またもや,しょうもない映画を見ちゃいました。各場面だけ見ているとアクションの連続なんですが,どれもこれも,どこかで見たことがあるシーンそっくりです。ストーリーはこんな感じです。
元CIA局員で兵器の研究をしている博士がシベリアの奥地で,伝説の超強力破壊兵器「テスラの光」を発見。それをCIAに渡そうとする博士とその娘,彼らを助けるCIA局員が乗った飛行機がテロリスト(もちろん,「テスラの光」を手に入れようとしている連中ですね)に乗っ取られ,いろいろあって極寒のロッキー山脈に不時着。あとは,雪の中の脱出劇があったり,グリズリーが襲ってきたり,雪崩に巻き込まれたり,列車の中の追跡劇があったり,タンクローリーの爆走があったりと,アクションシーンの連続。
さて,これだけ読んだら面白い映画になりそうですよね。確かに個々のシーンだけを見ていればそれなりに面白いんだけど,設定そのものが安っぽすぎたり,無理があったりするため,なんか変な映画,という感が強いです。
ちなみに,テスラはエジソンと同時代の発明家で,交流電流の発明者として有名。磁力(磁束密度)の単位としてその名が残っています。
そのテスラが人里から遠く離れたシベリアの奥地でこの兵器の威力を確かめ(それが「ツングースの大爆発」の正体だったのだ!),そのあまりの破壊力を目の当たりにして,使われることを恐れてテスラさんがシベリアのどこかに隠したんですね。そんなに恐ろしいなら壊しちゃえばいいのに,自爆させるだけでものすごい爆発を起こしちゃうんだから,いくら天才科学者といってもはた迷惑なものを作ったものです。
で,その伝説の兵器をハンター博士が見つけちゃう。それも「まずあの洞窟を調べよう」という洞窟で見つけちゃう。どうして見つけたかというと,その辺り一帯の放射能が非常に強く,洞窟の中で針が振り切れちゃうほど強かったから,と説明されていますが,そんなに強い放射能の中をずんずん進んでいくのは命知らずというか,単なるアホです。親子揃って森林浴のように放射線を浴びまくっております。勇ましすぎます。
そしてこの核爆弾級の威力を持つ「テスラの光」が,とてもチャチで笑わせてくれます。大して大きくない手提げバック大の木箱(!)に入っているのですが,開けてみるとコイルが1個とタバコの箱くらいの部品が数個あるだけ。平賀源内のエレキテルよりも部品が足りないです。小学生が夏休みの自由工作で作ったみたいです。
そしてそれにヘッドフォンがついています。ヘッドフォンから脳の電気信号を伝え,かぶった人間が思った通りの破壊力を発揮するのですよ。ヘッドフォンの周囲だけは安全なんで,これを装着して「地球よ,割れろ!」を思うだけで,地球が真っ二つになっちゃうの。この凄い兵器を1個のコイルとタバコの箱数個で作っちゃうんですから,さすがは天才テスラです。
それを見つけたハンター博士が元CIA局員ですから,CIAに運んで安全に保管してもらおうとするわけですが(CIAだから安全に保管,というのもなんだかなぁ),何しろ余りにも早く見つかったもんだから,CIAも特別機を手配する時間がなく,博士とその娘が民間機に乗ってカナダ経由でアメリカに輸送するんですね。そんな世界も破壊できる兵器を民間人に託し,おまけに民間機で運ぶなんて,CIAも手抜きですねぇ。護衛くらいつけるのが常識ってもんです。
おまけに,その民間機に乗り合わせる乗客達がまた「そんなのあり?」という人選です。美人の旅行作家,テレビの冒険番組の主演女優,スーパーモデルですぜ。10人もいない乗客なのに,作家と女優とモデルが乗り合わせる? そんなのありえねぇ〜!
で,こんな「普通じゃない」連中がロッキー山脈に不時着するんですから,その後のトラブルはいわば予定調和みたいなもんです。案の定,この顔ぶれを見た瞬間に予想されるトラブルが,次々起こります。
こうなると,博士の娘が雪原を簡単に突破できたのに,その他の人たちが走破できないのはなぜ,とか,近寄っても来ないグリズリーを恐れて殺そうと危険を冒すのはなぜ,とか,そういう疑問は些細なものです。100年前に作られた「テスラの光」を放り投げたりぶつけたりして壊れないの,という疑問も忘れましょう。テスラも恐れたほどの「テスラの光」の自爆がせいぜい橋を吹き飛ばす程度の威力しかないことも,気にしないことにしましょう。
そういえば,博士が「テスラの光」を発見したことはインターネットの掲示板で話題になっていて,テロリスト達はそれで情報を得て追いかけて来た,という設定になっていましたが,いくら何でも,それはないでしょう。こういう情報を得たとしても,それをインターネット掲示板などに公開する馬鹿はいないはずですから。
とりあえず,アクションシーンが連続している映画ならそれでいい,わざとらしい設定が好きで好きでたまらない,という人にはお勧め映画,と評価しておきましょう。
(2006/02/26)