1歳0ヶ月男児。
5月2日,ヘアアイロンに右足が触れて熱傷受傷。近くの小児科クリニックを受診し,アブソキュア(ハイドロコロイド)で治療を受けていたが,治癒が遅れたため,5月30日に当科紹介となる。当科ではプラスモイスト(R)で治療。
6月7日には上皮化。その後,軽度の肥厚性瘢痕を生じ,8月2日よりドレニゾンテープで治療。
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8月2日 |
8月20日 |
ドレニゾンテープ(ステロイド剤含有テープ)による肥厚性瘢痕の治療をいつまで続けるかだが,大体次のようになる。
- 肥厚性瘢痕が平坦になり,色調が白っぽくなって目立たなくなれば治療(=テープ貼付)終了。
- 瘢痕表面に毛細血管拡張が見られたら貼付を中断し経過観察(毛細血管拡張はステロイドによる副作用)。軽度の毛細血管拡張であれば経過観察で消退していくが,高度の毛細血管拡張は長期に残ることがある。
- 運動障害を伴わない肥厚性瘢痕は,数年経過観察をすると,治療をしなくても軽快していくことが多い。つまり,「時間が解決」する。
- 運動障害を伴う肥厚性瘢痕は自然に軽快することはほとんどないようだ。
- シリコンシートの貼付による肥厚性瘢痕治療もよく行われるが,私の経験した範囲では,ドレニゾンテープと効果は同程度だと思われる。両者の違いは保険が効くか効かないかであり,シリコンシートは保険が効かないため非常に高価である。
- リザベン内服もよく行われるが,私は効果はないと思っている。リザベン内服は通常3ヶ月~6ヶ月行われるが,多くの瘢痕は6ヶ月後には自然に軽快して目立たなくなるからだ。つまり,リザベンを内服しても内服しなくても,同程度に軽快する。「この瘢痕に何か治療はないのですか? 薬はないのですか?」と薬を欲しがる患者に処方するために存在する薬だと思う。
- ステロイド軟膏塗布もよく行われているが,効果はほとんどない,というか,効果があった症例を見たことがない。せいぜい気休め程度であろう。