44歳女性。
 2月25日夜,湯たんぽに左頬があたったまま数時間寝てしまった。翌日,当科を受診した。左頬部に直径2センチ強の蒼白な局面を認めた。この時点での説明。

  1. 湯たんぽによる低温熱傷で間違いないと思う。
  2. 下腿の低温熱傷は極めて多いが,顔面の低温熱傷については初めての経験であり,今後の見通しについては残念ながら確定的なことは言えない
  3. 色が白っぽいので創面は循環不良の状態である。
  4. 循環が戻れば壊死せずに上皮化するが,循環が戻らなければおそらく壊死する。
  5. 壊死した場合には壊死部分を切除することになり,それから皮膚が再生するまで2ヶ月はかかるだろう
  6. 今できる最善の方法は乾燥を防ぐことだ。
 
 このように説明し,ハイドロコロイド被覆材で被覆。しかし,3月4日には全層壊死になり(壊死部分は直径2センチ),直ちに局所麻酔下に壊死組織の中心を切開し(壊死組織をすべて除去しようとすると,生きている部分まで損傷する恐れがあり,傷を大きくすると判断したため),アルギン酸塩被覆材で被覆した。
 翌日からはプラスモイストでの被覆を行い,壊死組織は2週間で自然に融解してなくなったが,この間にも創収縮が続き,3月28日の時点で直径1センチの傷が残った。その後もプラスモイスト貼付を続け,4月下旬には全て上皮化した。
 それ以降は,創部の乾燥を防ぎ,紫外線被曝を防ぐため,小さく切ったハイドロコロイド包帯の貼付を続けた(ハイドロコロイドの紫外線カット率は96%である)。リザベン内服は行っていない。これにより,ハンコンはゆっくりと収縮していった。
 9月18日,直径5ミリ強の硬結が残っていたため,ドレニゾンテープ貼付を開始。約半年間,貼付を続け(その間,1ヶ月に1度通院してもらい,毛細血管拡張が起きていないことを確認),翌年4月には視診上も触診状も全くわからない状態となり,治療終了となった。

2013年2月26日 2月28日 3月4日
直径2センチの黒色壊死
切開後
3月5日 3月11日 3月18日 3月28日
4月11日 4月16日 4月25日
ハイドロコロイドで
ひたすら遮光
5月29日
6月26日 7月24日 9月18日
ドレニゾンテープ開始
2014年1月30日
2014年4月24日:422日後


 「美魔女」という言葉がふさわしいモデル級の美人なだけに,3月4日に直径2センチの黒色壊死になった時はかなりビビったが,最後は最善の結果が得られてホッとした。

【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/hikari/case/590/index.htm】

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