸血蚊人間》 (2004年,アメリカ)


 NU Image作成で,原題はこのメーカーお得意の "Mosquito Man"。何でも "Man" って付ければいいってもんじゃないと思うけど,ま,いいか。

 どういう映画かというと,ある研究所で新種の蚊を作る実験をいていて(理由は後述),蚊に突然変異を促す液体とか放射線とかをかけているんだけど,その蚊が人間に安全かどうかの人体実験を企画しますが,殺人犯の死刑囚が減刑と引き替えに人体実験に応じるんですね。それでこの研究所にやって来るんだけど,研究所の中で脱走して女性研究員を人質にして,この「蚊の実験室」に立て籠もっちゃう。そこでドンパチ銃撃戦をするもんだから,流れ弾が研究室のあちこちに当たっちゃって上述の液体のパイプとかが破裂し,放射能が漏れちゃう。それを死刑囚と女性研究者が浴びちゃうんだ。
 大量に浴びた死刑囚はなぜか巨大な蚊に変身し,人を襲っては血を吸っちゃう。一方の女性研究員は変身しないんだけど次第に変身が始まっちゃう。先に変身した吸血蚊人間は交尾の相手を求めてこの女性研究者が変身するのを待ち,彼女を収容した病院を襲い病院は血の海になる。吸血蚊人間は固い殻で身を守っているらしく,拳銃なんかじゃ歯が立たない。あなオソロシや,という映画です。


 いかにもB級の香りが漂うストーリーでしょう? どう作ってもお馬鹿映画になりそうでしょう? ところがですね,なぜか超真面目に作っちゃう。言ってみれば,優等生が教科書を必死に勉強してギャグを言っているような感じなんですね。真面目に作っているから,面白くないと言うのは何か気の毒だけど,正直言えば面白くない,という映画です。

 だから,張られた伏線はきちんと説明してくれているし,登場人物の行動も首尾一貫していて説明可能だし,意味不明の言動をする登場人物はいないし,最期の終わり方も納得がいくものとなっています。なるほど,これなら吸血蚊人間死んじゃうよな。

 でもね,そうやって丁寧に作られているから余計に,ストーリーのお馬鹿さ加減が露呈するし,小さくいじけた作りになっちゃうんだよ。いくら真面目に作ったとしても,所詮は放射能を浴びた人間が蚊人間に変身して血を求めてさまよう,という馬鹿話なんだから,「俺たち,誰にも作れないような馬鹿映画作ってるんだぜ,これほどのもの,作って見ろってんだ!」というパワーがないんだよね。

 普通なら「オスの蚊は血を吸わないんだから,男性の殺人犯が変身した蚊人間は血を吸わないはず」とかツッコミを入れるところなんだけど,ま,いいか。「変身しつつある女性科学者の病室を吸血蚊人間が襲うのに,科学者が簡単に逃げられるのはなぜ?」というツッコミも,ま,いいや。病院で大量殺人事件,というのでSWATが突入するのに,持っている銃器が拳銃などの軽火器だけなのはなぜ,というツッコミも,どうでもいいや。


 でも,一番最初の「新種の蚊を作ろう」とする理由だけはおかしいぞ。

 何でも,西ナイル熱をはるかに凌ぐ新しい感染症が発生し,それが蚊を媒介にしたウイルス病であることがわかり,その蚊を絶滅するために,はるかに繁殖力が強くてそのウイルスを媒介しない蚊を作り出し,元からいる蚊を絶滅させるんだって。なんだか回りくどくない?

 普通なら,それまでにない病気を蚊が媒介して感染者が爆発的に増えているのだったら,その蚊がどこかで増えているわけで(何しろ長距離を飛べる昆虫じゃないから),その繁殖場所(幼虫のボウフラが繁殖している場所だから,流れがない溜まり水のはず)を突きとめ,ボウフラが住めないようにする(=溜まっている水を排出する)のが一番効果的じゃないだろうか。あるいは,それこそ放射線照射で不妊化したオスを放つとかという方法もありそうだ。

 それに第一,繁殖力が極めて強い新種の蚊を放った場合,これには天敵はいないから増え放題になるわけで,こいつが別種のウイルスなんかを運び始めたら,さらに悲惨な状況になると思うぞ。

(2006/06/06)

 

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