56歳女性。
 8月11日に熱湯で左大腿に熱傷。●●病院救急室を受診し,アズノール軟膏ガーゼで治療を受けた。その後,同院皮膚科を受診し,アズノールの治療を続けたが,15日から「傷が深く化膿している」と言われ,ゲーベンクリーム(R)に変更となったが,その直後から激痛が発生し,歩くのも困難になった。
 治療に不安になり,ネットで調べて受診。
 当科では,ゲーベンを洗い落としてプラスモイスト(R)で被覆した。その直後から痛みは著明に軽減した。

2012年8月17日 水疱膜を除去

 前医では水疱膜を除去せず。水疱膜の上にゲーベンクリームを塗布していたため,この部分は「水疱膜が守っていた」形になり,ゲーベンから守られて浅い熱傷であった。しかし,創近位の水疱膜が破れていた部分はゲーベンクリームが直接創面に接触し,皮膚全層壊死になっていた。
 そのため,「白い部分以外は10日前後で治るだろうが,白い部分は深い壊死であり,治癒に2ヶ月かかるかもしれない」と説明し,ゲーベンを洗い落としてプラスモイスト(R)で被覆した。直後から痛みは消退し,歩けるようになった。

8月20日 8月24日 8月28日 9月11日

9月25日 10月14日 11月14日

12月26日 2013年1月23日 3月1日 11月16日

 前医がゲーベンクリームさえ使わなければ,8月いっぱいで上皮化していた熱傷と思われる。ゲーベンクリームを安易に使うとこんなことになる,という実例である。

 ちなみにこの患者さんは,当科通院中に糖質制限に興味を持たれ,数ヶ月で6キロほどの減量に成功し,ウエストにくびれができたため,職場が騒然としたそうである。

【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/tokyo/case/0080/index.htm】