「2」ということは「1」があったということですが,こちらは見ていません。どうやら前作は巨大蜘蛛が大暴れする映画で,最後で爆死したようです。で,続編は死んだと思っていた巨大蜘蛛の卵をどっかの組織が密かに運び出していて,巨大タンカーの中で繁殖実験をしていた,という設定になっています。
というわけで「1」を見ないでも楽しめます。で,クルージングをしていたカップルが嵐にあって遭難し,このタンカーに救助されるところで始まりますが,そのタンカーの謎が次第に解き明かされ,その秘密を知ったカップルが捕まったり,巨大蜘蛛の群れから逃げたりという密室モンスター・パニック映画ですです。
蜘蛛はでかいし,作りも安っぽくないし,蜘蛛の卵を産み付けられた人間から蜘蛛が這い出てくるところはそれなりに気色悪いし,最後にカップルが救出されるところまでサスペンスフルな画面が連続するしと,このタイプのB級モンスター映画としては悪くない方だと思います。B級でいいや,という作り手の手抜きがいい味を出しています。暇つぶしにみて「ああ,馬鹿な映画だったな」とあくびをする程度にはいいんじゃないでしょうか。
そういうB級映画にちょっとツッコミ。
カップルが救助された船で医者が二人を診察するんですが,その様子がいかにも変。素人だって気がつくだろう,というおかしな診察をします。ま,嵐の海で救出されたばかり何で,そこに気がつかないのはしょうがないか。で,この医者が「傷が化膿しないように」と男@カップルに注射するんだけど,案の定,その後から彼は体調が悪くなります。もちろん男@カップルはそれがおかしいと感じるんだけど,とりあえず医者だと信じているから,また診察を受けて,その結果また注射されて,ついに意識が朦朧として起きあがるのも難しくなってきます。
その他にも,壊れて使えないはずの無線機が実は壊れていないことを発見し,男@カップルは必死になって船の中を探り,ついに冷凍庫に死体が幾つもぶら下がっているのを発見。「この船は絶対におかしい。逃げよう」と女@カップルに告げるんだけど,彼女は「あなたは熱のために幻覚を見ているのよ」と聞く耳を持ちません。その前の船長(ちょっとイケメン)との会食で話が盛り上がり,ちょっぴり惹かれてしまったのが原因のようです。
その後も,男@カップルが船の喫水線が浅いことから荷をほとんど積んでいないんじゃないかとか,太陽を見ると同じところをぐるぐる回っているだけのようだ,と鋭く理論的に指摘するんだけど,女@カップルは船長が気になっているようでまたもや「熱のせいよ,気のせいよ,幻覚よ」と相手にしません。このあたり,お前,いくら何でもそろそろ気が付けよ,という気がします。
で,ついに男@カップルは秘密を知りすぎたために捕らえられ薬を打たれて気を失い,巨大蜘蛛に卵を産み付けられます。この時,女@カップル(職業はカメラマンらしい)は何をしているかというと,船長に案内された船内の暗室でのんきに写真の現像をしています。あまつさえ,現像が終わったら船長の部屋で二人きりのワインつきのディナー。このあたりで,このおねえちゃん,単なるガードの緩い馬鹿ねーちゃんという気がしてきます。
ここで船長さん,彼女を口説きにかかるんだけど,ここでようやく女@カップルはおかしいことに気付き(もっと早く気がつけよ),迫ってくる船長を振り払いますが,ここから彼女はいきなり「トゥームレイダー」のララ・クラフトが乗り移ります。彼女を監禁しようと屈強な男二人が取り囲むんだけど,こいつらを一撃で倒し,逃げるのに成功します。いきなり強いです。戦闘能力,高いです。さっきまでの緩さが信じられないファイターぶりです。
逃げる途中でなぜか,上着を脱ぎ捨ててちょっとセクシーなタンクトップ姿になりますが,上着を脱ぐ必然性ゼロ。単に観客へのサービスだったようです。
ここで女@カップルは機関室にたどり着き(?),電源板を操作して船の電源を落とします。このため,巨大蜘蛛を閉じ込めていた檻の扉が開いたり,飼育ケースの蜘蛛(人体で孵化したやつで,サイズは30センチくらい)が逃げ出したりします。敵の追っ手をかわして逃げ回っているはずなのに,敵に最大の打撃を与える場所にたどり着き,しかも初めて見る機械を操作する彼女の能力はすごいです。
そこで男@カップルを見つけて連れて逃げるんだけど,この時点で船の中は大蜘蛛でウジャウジャ状態。さっきまで「大蜘蛛1匹,その他は30センチくらいの子蜘蛛」だったはずなのに,なぜか小蜘蛛たちは急速に育ち,全て大蜘蛛になっています。人よりでかいです。成長,速すぎます。最後の船が沈むシーンでは,なんとタンカーの半分くらいの大きさになっています。ものすごい成長速度です。ムチャクチャです。
蜘蛛繁殖計画の黒幕の博士も逃げ回りますが,なぜか白衣姿です。逃げるんなら白衣を脱いだ方が速く走れるよ,と誰かアドバイスしてやってください。
そして甲板にたどり着くカップル。そこも大蜘蛛だらけですが,なぜかこのカップルを襲う蜘蛛はいません。ここに博士もいて,自分だけ逃げだそうとして銃を突き付けるんだけど,女@カップルは銃をものともせずに博士を殴り倒して銃を奪います・・・が,なぜか程なく銃を奪い戻されます。強いんだか弱いんだか微妙なところですね。
結局,悪役はやられちゃうけど,男@カップルの体内では順調に蜘蛛が育っているわけで,それを倒すワクチンと打たなければ死んじゃいます。そのワクチンが研究室にあることを知り,女@カップルは蜘蛛の襲撃から逃げつつ,非常用の明かりが弱々しくついているだけの暗い船内を走り,研究室に戻ってワクチンを手に入れ,ついでに注射器も見つけちゃいます。この素晴らしい運動能力と山勘,そして暗視野能力には拍手喝采をしましょう。ワクチンを手に入れて甲板に戻る間にも蜘蛛は襲ってきますが,彼女は抜群の運動能力と戦闘能力を発揮して,ケガ一つせずに戻ります。戻ってみると,動けない状態の男@カップルはなぜか蛛のエサになっていません。大蜘蛛君たちが彼だけ見逃したん理由が不明です。
ところで,彼女はどうやってワクチンの入った薬瓶と注射器(どう見ても50mlのやつ)を持ってきたのかがまた不明。それまで彼女は手ぶらで走っていたのですから衣服のどこかに入れていたはずです。しかし,彼女の服装はぴったりしたタンクトップとぴったりしたジーンズ。どこにも入る余地はありません。一体どうやって運んだんでしょうか。
あ,そういえば後半,大蜘蛛の眼が何度も映されますが,瞳がきょろきょろ動くし,瞼らしきものまであります。つまりこれは爬虫類や哺乳類の眼であって,節足動物の眼じゃないです。ま,B級だからいいけど・・・。
(2006/04/03)