19歳女。福島県在住。
10年前に骨肉腫と診断され,都内の〇〇大学病院整形外科で人工関節置換術を受けた。2008年9月,身長が伸びたため,同科で再置換術を受けたが,手術時に縫合できない部分があり,創離開の状態で手術終了となり,軟膏での治療が行われ(軟膏の種類は不明),その後創は治ったようだ。2010年11月,創部が赤く腫れて膿が出て人工関節露出。その後,骨髄炎が起きていると言われ,入院して灌流治療を受け,感染症状が落ち着いたところで同院形成外科に紹介されたが,形成外科では人工関節を除去しない限り傷は治らないと診断された。しかし,整形外科では技術的に人工関節の除去は極めて困難と言われ,大腿近位部で切断するしか治療法がないと言われた。また,切断した場合,大腿はほとんど残らず,義足装着も難しいと説明されている。
毎日泣いている患者を見て,両親が必死になって骨髄炎の治療などについて検索してこの症例を発見し,人工関節除去も大腿切断もしない治療が可能かもしれないとのことで,当科を受診した。当科では患者に次のように説明した。
2014年6月13日 | 7月15日 | 11月7日 | 2015年4月24日(315日後) |
10月30日(504日後) | 2016年10月21日 861日後 |
2017年5月19日 1071日後 |
11月10日 1246日後 |
2018年5月25日 1442日後 |
11月9日 1610日後 |
2019年5月24日 1806日後 |
11月15日 1981日後 |
2020年6月12日 2191日後 |
12月4日 2366日後 |
2021年5月21日 2534日後 |
12月3日 2730日後 |
2022年6月3日 2912日後 |
9月27日 3028日後 |
12月2日 3094日後 |
2023年5月26日 3269日後 |
12月1日 3458日後 10年経過しました |
2024/5/24 3633日後 |
多分,〇〇大学病院整形外科の先生たちは「プレートが露出していて何か起きたらどうするのか」と考え,「何か起きる前に大腿切断すれば何も起きない」と考えたと推察する。これは「目玉を摘出しておけば白内障にならない」,「胃を切除しておけば胃癌にならない」,「脳を切除しておけば脳腫瘍にならない」という発想である。
私は非難されるのを覚悟で,「何か起きたら,その時に対策を考えればいい」と考える。未来に起こることは予測できないが,そのほとんどは過去の経験の範囲内であり,過去の経験から得られた知識で対処可能だからだ。過去に経験したことがないことに直面することもあるだろうが,その時だって過去の経験と知識から対処法は演繹できるはずだ。そのために脳味噌があるのだ。
なお、2022年に〇〇大学整形外科では主治医が退職して若い医師に変わり、過去8年間の経過写真を見て「本当に何も起こらないんですね。このまま様子を見ましょう。手術はいつでもできますから」と態度が変化したとのこと。