Loch Ness,つまりネス湖である。恐竜型怪物の本家本元,ネス湖の怪物を描いたB級映画だ。この映画では,首の長い魚竜(?)の形で描かれている。派手なアクションがあるでもなく,人間が食いちぎられている様子が映るわけでもなく,その意味ではちょっと地味な感じの怪獣映画である。しかも,怪獣は終始水の中で,水面に顔を出すのは1シーンくらいということもあり,怪獣映画としては迫力に欠ける。
ネス湖の湖底に亀裂があって海に繋がっている,というのは昔から言われていることだが,その通路がネッシーの巣というか,繁殖地になっているというのはちょっと目新しい設定でしょうか。
ネス湖は長さ35キロ,幅2キロという非常に細長い湖だ。琵琶湖の面積が672平方キロだからその1/10くらいの面積であり,日本だと洞爺湖や浜名湖あたりと同じ広さだ。最深部は230メートル。魚類はそれほど豊富ではないとどこかで読んだ記憶がある。そこで体長20メートルの爬虫類が生存するのに十分な獲物が得られるのか,という疑問は昔から指摘されてきた。しかもここはスコットランドの北部であり,冷涼な気候の土地だ。つまり爬虫類が生活するには辛い場所である。
しかも,ネッシーが自然繁殖するとしたら最低でも数100頭程度はいないとすぐに絶滅するはずだ(まさか爬虫類が無性生殖するわけにはいかないからね)。と言うか,保護しないと絶滅してしまう数の限界がこのくらいである。浜名湖に数100頭のネッシーがひしめき合っている様子を思い浮かべて欲しい。かなりにぎやかな状況である。
そんなわけで,ネス湖が地底で海と繋がっている,という説が出されたわけである。ま,この説にしても,近くの海(遠くでもいいけど)でくつろいでいるネッシーが見つからないのはなぜ,そんな寒い海で大丈夫? という疑問がついてまわる。
この映画の不可解な点と言えば,地元の沿岸警備をしている警察官(だったかな?)がネス湖調査隊の調査を執拗に妨害する点だ。途中で,岸に打ち上げられた小型ネッシー(?)の死体が見つかるんだけど,調査隊にちょっと頭の部分だけ見せてすぐに隠しちゃう場面なんて本当に不自然すぎ。ネッシーがいることを本当は知っていて,何かの理由で隠したがっているのかな,と思ったが,最後まで見てもそういう謎解きはなし。結局,なぜあれほどに調査を妨害したのかは不明のままだった。
というか,小型ネッシーが見つかった時点でマスコミに売り込めよ。それを展示するだけで,世界中のマスコミ,研究者,野次馬が殺到するはずだ。というか,関連学会が全てひっくり返るくらいの大発見だぞ。何でそれを隠しちゃう?
そして何より,地元の漁師たちが爆雷を湖に放り投げては浮き上がった魚を捕っているのを見ても,この警察官が注意もせずに見逃しているシーン。こういう漁法,通常は違法だと思うぞ。これを環境保護団体が見たら,大挙してやってくるぞ。ネッシー調査を妨害する暇があったら,漁師たちの違法操業を取り締まれよ。
そればかりか,最後の方では,調査隊が「この下にクルーが潜水している。爆雷投下を止めてくれ」と大声で無線連絡しているのに,聞こえているはずなんだけどそれを無視してバカスカと爆雷を投げ入れてくるのだ。こいつら,絶対におかしいぞ。本当に警察か? それとも,ネス湖周辺住民ってのは,ネス湖に爆雷を投げ入れるのを仕事にしているのか?
通常,こういう映画で警察などが妨害してくる場合,ネッシーの正体がばれては困る悪徳市長とか,悪徳ホテルオーナーとかが警察とつるんでいるのが定石なんだけど,この映画に関してはそういう伏線もなし。なぜあれほど執拗に邪魔をしたんだろうか?
自腹を痛めずに暇つぶしに見た・・・なら腹も立たない,という程度の映画です。
(2006/01/23)