82歳女性。
 平成11年に左下腿開放骨折で皮膚移植を受けている。
 2010年3月,左下腿に低温熱傷受傷。〇〇病院皮フ科を受診し,ゲーベンクリーム®で治療。どんどん傷が広くなり,痛みがひどくなったため,医師に相談したところカデックス軟膏®に変更。それでも悪化したため,ユーパスタに変更。ますます痛みがひどくなり歩けなくなった。以後数年間,ユーパスタが処方され続けた。
 自宅隣の外科クリニックの医師に相談したところ,直ちに当科を受診するように勧められ,2014年3月26日に当科受診。
 創部を当科では「穴あきポリ袋+紙おむつ」(勝手に鳥谷部先生のサイトにリンク)で被覆を行い,痛みは軽くなった。1週間後には潰瘍底の循環も改善したため,小金井市で熱心に湿潤治療を行っている下河辺整形外科クリニックに紹介し,時々当科に通院してもらうこととした。
 その後の経過は,一進一退が続き,創部の痛みはないものの潰瘍サイズに変化はなかった。時々,潰瘍面が黒くなることがあったが,抗生剤内服で数日で軽快した。
2016年10月ころから創収縮し始めた。

2014年3月26日 4月2日 8月19日:146日後 10月31日:219日後

12月16日:265日後 2015年2月6日
317日後
6月17日:448日後 8月19日:511日後

11月18日:602日後 2016年1月20日
665日後
3月16日:721日後 5月2日:768日後

6月16日:813日後 10月11日:930日後 2017年2月8日
1050日後


 同様の下腿難治性潰瘍で数年以上にわたり経過を負っている症例があるが,この症例のように,湿潤治療開始後に潰瘍が拡大するのはよく見られる現象だ。これは「創傷治癒阻害軟膏(ゲーベン,カデックスなど)とガーゼによる乾燥」で治療されていた潰瘍は潰瘍底が固く瘢痕化していて,それに対し,湿潤治療を行うと次第に潰瘍底が血流のある軟らかな肉芽組織に置き換わり,「硬い瘢痕から柔らかい肉芽」の変化にともなって周囲組織のtensionで引っ張られ,結果的に潰瘍が拡大するようだ。
 また,それまでの「消毒とガーゼの乾燥」治療が長ければ長いほど,湿潤治療をしても長くかかるような印象だ。

【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/hikari/case/1612/index.htm】

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