50歳男。
 2016年10月20日,世田谷で仕事中に電動のこぎりで左母指背側を切った。近くの〇〇外科医院(高校球児が怪我で受診することで有名)を受診。止血をしますと説明され,抗生剤が処方された。以後,毎日通院しているが,日を追うごとに腫れて痛みが悪化。
 1月27日,仕事で板橋を訪れた際,お客さんから練馬光が丘病院を受診した方がいいとアドバイスされ,直ちに受診。
 1月27日,当科受診。左母指IP関節背側の裂創で,止血デバイス(種類は不明。何のための止血デバイスか,ご存じの方はご教示下さい)で縫合(?)されていた。
 局所麻酔下に止血デバイスを除去。創縁の皮膚は高度の挫滅されていた。また,長母指伸筋腱の断裂を確認したが,近位の腱断端は見つけられず,前腕まで引っ込んでいると判断した。
 長母指伸筋腱の再建を行うべきか悩んだが,患者さんと相談の上,とりあえず傷を治すことを希望され,ヘモスタパッドで被覆。翌日からは,プラスモイストで治療。母指IP関節を進展するシーネを熱可塑性プラスチックで作成し,装着してもらった。
 上皮化に2ヶ月を要した。自宅から通える「手外科専門医が勤務する病院」に紹介。

1月27日 1月27日 1月28日 2月1日

2月12日:16日後 2月17日:21日後 2月25日:29日後 3月10日:43日後


 このデバイスについて,教えていただきました。

 久しぶりに懐かしいものを見せていただきました。
 この止血デバイスはミッヘル縫合鎹(かすがい)といい、使用目的は簡単にいうと表皮用のステープラーと同じです。今でも夏目製作所で製造されているようです。

 私は昔、腹部の閉創に使ってました。当時の部長が好きだったもので。
 帝王切開などの閉創時の最後に、左右の表皮を段差の無いように合わせてミッヘル縫合除去鉗子ハンドル側の両端に付いている溝に鎹を挟み、傷口に当てハンドルを握ると鎹が閉じ縫合します。
 1cm間隔くらいでズラッと10〜15個程度が創の上に並ぶ感じです。出血があればさらにその部分に追加します。

 見た目は結構エグいですが、ステープラーに比べて
  1. 表皮に穴が空かない
  2. 洗濯挟みのようにガッチリと挟むので断面からの止血効果が高い
 といったメリットがあると思われます。
 除去する場合には、ミッヘル縫合除去鉗子の尖った先端を閉じた鎹の間に入れ、ハンドルを握ると鎹が開き除去することができます。

 調べていて、まだ製造されていることにビックリしました。

【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/hikari/case/2099/index.htm】

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