37歳女性。東京から300kmほど離れた某市在住。
2013年3月24日,熱傷受傷し,〇〇病院に救急搬送されて形成外科に入院となった。初診時,すでに右腰部は腸骨稜に達する3度熱傷で,2度にわたって皮膚移植手術を受けたが腸骨が一部露出し,その後,人工真皮移植が行われた。主治医から「もう一度皮膚移植するしかないが,皮膚が生着しないかもしれない」と説明を受けたが,採皮部(右大腿前面)の痛みがひどいため,皮膚移植を拒否。
ネットで皮膚移植をしない治療について調べて湿潤治療について知り,筆者にメールで相談。筆者は「実際に診てみないと正確なことは言えないが,骨膜が残っていれば保存的治療で上皮化するし,骨膜が失われている場合には,露出した腸骨稜表面をノミで少しずつ削って出血する状態にできれば,肉芽が必ず上がってきて,皮膚は再生するだろう」と返事をした。
とは言っても,東京から某市までは新幹線と特急を乗り継いでも6時間以上かかるため,近県で湿潤治療をしている△△先生に連絡し,とりあえず「穴あきポリ袋+紙おむつ」(勝手に鳥谷部先生のサイトにリンク)で創部を被覆して乾燥を防いでもらった。
同年8月13日,当科受診。右腸骨稜が2×4センチほど露出し,創縁に不安定な肉芽が見られた。骨膜はなく,骨皮質が露出した状態だった。とりあえず,不安定な肉芽を小さくしないと始まらないため,リンデロンVG軟膏を処方。
以後,数ヶ月に一度の割合で通院してもらい,そのたびに小型の骨ノミで腸骨稜表面を削っていった。痛みはないため,処置は無麻酔で外来処置室で行った(ちなみに無菌操作も行わず,手袋は未滅菌のディスポ手袋である)。骨掻爬はわずかに出血が見られるまで行い,その後はヘモスタパッド(R)で止血し,帰宅後は「穴あきポリ袋+紙おむつ」での被覆を続けてもらった。
入浴時には骨掻爬部も湯船に入れて洗っていいよ,と指導。抗生剤も軟膏も投与していない。
2013年8月13日 | 腸骨稜露出 | 採皮部(右大腿) 痛みがひどい |
11月15日 | ノミで削る | ヘモスタパッドで止血 |
2014年1月10日 | また削る |
3月4日 | 6月6日 上皮化完了! |
9月5日 | 9月5日 網状植皮の醜形は 改善していない |