《キャビン・フィーバー》(2005年,アメリカ)


 スプラッターシーンだけを強調したウィルス感染ホラー映画ですが,非常に後味が悪い作品です。訳のわからない登場人物が多すぎるし,地域住民たちの態度も意味不明だし,最後のシーンはあれで終わっていいはずがないですよ。低予算ながら手間をきちんとかけて作ったのに,ボタンの掛け違いからB級以下になってしまった感じですね。

 ちなみにこの映画の監督は,デビッド・リンチのお弟子さんです。リンチといえばシュールリアリズム的な訳のわからない収拾のつかない映画を作らせたら第一人者ですが(《ツイン・ピークス》などがその代表),その悪いところだけ学んでしまったようです。


 どういう映画かというと,大学生活を終えて山小屋で1週間の馬鹿騒ぎ(酒とマリファナとセックスって奴ね)のために集まった5人(男3人,女2人,男女一組のみラブラブのカップル)が謎の致死性ウイルス感染者に遭遇し,一人また一人と感染者が増え,やがて全滅するという内容です。まぁ,よくある設定です。

 全体を大雑把に見ていると,そこそこ面白いのですが,雑多なエピソードが詰め込まれていて,その多くがストーリーと無関係だったり,最後まで解決されない謎だったりするため,非常にうざったいです。


 例えば,最初に5人が立ち寄る村の雑貨屋さんのシーン。一人が店先のブランコに座っている少年に話しかけ,いきなりこいつに噛みつかれます。こいつが感染源,というのが定番ですがこれが全く関係なし。じゃあ,何で噛みつくんだ,と思うのが当然ですが,それも最後まで不明。それどころか,後半では「パンケーキ,パンケーキ!」と叫びながら回し蹴りを連発し(なぜか身のこなしがカンフー),そして噛みついてきます。何だ,パンケーキって。誰かこのシーンを説明して下さい。

 冒頭,内蔵がえぐられた犬の死体が映されるんだけど,あれって何だったんでしょうか。何が内蔵をえぐったんだろうか? っていうか,そもそもこのシーンは必要?

 あの伝染病も結局なんだったんでしょうか。病状から見るとエボラ出血熱のひどいのみたいなんだけど,それすら説明なし。その地域に突然現れた病気なのか,風土病なのかも説明なし。

 また,周辺住民の事なかれ主義というか,よそ者は敵というか,そういう一方的な描き方もなんだか嫌だな。途中から登場する若い保安官補も性格が変だし,行動も変。変なんだけど,ストーリーとは無関係だし。

 最後にみんなが死ぬんだけど,地元警察は死体を集めて焼いちゃうんだ。警察の仕事って死体を集めて,山小屋の庭先で燃やすことなんでしょうか,この地域では。それが感染病の蔓延を防ぐための処置なのかどうか,よそ者の死体なんか燃やしちゃえ,ということなのか,どっちだったんだろうか。


 もしかしたら,映画監督は映画のストーリーなんてどうでもよく,単に血を口からドバっと吐き出すシーンが撮りたくて,この映画を作ったんじゃないだろうな。

 最後のシーン,死体が浮いている池だったか川で水を汲み,その水でレモネードを作って売る兄弟が登場。この地域全体にこの「血吐き病」が蔓延しそうな気配ですが,ここで映画はおしまい。うわぁ,ここで終わっちゃうか?

(2006/04/24)

 

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